アボカドは小さな危険なLDLや酸化LDLを低下させる

みなさんはアボカドを食べますか?アボカドは果物であるのに、糖質をほとんど含んでいません。そのかわり脂質たっぷりです。

アボカドの栄養成分は1個(140g)当たり、エネルギー262kcal、タンパク質3.5g、脂質26.18g、糖質1.26g、食物繊維7.42gです。脂質の中身は飽和脂肪酸4.49g、一価不飽和15.15g 、オメガ3多価不飽和0.18g、オメガ6多価不飽和2.84gなので圧倒的に一価不飽和脂肪酸が多いです。

糖質制限をしている方などは脂質は非常に重要な栄養素だとわかっているので、積極的に食べている人も多いでしょう。

そんなアボカドに非常に有益な作用があるようです。

今回の研究ではそのアボカドを1日1個食べたときのデータを分析しています。

対象は過体重および肥満の成人45人(21〜70歳、BMI25〜35)です。参加者に2週間の「慣らし」食事(脂質34%、炭水化物51%、タンパク質16%)をして、3種類の食事を5週間行いました。3つのコレステロール低下食(6〜7%飽和脂肪酸)は、低脂肪(LF)食(24%脂質、59%炭水化物、16%タンパク質)と2つの中脂肪(MF)食(34%脂質、49%炭水化物、16%タンパク質)で、その2つのMF食は、1つは1日に1つの新鮮なアボカド(約136 gの果肉、約13 gの一価不飽和脂肪酸)を含むアボカド(AV)食と、もう一つはアボカド1個と同じ程度の量の主に高オレイン酸オイルを使用したMF食です。(図は原文より)

上の図は白がLF食、グレーがMF食、黒がAV食です。縦軸はそれそれの栄養素のベースラインからの変化率を示しています。横軸は左から、ルテイン、δトコフェロール、γトコフェロール、αトコフェロール、βカロチン、αカロチンです。ルテインとカロチン以外では大きな変化はありません。

上の図は左が酸化LDLで、右が8-イソプロスタンです。8-イソプロスタンは、活性酸素による組織のリン脂質の酸化によって合成されるので、酸化ストレスの指標と考えられています。8-イソプロスタンは変化しませんでしたが、酸化LDLはAV食で有意に8.8%も低下しました。MF食にもアボカドと同程度の一価不飽和脂肪酸を含んでいることを考えると、酸化LDL低下は一価不飽和脂肪酸によるものではなく、別の栄養素や物質によるものと考えられます。

上の図は左が酸化LDLとsdLDL(小さな危険なLDL)との関連、右が酸化LDLと大きなふわふわした善玉のLDLとの関連です。酸化LDLの変化は、sdLDL粒子数およびsdLDLコレステロールの変化と有意な相関がありましたが、大きなLDL粒子数または大きなLDLコレステロールの間に相関関係は認められませんでした。

上の図はCETP活性とsdLDL粒子数、大きなHDL粒子数との関連です。CETPというのは血中に存在するものであり、HDLのコレステロールエステルをVLDLやLDLへ輸送するタンパク質です。そのため、CETPはリポ脂質の代謝やコレステロールの逆輸送に重要な働きをします。アボカドのAV食だけがCETP活性の変化とsdLDL粒子数の変化と有意に相関し、大きなHDL粒子数の変化と逆相関していました。

そうすると、アボカドの成分はsdLDLを減少させることにより、酸化LDLを減少させると考えられます。sdLDLは容易に酸化され酸化LDLという危険なLDLに変わると考えられています。

CETPは、本来は飢餓遺伝子の一つで、コレステロールエステルをうまく再分布する役割があります。基本的にはHDLからVLDLやLDLにコレステロールエステルを渡して、そのかわりに中性脂肪をHDLに渡す交換を行いますが、そのCETP活性が遺伝的に低下しているとHDLが上昇します。この研究ではAV食だけが、CETP活性とsdLDLとの正の関連があり、大きなHDLコレステロールとは負の関連を認めました。

CETP活性が増加すると、中性脂肪豊富なLDLが増加し、sdLDLが増加します。またレムナントも増加します。そしてHDLコレステロール値も低下します。

アボカドのルテインやカロチンがこのような作用があるのかどうかはわかりませんが、アボカドの何らかの成分は恐らくCETPの活性に影響を与えて、sdLDLを減少させ、酸化LDLを減少させる働きがあると考えられます。

マウスの実験ではアボカドにはアボカチンBという脂肪酸が存在し、それが白血病細胞の脂肪酸代謝を阻害し、抗白血病作用があると言われています。(ここ参照)

さらに、このアボカチンBはインスリン抵抗性を低下させる作用がマウスでは認められています。人間では統計的に有意ではなかったのですが体重の減少が認められたようです。(ここ参照)

酸化LDLを減少させるのがアボカチンBかどうかはわかりませんが、アボカドは健康に有益な果物であるでしょう。食べていない人は糖質制限食に取り入れてみてはいかがでしょうか?

「A Moderate-Fat Diet with One Avocado per Day Increases Plasma Antioxidants and Decreases the Oxidation of Small, Dense LDL in Adults with Overweight and Obesity: A Randomized Controlled Trial」

「1日に1つのアボカドを含む中程度の脂質食は、過体重と肥満の成人の血漿抗酸化物質を増加させ、小さく高密度のLDLの酸化を減少させる:無作為化対照試験」(原文はここ

3 thoughts on “アボカドは小さな危険なLDLや酸化LDLを低下させる

  1. 清水先生、こんばんは。

    私もアボカドはよく食べています。1個丸ごと食べることもあり、少し食べすぎなのかもしれません。また、オリーブオイルも使うことが多いのですが、同じ脂肪を摂取するのであれば、アボカドで摂取する方がいいようですね。

    記事の図で、酸化LDLとsdLDLやCETP活性とsdLDL粒子数、大きなHDL粒子数との関連を示されていますが、有意差はあるものの、相関係数rはそれほど大きくないため、相関関係は弱いように思いました。また、rを二乗したr2(関与率)はx軸の項目でy軸の項目をどの程度説明できているのかですが、いずれもそれほど大きくないので、他の様々な因子も関係しているように思いました。
    とはいうものの、アボカドの何らかの成分がCETPの活性に影響を与えて、sdLDLを減少させ、酸化LDLを減少させるのは確かだと思い、今日もアボカドを買ってきました。

    1. じょんさん、コメントありがとうございます。

      この研究も前提は糖質過剰摂取です。だから糖質制限をしているのであれば、もしかしたら関係ないのかもしれません。
      相関関係は弱そうですね。r2はわかりません。
      このような研究は食べ物の一面を見ただけなので、他の面から見たらアボカドよりオリーブオイルの方が良いかもしれません。
      どちらも良質の脂質だと思います。

  2. 清水先生、ありがとうございます。
    アボカドやオリーブオイルなどの良質の脂質をとることが重要だということですね。
    これだけの論文を解説されることは大変だと思いますが、これからも楽しみにしています。よろしくお願いいたします。

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