LDLコレステロールが高値だけでは何もわからない

先日、質問をいただきました。

はじめまして、健康診断の結果で苦慮していところ、先生のブログを拝見いたしました。
会社の健康診断でLDL高値(LDL 184、HDL 65、中性脂肪 61)で要受診となりました。内科医いわく、いつ心筋梗塞になってもおかしくない、食事では改善しないため薬で下げるしかありませんと言われました。血管が固く詰まっており非常に危険な状態であると動脈硬化が進んだ写真等をみせられました。

すごい脅しですね。びっくりしました。LDLが高いとすぐに危険という判断になるのが当たり前なのでしょうか?

以前の記事「糖質制限とLDLコレステロール上昇」でも書きましたが、LDLは非常に不確かな数値です。LDLは数値というよりも質が重要です。それなのに、いまだに医師の中でもLDLコレステロール=悪玉コレステロールという考えが抜けません。人体に悪影響なのはLDLの中でも小粒子高密度LDLです。この小粒子LDLは酸化LDLに変化しやすく、動脈硬化の原因、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高くするものなのです。大きな粒子のふわふわしたLDLは全く悪玉ではありません。

しかし、現在の血液検査ではLDLが大きいのか小さいのかわかりません。そして、これも以前の記事に書きましたが、通常は計算式で求める推測値でしかありません。

今回示す研究では、LDLコレステロールとは無関係に、LDLの粒子の大きさが虚血性心疾患と関連しているというデータです。脅しを行った医師はこれを読むとどう思うのでしょうか?

 

「Small, Dense Low-Density Lipoprotein Particles as a Predictor of the Risk of Ischemic Heart Disease in Men」

「男性における虚血性心疾患のリスクの予測因子としての小粒子高密度LDL粒子」(原文はここ

要約

虚血性心疾患患者は、健康な人よりも小さい、高密度のLDL粒子の割合が高いことが報告されている。しかしながら、小粒子LDLに起因するリスクの程度は血漿リポタンパク質 – 脂質濃度の変動とは無関係である可能性があることは明らかである。

最初に虚血性心疾患がない2103人の男性で、5年間の追跡期間中に114人の虚血性心疾患IHDを発症した。LDL粒子のピークの粒径(PPD)を測定した。LDL-PPD分布(LDL-PPD≦25.64nm)の第1三分位の人は虚血性心疾患のリスクが、第3三分位の人(LDL-PPD> 26.05 nm)と比較して3.6倍増加した。LDLコレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール、アポリポタンパクBの濃度は虚血性心疾患と小粒子LDLの関連に影響しなかった。

結論として、これらの結果は、小さい、高密度のLDL粒子の存在が、虚血性心疾患を発症するリスクの増加と関連している可能性があることを示唆する最初の前向きな証拠である。結果はまた、小さなLDL粒子に起因するリスクは、血漿リポタンパク – 脂質濃度の付随する変動と部分的には無関係であり得ることを示唆する。

 

 

 

(クリックで拡大、図は原文より)

この図は横軸(X軸)がLDLのピークの粒径をあらわしています。縦軸(Y軸)が虚血性心疾患の起こりやすさの比をあらわし、Z軸は上の図がアポプロテインB(ApoB)の濃度、下の図が総コレステロール/HDLコレステロール比をあらわしています。アポプロテインBはApoBはLDLコレステロールを運ぶタンパク質で、アテローム生成誘発の指標と言われています。

そうすると、LDL粒子が大きい場合、ApoBが高くても、虚血性心疾患のリスクは2倍程度ですが、LDLの粒子が小さくてApoBが高い場合はリスクが6.2倍に跳ね上がります。ApoBが低い場合はLDLの粒子の大きさとは関係ないようです。

次に総コレステロール/HDLコレステロール比でみてみると、同じようにLDLの粒子が小さく総コレステロール/HDLコレステロール比が6以上になるとリスクが4.9倍に跳ね上がります。

質問された方の総コレステロールは261ぐらいと推測されますし、HDLは65なので総コレステロール/HDLコレステロール比は4程度です。LDLの粒子径はわかりませんが、もし、小さかったとしても1.2倍程度のリスクしかありませんし、HDLが65で中性脂肪が61の場合、TG(中性脂肪) / HDL-C比は0.94なので明らかにLDL粒子は大きなふわふわ良質LDLでしょう。

私には全く危険性が感じられません。それでも内科医はスタチンを出したがります。スタチンが儲かるはずです。

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