がんの治療に対する高カロリー輸液

小林麻央さんが自分が非常に痩せてしまったこと、高カロリーの点滴を毎日していることなどを書いていました。

そこで、疑問に思ったことは、高カロリー輸液はがんの患者に本当に必要な治療なのか、ということです。必要というよりも有益なんだろうかということです。糖質制限をしている人から見れば、有害以外の何物でもありません。それはブドウ糖はがんのエサだからです。食事でも糖質は避けた方が良いと思うのに、点滴でさらにブドウ糖を大量に体内に入れてしまうのです。

以前、私が研修医だったころ、食事ができない人に高カロリー輸液を行うのですが、高カロリー専用の輸液+足りない分のカロリーを補うのにブドウ糖液をその輸液の中に入れていました。しかも、多くの方がその高カロリー+ブドウ糖の点滴により高血糖になっていました。その時はインスリンを使うのです。

私の今の考えでは、この点滴療法はめちゃくちゃです。

がんの患者さんにどうしてブドウ糖が良くないか、インスリンが良くないかは、いろいろなところで述べられていますが、銀座東京クリニックの福田先生のサイトが非常に詳しいでしょう。例えば「糖と脂肪とがん(その2):糖質制限食とケトン食」などを読んでみてください。簡単に言えばブドウ糖とインスリンは直接的にがん細胞の増殖を促進する作用を持ち、高インスリン血症はインスリン様成長因子を介してがんの増殖や転移や抗がん剤抵抗性を促進するのです。

高カロリー輸液は人間の栄養を補うと考えて投与しますが、実際にはがんの栄養となり、さらにがんを育ててしまいます。水分だけを考えるなら、糖質の入っていない点滴で十分です。後はアミノ酸と脂肪が必要です。

ある医師がこんなことを言っていました。

「食事ができない患者さんが輸液だけでずっといると、みんな肌がガサガサになるんだよね。脂肪は必要なんだ。」と。

しかし、実際には脂肪乳剤の点滴はあまり積極的に行われていません。非常にゆっくりと点滴しなければなりませんし、毎日ではもしかしたら診療報酬上で削られるのかもしれませんし、脂肪の重要性がわかっていない医師も多いのが原因でしょう。さらに、日本にはまともな脂肪乳剤がないというのが現状です。ちゃんとオメガ3の量が入っているものはないのです。オメガ6が大半です。それでは炎症を促進してしまいます。海外ではMCT(中鎖脂肪酸)やオリーブオイルなどとオメガ3もしっかり入っている製剤が存在しています。

まだ、経口摂取ができるのなら、水分だけの点滴にして、食事の中の脂質の割合をぐんと増やして、糖質は完全にやめるのが一番だと思います。つまりケトン食にしたほうが絶対良いと考えます。

ある程度食事をしていて、高カロリー輸液もしていて、どんどん痩せていくのはがんがどんどん成長している証拠でしょう。がんを育てているのはその食事であり、その点滴であるという事実に気が付いてほしいものです。

がん治療だけに限らずに、術後や集中治療でも高カロリー輸液は良く行われます。しかし、カロリーという考えから抜け出せないと、ブドウ糖をいっぱい患者さんに入れてしまうことになります。その高カロリー輸液が患者さんの炎症を促進させている、とは考えないのでしょうか?ちゃんとした脂肪乳剤が発売され、それを積極的に投与できる時代が早く来てほしいものです。

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