脂肪肝はただの肥満の症状ではない

患者さんに「脂肪肝ですね」というと、苦笑いというか、恥ずかしい表情というか、結構深刻さが感じられないことが多いのは、医師としては私だけではないと思います。みなさんの中にも脂肪肝と聞いても、「ただの肥満で肝臓にも脂肪が付いただけ」というような甘く考えている方もいるかもしれません。以前はアルコール性のものが多かったのですが、現在はアルコール性ではない、非アルコール性脂肪肝が非常に問題になっています。

実際には、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)は、メタボリックシンドロームの肝臓における兆候であり、その発生率は、大人と子供の両方の肥満の増加により、急速に上昇しています。 脂肪が最初に肝臓に蓄積した後、それに続く炎症は、肝臓損傷の進行の中心です。そして、非アルコール性脂肪肝は心血管疾患の独立した危険因子であり、心血管疾患の患者の最も一般的な死亡原因であることが示唆されています。

だから、笑って済ませるようなものではなく、すぐに対応が必要になります。しかし、いまだに一部の医師は、「痩せなさい」「脂肪摂取量を減らしなさい」と言うだけで、具体的な方法や肝臓に脂肪が蓄積する原因などは説明しません。

欧米ではすでに成人の30~40%、過体重や肥満の人の60%、2型の糖尿病の70~90%、そして過体重の子供でさえ30%が非アルコール性脂肪肝であると言われています。

非アルコール性脂肪肝の経過は、単純な脂肪症のうち約20~25%の症例で非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に進行し、NASHを患う患者の20%が線維症およびその後の肝硬変を発症、そしてその10~25%が肝臓がん、40%が肝不全になると言われています。

脂肪肝の進行に関与するメカニズムは非常に複雑で完全にまだわかっていませんが、肝臓に蓄積する脂肪の源は59%が脂肪細胞からの脂肪酸、26%が主に糖質摂取により肝臓で起こる脂肪合成からのもの、15%が食事中の脂肪であると言われています。そして、インスリン抵抗性の結果として肝細胞中に中性脂肪と脂肪酸が蓄積、その脂肪が脂質過酸化、ミトコンドリア機能不全および炎症を伴い、肝細胞の損傷および肝線維症の発症に進行していくと考えられています。高インスリン血症、肝臓鉄および脂質過酸化の組み合わせは、NASHにおいてミトコンドリア機能不全を引き起こし、中性脂肪の蓄積および最終的に細胞の死に寄与する酸化ストレスを誘発します。

中でも肝臓の脂肪蓄積に最も関与するのは、果糖(フルクトース)と考えられています。後で示す論文では果糖のことを「大量破壊兵器」とまで言っています。そして、その果糖は「異性化糖」として様々な食料品に含まれています。「果糖ブドウ糖液糖」という名前で書かれていることが多いのですが、これが含まれていない飲み物を探すことは非常に難しいほどになっています。この異性化糖を含む飲料は、肝臓の脂肪合成による非アルコール性脂肪肝の発症と関連しています。疫学的研究は、異性化糖の摂取と非アルコール性脂肪肝患者の線維症の重篤度と関連づけています。最近の動物実験では、異性化糖の過剰な摂取が肝臓のGlut5遺伝子発現およびTNF-αレベル、腸由来内毒素血症、小胞体ストレス、肝臓の脂質過酸化およびアポトーシス活性を増加させることを示しています。果糖の脂質生成および炎症促進効果は、一時的なATP枯渇によるものと考えられています。

脂肪肝は発症のもととなる、インスリン抵抗性、高インスリン血症、中性脂肪の増加、果糖の過剰摂取、これらすべては糖質制限で防げるものです。

脂肪肝を指摘されたら、笑ってごまかさず、すぐに糖質制限を始めましょう。

自分が脂肪肝であるかどうかを確かめるための脂肪肝指数(FLI)というのがあります。日本人にそのまま当てはまるかどうかは検証していませんが、このFLIが30未満ならまずは脂肪肝ではなく、60以上なら恐らく脂肪肝になっています。よろしければ数値を入れてみて参考にしてください。

 

「Carbohydrate intake and nonalcoholic fatty liver disease: fructose
as a weapon of mass destruction 」

「炭水化物摂取量と非アルコール性脂肪肝疾患:大量破壊兵器としての果糖(フルクトース)」(原文はここ

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