新型コロナウイルスと抗体検査 その3 やっぱりBCG?

先日5月15日にやっと献血された血液を用いた新型コロナウイルスの抗体を調べた結果が出ました。当初は5月1日に発表するとしていたので、2週間も遅れたことになります。さすがいまだFAXが普通に使われている日本、データの処理が遅い。または別の理由があるかもしれません。

その結果は以下です。(ここ参照)

陽性率は東京都の500検体で最大3例の0.6%、東北6県の500検体では最大2例の0.4%だったと発表されました。さらに、一応新型コロナが存在していないと考えられる2019人の1~3月の血液でも抗体検査をしていますが、そこでも2例、0.4%に陽性が出てしまったのです。これらは偽陽性と考えられます。通常の風邪のコロナウイルスに反応した可能性もあります。今回は既存の抗体検査キットの性能評価を目的としていたと言われていますが、実に微妙です。検査キットもどこの企業のものか公表されていません。検査数から考えると、C社とE社のキットを推したいのでしょうね。検査キットの性能はバラバラで酷いものもあるようです。(ここ参照)(FDAの検査キット評価はここ

もしも、抗体検査キットの性能評価が目的なら、PCR検査で陽性になった人の血液を検査し、抗体検査との一致率を見た方が性能評価になるはずです。今回の研究は、性能評価と言いながら、これでは全く感度を評価していないのです。

この時期に献血に行くくらいの人ですから、余程健康に気を使っていて、新型コロナに感染していないと自覚している人がほとんどでしょう。そんな人の間では、実際にも新型コロナが全く蔓延していないとも考えられます。

または、以前の記事「新型コロナウイルスと抗体検査 その1」で示した中国の報告にあったように、高齢者に比べて若い人ほど抗体が少ない可能性があり、この中国の研究では60歳~85歳の患者は、15歳~39歳の患者と比べて抗体量が3倍以上でした。さらに、退院時ほぼ3分の1にあたる患者のサンプルで、抗体のレベルが予想以上に低く、175人中10人は、検査室で検出できないほど抗体レベルが低かったそうです。

この結果が本当だとすると、献血する若い人たちが感染していたかどうかを抗体検査で測定することも難しいかもしれません。

今回の献血の研究の結果を受けて、2020年6月にも、東京、大阪、宮城などで1万例を対象に抗体検査を実施する方針だそうですが、どのようなキットを用いて検査をするのか、誰を対象にするのか、しっかりと検討してほしいことと、その内容やデータを素早く公表してほしいですね。また税金の無駄使いするのだけはやめてほしいですね。有病率0.6%だとしたら、25~40%ほど偽陽性になりそうです。この結果をどう解釈するのでしょう?

今回の献血を使った陽性率は最大0.6%でしたが、かなり怪しい結果なので、そのままこの値で計算はできませんが、実は東大も別の方法で抗体検査をし、陽性率は偶然にも同じ0.6%でした。(この記事参照)

そう考えると、日本では新型コロナにすでに感染した人が東京でさえ1%もいるかどうか、という程度なのでしょうか?そして、一部の専門家(?)が言うように、まだまだ感染者が少ないから、これから感染拡大が起こるから注意が必要だ!というのは本当でしょうか?上で示した中国の報告を信用すると、もしかしたら感染したけど抗体が高くなっていない、または既に抗体が低下してしまった人がかなりいるのかもしれません。

では、そうだとすると、その理由は何でしょう。一つは「新型コロナウイルスと途上国」などで書いた、別の感染によってできた免疫が非特異的に働いて、新型コロナウイルスに効果があった可能性です。「新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスが同時感染すると死亡率低下?」で書いたように、他のウイルス感染の同時感染でも死亡率が低下する可能性があるように、様々な交差反応性があって、新型コロナウイルスに特異的な抗体がそれほどできなくても対処できてしまった可能性もあります。

さらに、ドイツからのネイチャーの論文(論文はここ)では、面白い図が示されています。

図の左は感染初期、右は感染からの回復期において反応する抗体の量を示しています。OC43、NL63、HKU1、229Eはすべて通常の風邪のコロナウイルスのものです。なんと7例中6例で新型コロナウイルスだけでなく、通常の風邪のコロナウイルスに対しても抗体価が上昇していたのです。つまり、少なくとも新型コロナウイルスと通常の風邪のコロナウイルスの間に免疫の交差反応性があることが示されたことになります。

重要なのはこの逆です。通常のコロナウイルスに対する抗体が新型コロナに反応するのかどうか?です。もし通常のコロナの抗体が新型コロナにも反応するのであれば、通常のコロナに感染して抗体を持っていた場合、新型コロナに対する感染や重症化が抑えられる可能性があるかもしれません。

そして、そうであれば、新型コロナの抗体検査が何を示しているのかよくわからなくなります。新型コロナの抗体検査で通常のコロナの感染によってできた抗体も検出して、偽陽性を示している可能性があることになります。神戸で約3%に抗体があったという報告は、もしかしたら検査キットの性能により、通常のコロナの抗体に反応し、偽陽性が非常に高かった可能性がありますね。

さらに、他に考えられるのは、やはりBCGワクチンとの関連でしょう。BCG接種で免疫がブーストされ、自然免疫を強化、訓練すると考えられています。そうするとBCG接種者は、強い自然免疫で十分に新型コロナウイルスと戦うことができ、わざわざ新型コロナに特有な抗体をいっぱい作る必要がないのかもしれません。

そうだとすると、専門家が必死で唱えている、集団免疫理論で、6割や7割の人に抗体ができないと感染が収束しないというのはそもそも間違っている可能性もあります。その点について、宮坂昌之先生がわかりやすく説明しています。(その記事はここ

この記事の中で、

「「このウイルスは何も対策を立てないと人口の6割が感染して何十万もの人が死ぬかもしれない」という前提は間違っていると思います。」

とはっきり言っています。2割程度の集団免疫で感染が落ち着くと考えられています。そして、

一部の人たちは自然免疫と獲得免疫の両方を使って不顕性感染の形でウイルスを撃退したのかもしれませんが、かなりの人たちは自然免疫だけを使ってウイルスを撃退した可能性があるのかもしれないということです。そのために多くの人は感染が成立する前にウイルスを撃退したという可能性です。

と言っています。私もこの考えに賛成です。BCGのパワーで多くの人は感染が成立する前に撃退できたか、感染しても非常に軽く撃退できたと思います。そして、BCGの効果が高齢者になるほど人によって減弱して、若い人ほど十分な効果を維持しているのではないかと思います。減弱の原因はこれまた糖質過剰摂取による免疫低下が最も大きいと思います。

東京のような人口密度が高い都市で、0.6%しか感染していないというのは非常に疑問です。日本人は実際にはもっと高い割合で新型コロナウイルスに出会ってはいましたが、特別特異的な抗体を作るほどではなく、やっつけてしまった人がほとんどなのだと思います。

政府の専門家会議の数理モデルをずっと唱えている方は、最近出番が無くなったと思いましたが、北海道は彼の本拠地なので、北海道にはまだ影響力があるのでしょうか?北海道の5月21日の緊急事態宣言の解除は難しいと言っています。(この記事参照)

札幌市中心部の繁華街の飲食店などの休業や営業時間短縮は、「手厚く補償をした上でしばらく必要だ」との見方

手厚く補償?国がやってくれるのでしょうか?

4 thoughts on “新型コロナウイルスと抗体検査 その3 やっぱりBCG?

  1. いつも有意義な投稿ありがとうございます。
    医学的検地からの内容はその辺の陰謀論?
    など足元にも及ばない説得力があり、とても参考になります。
    いつも思うのですが、業務御多忙の最中、
    よく投稿されるお時間があられるなぁと 感心しております。
    これからの投稿も楽しみにしております。

    1. 高増さん、コメントありがとうございます。

      今はコロナですから。私は最前線では戦っておりません。

  2. 宮坂先生のインタビュー記事を読み参考になりました。また、東大の児玉先生は、日赤のサンプルを使った抗体検査は今の科学レベルからみて恥ずかしいやり方と酷評しています。ノイズを拾ったために何がなんだか分からない結果になったと。
    精密計測機で定量・定性検査が出来、国内に導入が進んでるというこで、今後社会活動を進める上での武器として期待されるとのことです。(簡易キットで出きれば良いのでしょうが・・・。)
    また、アジアで重症化が少ないのは、2003年に流行したSARSが変異したSARSXに感染して何らかの免疫が働いている可能性があるとのこと。東大の検査では軽症者は抗体検査時にIGMよりIGGが先に検出される傾向があるようです。BCG接種による自然免疫と合わせて興味ある研究です。いずれにしても「stay at home」政策は日本を破綻させると指摘しています。

    参考までに直近の新型コロナ死亡率を計算してみました。
    人口100万人あたり
    スウェーデン  359人
    イタリア    528人
    フランス    419人
    日本        6人
    韓国        5人

    1. kazuさん、コメントありがとうございます。

      本当に献血の抗体検査は何をやったのかよくわからなかったですね。恐らくはもっと陽性率が高いと踏んでいたのでしょうね。
      私ももう少し高いと思っていました。
      重症化が少ないのはアジアだけに限らないので、SARSが変異したSARSXよりもBCGの方が関係しているのではないでしょうかね?

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