ダルビッシュ選手の食事が気になる。考え方の違いですが…

前回前々回の記事で野球選手の糖質制限について書きましたが、大きなくくりでは糖質制限ですが、ダルビッシュ選手の考え方は糖質制限食とは異なるようです。ダルビッシュ選手のTwitterを見てみると、気になることがあります。

 

これを読むと、糖新生が悪いように書かれています。後でも出てきますが、糖新生は普通にどんな人でも起きていますし、それが人間にとって悪影響があるというのは疑問です。

 

柳田選手のように極端に脂質を制限することは、非常に良くない方法だと思います。しかし、筋肉を削るというのは、体脂肪率が問題となると思います。まあ、もともと体脂肪率が高くないという前提で書いているのだとは思います。糖新生が筋肉を削るという認識だとすると間違いです。もしそうだとしたら、狩猟採集の時代の人間が生き残れません。筋肉が無くなって数週間で死んでしまいます。絶食しても24時間で筋肉の分解は75g程度らしいのです。その後もどんどん分解量は減り、数週間後では20g程度だそうです。これは飢餓のときです。タンパク質を十分摂取しているので、糖新生で筋肉量が減るとは考えられません。極端に体脂肪率が低ければ、エネルギー源がタンパク質しかなくなるので筋肉が減ることは考えられます。

ケトーシスという言葉があるので、ケトン体は意識しているようですが、ローカーボ(緩やかな糖質制限)ではケトーシスが得られないこともあります。糖質を摂取してインスリンが追加分泌されるとケトン体産生は抑制されます。最初ローカーボだとなかなかケトーシスに持ち込めないこともありますが、スーパー糖質制限食なら数日でケトーシスとなります。しっかりと糖質制限をすると、アスリートでは最初の1週間くらいはパフォーマンスが落ちると言われています。徐々に体が適応して、ケトン体質になるには3~4週間と言われています。そうなればスタミナ抜群の体が手に入ります。

トレーニング中や直前の炭水化物(糖質)の摂取はすぐに筋肉に取り込まれるので問題ないですが、トレーニング後であれば速やかにインスリン分泌がされます。そして、ケトン体は抑制されます。

ダルビッシュ選手はボディービルダーを手本としているようです。脂肪を極端に減らすとテストステロンが低下するようですが、血糖値の上昇もまたテストステロンを低下させます。

この筋肉博士の山本義徳さんは良く知らないのですが、調べてみると、ステロイドの使用を公言しているようです。ボディビルは見せるためのもので、スポーツとは異なります。そんなステロイドを使用している人が博士というのはちょっと滑稽です。そして、その方がアスリートを指導しているというのも不思議です。ボディビルの見せる筋肉も、筋肉には変わりありません。しかし、スポーツで使えるかどうかは別の問題でしょう。スポーツは様々な筋肉が協調して、はじめて良いパフォーマンスが得られます。付けた筋肉をうまく操れるかどうかはわかりません。逆に邪魔になる筋肉もあると思います。

パワーのピッチャーやホームランバッターが筋肉を付けるというのは理解できますが、野球というスポーツを考えたら大きな筋肉は必要のないスポーツでしょう。

もちろん、ダルビッシュ選手のうなる様なストレートはあの筋肉があるからこそだと思います。大谷選手も筋肉がついてホームランが増えたと思います。

もちろん、体に使える脂質がなければ筋肉は削られるかもしれませんが、そのような状況が仮にあるとすれば、エネルギーが使えないので、死んでしまうと思います。

タンパク質を大量に摂っても、摂らなくても糖新生は起こります。摂取量ではありません。そして、人体で一番大切なタンパク質をどんどん糖新生に使うわけではありません。糖新生に限りがあるのかどうかははっきりわかりません。1日80gと書いていますが、その程度で十分なので、それ以上糖新生が起こらないとも考えられます。糖質の摂取を限りなく少なくした場合、ブドウ糖を必要とする臓器は肝臓と赤血球だけです。食事から最低でも20g程度摂ると考えると、1日で100gのブドウ糖があることになり、これで十分な量なのです。また、糖新生は脂肪が分解されたグリセロールや乳酸からもできます。脳はケトン体をエネルギーにして働きます。その他の臓器もケトン体や脂肪酸をエネルギーにしています。もちろん血糖値が高い時はブドウ糖をエネルギーにしますが、普通の食事をしていても空腹時は脂肪を分解してエネルギーにしています。そうでないなら、みんな寝ている間に様々な臓器が死んでしまいます。

糖新生は肝臓や腎臓に本当に負担をかけるのでしょうか?根拠が乏しいです。先ほども書いたように糖新生は誰でも起きています。糖質制限に反対の意見の人は糖新生により肝臓に負担がかかるから危険と言います。本当に負担がかかるのなら、肝機能が悪化するはずです。しかし、糖質制限をするとほとんどの方は肝機能がどんどん良くなります。糖質を摂っているとインスリンが分泌され糖新生は抑制されますが、その代り糖質の処理が必要になりますし、肝臓で糖質を持て余して脂肪に変換することになります。そして脂肪がたまると脂肪肝になります。糖質制限では脂肪肝が速やかに改善するのです。血液検査を見れば、糖質摂取と糖質制限でどちらが肝臓に負担がかかるか一目瞭然です。

さらにダルビッシュ選手が「脳は糖質かケトン体、乳酸しかエネルギーにできないため、脳の機能も落ち、低血糖になる」と書いていますが(山本義徳さんが言っているようですが)、正しくは「脳は糖質だけでなく、ケトン体や乳酸(まあ乳酸はメインのエネルギーではないようですが)をエネルギーにできるので、糖質を摂取しなくても脳の機能は十分に維持され、糖新生により低血糖にはならない」です。糖新生の量が少なく、脳のエネルギーが不足すると言いたいのでしょうが、ケトン体も使えるとわかっていながら、脳の機能が落ちるという内容は、あまり詳しく理解されていないことがわかります。脳のエネルギーを全て糖新生から得て、糖新生もすべて筋肉を分解するのだとすればもちろん問題ですが、全く違います。

ちょっと難しい話ですが、脳の神経細胞は血管と直接接してはいません。アストロサイトという細胞からエネルギーをもらいます。ケトン体が十分にあれば、ケトン体のβヒドロキシ酪酸が脳のアストロサイトのミトコンドリアで代謝されてエネルギー源になります。解糖系であるブドウ糖からピルビン酸への代謝と乳酸の産生は抑制されます。アストロサイトから神経細胞に移行するブドウ糖の量は増え、ケトン体も神経細胞に運ばれ、アセチルCoAに変換されてミトコンドリアで代謝されてエネルギーになるのです。脳の神経細胞はブドウ糖以上にケトン体を利用すると言われていますし、ケトン体があればアストロサイトのブドウ糖の消費がかなり減少し、結果として神経細胞にブドウ糖が移行しやすくなるのです。

確かに糖質制限と脂質制限を同時に行うのはまずいです。しかし、8週以上続けるのが良くないというのはよくわからない話です。そもそもダイエットはずっと続ける食事法です。肥満の人がテレビの低レベルの情報をマネして行う、一時的な痩せるための「ダイエット」は8週ぐらいがせいぜいかもしれません。(8週という数字の根拠がわかりませんが)

脂質制限は絶対にお勧めしませんが、糖質制限は皆さん何年もやっています。当たり前です。8週以上続けると何が起こるというのでしょうか?何も起こりません。というよりさらに体調が良くなります。糖質制限で糖新生が活発であろうが、筋肉は減りません。いくつも研究があります。ボディビルのような体になるかどうかまではわかりませんが、少なくとも筋肉が削られるというのは間違いです。逆に筋肉が増加するという論文もあります。みなさんご心配なく。

ダルビッシュ選手は北海道の日本ハムファイターズにいたころから好きでしたし、野球に取り組む姿勢や栄養などをしっかり勉強されているなど非常に素晴らしい方だと思っていましたし、今も思っています。でも、今回の内容は「ただの受け売り」の内容のようです。ちょっとだけがっかりしました。「正しいダイエットについて発信していく」と言っていたのですが、「正しい」の根拠が「筋肉博士」が言っていた、ではさみしい限りです。

体脂肪率12%以下は体に良くないという根拠も今度教えていただきたいですね。もちろん極端に低く、さらに糖質制限をするのは難しいこともあるでしょう。また、女性はあまり低くなると生理が止まることなどもあるので問題です。でも、男性の場合10%になればどんな弊害があるのか、私は知りません。60㎏の体重の10%であれば、6㎏脂肪があることになります。結構な量です。54,000kcalであり絶食で1日1,800kcal使っても30日分です。食事を食べていれば10%の何が問題なのか是非知りたいです。このことがまた「筋肉博士」の受け売りではないことを祈ります。

 

13 thoughts on “ダルビッシュ選手の食事が気になる。考え方の違いですが…

  1. 初めてコメントさせて頂きます。1日糖質20g以下実践4ヶ月目のものです。
    バルクアップにインスリン(炭水化物)が必要だと主張するトレーニーが多いので低糖質で実験中です。

    現在1日糖質20g以下、蛋白質体重の二倍g以上、脂質体重の二倍g以下、16時間断食、週1筋トレにて毎週インボディ測っておりますが、大体一ヶ月で体脂肪2㎏減、筋肉量は少しずつアップ(500g以上?)していっています。
    低炭水化物ダイエットから糖質増やしてバルクアップしようとした際は見事に体脂肪だけ増えて8キロリバウンドしました……少なくとも自分の身体に追加インスリンは必要ないようです。

    もともと筋肉も体脂肪も増えやすい体質で、増えた筋肉のみすぐに減ってしまうのですが、調整に調整を重ねここ三ヶ月は初めて良いベースでボディメイクできております。
    体脂肪減と筋肉量アップは両立できないと言われていますが、高タンパクのケトン代謝ならそれも可能かと(もちろん個人の体質もあると思いますが)。

    スタミナも増え、運動後でも疲れ知らず、風邪引かず。若い頃糖質中毒の所為で肥満、鬱、病気がちだったため、人生で初めて健康の幸せを噛みしめてます。

    しかし自分も最初高タンパクなら良いだろうとササミや豆腐にして脂肪抜いていたので最初間違ってしまうのは仕方がないと思います。既存の栄養学が嘘ばかりですし、脂肪も多すぎると体脂肪になる(糖質よりは微量ですが)ので調整が難しいんですよね。
    やはり栄養比率は自分の身体に合うように考えて調整しないと、他人の受け売りだけじゃ確実に失敗します。まさに糖質制限脱落者はトライ&エラーが上手く出来ない人が多いように見受けます。

    長文失礼致しました。今後ケトン代謝にてロードバイクに挑戦しようと思っていますので、勉強させて頂いております。

    1. ぷろていんさん
      コメントありがとうございます。
      炭水化物(糖質)摂取してのバルクアップは霜降り肉になっているのではないでしょうか?その方がボリュームは出るのではないでしょうか?
      私はボディビルに関してはあまり知識がありません。しかし、筋肉をたくさんつけることと、スポーツに適した筋肉を付けることは別だと考えています。
      ですから、ボディビルダーがアスリートを指導することにはちょっと疑問を感じています。
      ケトン体質でのバルクアップがうまくいった際にはまた教えてください。

  2. 脳はエネルギー源としてブドウ糖以外を使えない。ケトン体が使えるという意見もあるが、ケトン体は神経を養うグリア細胞のエネルギー源にはなれないのである。従って、ケトン体のみでは長期間、脳の活動を維持できない。

    by浜松医科大学名誉教授 高田氏

    だそうですが、どんなもんでしょうか。個人的には狩猟生活から穀物生活への移行こそが文明を発展させたと思っているので、こちらの意見を信じたいところなんですが。

    1. ワズさん、コメントありがとうございます。
      この名誉教授がどのような根拠で言っているのかわからないので、何とも言えませんが、
      ケトン体だけになる状況はあり得ません。糖新生が起こりますので。
      グリア細胞は血中のブドウ糖をピルビン酸にして、一部は乳酸にして神経細胞に渡します。
      ケトン体がいっぱいあれば、ピルビン酸や乳酸の産生は少なくなり、直接神経はケトン体を
      エネルギーとします。
      また、グリア細胞(アストロサイト)は脂肪酸を取込み代謝できるので、
      脂肪酸が脳のエネルギーの20%を占めていると言われています。
      神経細胞への栄養はグリア細胞を経由するのはその通りですが、
      グリア細胞がブドウ糖しか使えないというのは、非常に疑問です。
      長期的にケトン体がエネルギーになりえないのであれば、
      小児の治療でケトン食を行っている子供たちはみなさん死んでしまいます。
      どこか、糖質制限が広まると困る業界から報酬を得ているのかもしれません。
      どちらを信じるかはワズさんの判断です。

  3. 検索よりアクセスし興味深く拝読いたしました。

    今更の話題ですがダルビッシュ選手の一連のtweetは、柳田選手の高タンパク・低脂肪・低糖質の食事法に対するものだと思われますが、そのような低脂肪・低糖質の食事を一定期間継続する場合に十分な量のケトン体は生成されるものなのでしょうか?

    1. sさん、コメントありがとうございます。

      恐らく低脂肪・低糖質の食事で、高タンパクであってもケトン体は生成されると思います。
      ただ、高タンパクの量がよくわかりませんが、あまりにもタンパク質が多すぎれば、
      糖に変わるので、その時ケトン体がどのようになるのかはわかりません。

      しかし、脂肪まで少なくしてしまったら、何をエネルギーにするのでしょうかね?

  4. ケトン体質 では なくケトン体 体質 ではありませんかね?

    ケトン体質では論文がヒットしませんでした。

    1. 石さん、コメントありがとうございます。

      ケトン体をいっぱい作り出す体に適応した状態を「ケトン体質」と呼んでいます。
      ただの造語なので、論文はヒットしません。

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