ビタミンは安全ではない

ビタミンは生物にとって非常に重要かつ必須のものであることは否定しません。しかし、だからと言ってたくさん摂れば良いってもんではありません。必須の栄養素=安全ではないのです。様々な多様な食材を摂っていれば、そこから十分補えるはずの栄養素を、敢えて工業製品であるサプリメントから摂るリスクを考える必要があります。

食事から摂っている栄養素は少しずつ体に吸収されていきます。しかし、サプリメントで摂ると、一気に大量の単体の栄養素が体に入るので、体が食事のときと同じ反応をするとは限りません。そして、必須のものとはいえ、どれだけ摂るのが適切な量なのかははっきりわかっていません。

そんなわからない状態でサプリメントを推進している人たちにとって、ビタミンB6 20mg / d、B12 55μg/ dというのは、1日の最低量以下かもしれません。しかし、国の推奨量はもっと低いのです(ビタミンB6 1.2~1.4mg / d、B12 2.4μg/ d)。国の推奨量が正しいとも思っていませんが、その10倍をはるかに超える量を日常的に摂ることは、サプリメントを使用するしかありません。そのサプリメントの危険性を示した研究です。

「Long-Term, Supplemental, One-Carbon Metabolism–Related Vitamin B Use in Relation to Lung Cancer Risk in the Vitamins and Lifestyle (VITAL) Cohort」

「ビタミンおよび生活習慣(VITAL)コホートにおける肺癌リスクと関連した長期的、サプリメントによる、1炭素単位代謝関連ビタミンBの使用」(原文はここ

要約
1炭素単位代謝関連のビタミンBの使用と肺癌リスクとの間に関連性があるという矛盾した知見が報告されている。サプリメントによるビタミンBの使用率が高いため、可能性のある関連性は、さらに調査する必要があります。我々は、がんリスクとサプリメントの使用の関連を見るために特別に設計されたビタミンおよびライフスタイル(VITAL)コホートにおいて、1炭素単位代謝経路におけるサプリメントのビタミンB群の長期使用と肺癌リスクとの関連性を検討した。
2000年10月から2002年12月の間に、VITALコホートの参加者総数77,118名(50歳から76歳)を分析した。肺癌を発症したのは808人であった。

結果
サプリメントのビタミンB6、葉酸塩、およびB12の使用は、女性の肺癌リスクと関連していなかった。しかし、対照的にマルチビタミンからではなく、個々のサプリメントからのビタミンB6およびB12の使用は、男性における肺癌リスクの30%〜40%の増加と関連していた。10年間の平均サプリメント量を評価すると、ビタミンB6が最も多い群(20mg / d以上)、ビタミンB12(55μg/ d以上)において男性の肺癌リスクがビタミンサプリメントを使っていない人と比較してほぼ2倍に上昇した。ビタミンB6およびB12を使用している群で、ベースライン時に喫煙していた男性のリスクはさらに高く、ビタミンB6約3倍、ビタミンB12で約4倍であった。加えて、ビタミンB6やB12の関連性は、喫煙にあまり関連していないタイプである腺癌を除くすべての組織型において明らかだった。

結論
この性別による差と発生に関わっているサプリメントに固有の関連性は、ビタミンBサプリメントが肺癌に対して予防的ではなく、有害である可能性があるというさらなる証拠を提供する。

1炭素単位代謝というのは、DNAの合成やエネルギー産生など様々な代謝に関連している重要な代謝ですが、そのメカニズムに深くかかわっているのが葉酸やビタミンB6、B12などのビタミンB群です。正常な細胞だけでなくがん細胞にもかかわりが非常に強い代謝でもあります。

今回は男性だけにリスクの上昇が認められました。がんをはじめとする様々な疾患には男女差が認められることがよくあります。そして、今回ビタミンBのサプリメントで肺がんの危険性が2倍になり、喫煙者では3~4倍という恐ろしい数字です。もちろん観察研究なので問題はあるかもしれませんが、このようなリスクを負ってまで、サプリメントを使う意義は何なのでしょうか?

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