フルマラソンに糖質は不要か?

先日の洞爺湖マラソンの話の続きです。よく、フルマラソンの前に「カーボローディング」といって、炭水化物を大量に摂ることを推奨している人がいます。しかし、本当に炭水化物(糖質)はフルマラソンに必要なのでしょうか?炭水化物を直前に沢山摂って増えるグリコーゲンはそんなに多いものなのでしょうか?

フルマラソン1回のレースで2500kcal程度消費されるとしています。それを直前に摂った炭水化物で賄うのは到底無理ですし、マラソンのような有酸素運動時のエネルギーは「脂肪酸ーケトン体」です。100m走のようなダッシュをフルマラソンで続けられる人はいないので、「ブドウ糖ーグリコーゲン」を使いタイミングは最後のラストスパートぐらいでしょう。

普段から糖質制限をしている人が筋肉や肝臓のグリコーゲンが0かというとそうではありません。糖質を食べている人と同じ程度あるでしょう。そのグリコーゲンを一回枯渇させてそれから「カーボローディング」しても蓄えられる量は限界があるので、大してやる意味はないと思います。それより本当の直前、レースの3時間ほど前に大量の糖質を摂ると、血糖値が急上昇し、その後急降下してしまうことがあるのでパフォーマンスは極端に落ちてしまいます。先日のレースの前もおにぎりなど食べている人はいっぱいいましたが、中にはチョコレートのかかったドーナツやあんこのいっぱい入った桜餅を食べてる人もいました。見ているだけで気持ち悪くなりそうでした。

普段から糖質制限をしている私は、前日の夕飯も肉と野菜中心で、主食はなしです。朝ごはんは4時半起きだったので何も食べず、洞爺湖についてからゆで卵を2つ食べました。それと「VESPA PRO」というサプリを飲みました。これは「体脂肪を燃焼させる効果が有ると学会で発表されたスズメバチの栄養液を原料に、限界に挑むトップアスリートが、ここ一番の勝負のために、安心して摂れるサプリメントを目指し、開発されたのがVESPA PROです。これまでに、多くのアスリートの偉業を支えてきた製品です。」と製造販売の会社の宣伝に書いてあったものです。もちろんドーピングフリーです。炭水化物は5gしか入っていないのがうれしい。「VESPA PRO」はレースの30km付近でももう一回飲んでいます。レース中も給水ではスポーツドリンクはあまりたくさん飲みませんでした。1回の給水でスポーツドリンクを2~3口、4回ほど摂りましたが、それ以外は水を飲みました。

ただ、レース中に摂った糖質があります。「ここでジョミ」です。レースでここぞというときに飲むサプリらしいのですが、炭水化物が11.64gも入っています。味は濃く、甘いというより酸っぱいです。この「ここでジョミ」を2回飲みました。実は私なりにこの糖質を含んだサプリを使った理由があります。それは脳をだますことです。フルマラソンは長時間の戦いです。体力だけでなくメンタルが非常に関係するスポーツです。これまで何度もメンタルの弱さで失敗レースを繰り返しました。レースをしていると足も非常に疲れますが、脳がレースを止めたがります。恐らく脳は体に危険なことを避けるためにネガティブな信号をいっぱい送ってくるんだと思います。その脳をだますには、やっぱり糖質が効く気がします。脳は単純なので、非常に疲れたときに糖質を摂ると、体に良いエネルギーが入ってきたと認識し、元気を取り戻します。実際にはエネルギーが脳に届いている訳ではありません。そんなすぐに効くはずありません。エネルギーが入ってきたと脳が認識することが大事なんです。以前のレースで頭がボーとして来て、視界が狭くなるように感じて、このままでは倒れると思ったことがありました。その時、ちょうどエイドがありそこには甘いフルーツが置いてありました。それを2~3個食べた瞬間にさっきまでのボーとした感じや視界が狭くなるというのが消えたんです。本当にメンタルの問題ですよね。

フルマラソンはメンタルとの戦いが一番大事です。その時に脳をだます目的で糖質は必要です。でも、レース前や途中のエネルギー補給という意味では不要です。私は普段の休みの日でも、朝起きて水分補給だけして20km程度走ることがよくありますが、ガス欠になったことはありません。走るときのエネルギーはあくまで「脂肪酸ーケトン体」です。

5 thoughts on “フルマラソンに糖質は不要か?

  1. 札幌にも糖質制限を推奨される先生がいることを知り、ちょっと安堵しました。
    あと、マラソンも走られているのですね。興味深いです。
    ブログ、これからも読ませていただきます。

    1.  ありがとうございます。今後も糖質制限やマラソンなどいろいろと書いていきたいと思っています。よろしくお願いします。

  2. ドクターシミズさま

    糖質制限とマラソンについて質問です。

    私は45歳、男、マラソン歴は2年。
    今年の春のフルマラソンでサブ4(3:54)達成しました。
    今年の7月中旬よりスーパー糖質制限を始めて2ヶ月。
    練習も最初はすぐに疲れて走れなかったのですが、
    最近は少しずつ体が糖質制限で走れるように慣れてきたと感じております。
    ハードなポイント練習は後半は失速したり、続けられなかったりしておりますが、
    やり出した頃を思うと、カナリ走れるようになってきました。

    しかし、先日、仲間とトレイルランニング中、目指す山頂の手前、数百メートルてまで
    エネルギー切れとなり大失速。
    山頂で休めばすぐに復活し、残りを走る事ができました。
    糖質依存体質から脱却が出来きれていないのだと思っております。

    実は2週間後に初のウルトラマラソンに参加します。
    アップダウンのある過酷なウルトラマラソンで有名な
    村岡ダブルフルランニングという大会の100キロの部に参加します。
    途中には難所の約8キロ続く急登や、その他、沢山の上りや下りがある山岳ウルトラマラソンです。

    この前のトレラン山頂手前でのエネルギー切れを起こした事や
    レースの制限が14時間で予想到達時間がギリギリである事を考えると
    糖質制限でレースに挑むべきか?
    それとも、レース前日の夜ぐらいから糖質を多い目にレース中も積極的に糖質を摂取したほうがいいのか?
    と悩んでおります。

    2ヶ月間糖質制限を続けた事を、ここで、一旦、糖質制限を止めた場合、
    体が、元の木阿弥のような事にはならないのでしょうか?

    また、糖質制限でフルマラソンが余裕を持って走りきれるようになるのに
    体質改善にどれほどの期間がかかると思われますか?

    取りとめのない内容ですみません。
    私の周りにはカーボローディング派しかいません。
    糖質制限で走ってるなんて誰にも相談できないもので、
    ドクターシミズ様にアドバイスを頂きたく人生相談のようなメールを送らせて頂きました。

    何卒、宜しくお願いします。

  3. 糖質制限をしている人の筋グリコーゲンレベルは通常レベルであるという研究はほかでも目にしました。人体のシステムは複雑だと思いながら、これはやはり人間はグリコーゲンを必要としていることの証拠だろうと考えました。なぜならばグリコーゲンが人体に不必要であるならば、糖質制限をしながら筋グリコーゲンレベルがどんどん減っていかないというのは合理的ではないからです。

    また、糖質制限をして脂質代謝を高めているウルトラランナーも結構いますが、それがレースパフォーマンスを高めているというエビデンスは何もないということは、糖質をいっぱいとれば糖質代謝が高まり、脂質をいっぱいとれば脂質代謝が高まるというのは当たり前のことであり、それとレースパフォーマンスは直接関係はないということを意味すると考えます。

    1. コメントありがとうございます。
      当然、グリコーゲンは人間にとって必要です。いざというときの力を出すためにはやはりグリコーゲンでエネルギーにします。
      ただ、グリコーゲンを維持するために現在のような食生活で摂る不必要な糖質はいらないということです。

      また、レースパフォーマンスについてはウルトラマラソンやフルマラソンではありませんが、サイクリストやテコンドーの選手に対して
      普通食とケトン食(スーパー糖質制限食よりももっと糖質が少ない食事)を比較したものはあり、高強度の運動以外では
      ケトン食の方がパフォーマンスが良かったという結果はあります。

      脂質をいっぱい摂っても、糖質も同時にいっぱい摂取すれば脂質の代謝は高まりません。手っ取り早くエネルギーになる糖質から使われるので、
      脂質をエネルギーにできないからです。血糖値がベースラインに戻る前にまた糖質を摂れば脂質代謝の出番がありません。
      もちろん人体のシステムは複雑なので、簡単には説明できないでしょうが、脂質は体にいっぱい蓄積されています。
      脂質をどれだけとるかはあまり問題ではなく、糖質をどれだけとるかがどちらの代謝を主に動かすかを決めていると考えます。

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