若い人でもアルブミン値が低く、低栄養に見える理由(仮説)

血液検査で総タンパク、アルブミンという項目があります。血液中には多くのタンパク質が存在していますが、アルブミンはその約60%を占めると言われています。アルブミンは肝臓で作られます。正常範囲は検査機関によって若干異なりますが、3.8~5.3 g/dL程度です。最近、若い方でも病気でもないのに4.0以下の方が増えている気がします。若い方なら4.5程度以上あるのが普通だと思います。病気ならともかく、昔の認識では4.0を切るような値は高齢者がほとんどだと思っていましたが、最近は違うようです。

アルブミンは非常に重要な働きをしています。まず、水分を保持し、血液の浸透圧というものを保つ働きがあるので、アルブミンが低下するとむくみを生じてしまいます。また、アルブミンは様々な物質と結合して、その物質を様々な組織に運びます。カルシウムや亜鉛などの微量元素、脂肪酸、ホルモンや薬も運んでいます。

アルブミンが低いと死亡率が高くなるというデータはいくつもあります。これは原因と結果が逆ですが、アルブミンが低値になるような病態が原因で、それにより死亡率が高くなると考えるのが普通です。そのような深刻な病気の場合、食事で一生懸命アルブミンを増やそうとしても、元の原因が改善しなければアルブミン値は上がりません。

入院時にアルブミンが2.5未満という深刻な状態では、たとえ40~50台という比較的若い年齢でも、死亡率は50%近くになってしまいます。(図は原文より)

(図はアルブミン値と生存率を表しています。横軸は経過をみている日数です。アルブミン値が2.5未満だとわずかな日数で生存率が急降下しているのがわかると思います。)

 

「Low Albumin Levels Are Associated with Mortality Risk in Hospitalized Patients」

「低アルブミン濃度は入院患者の死亡リスクと関連している」(原文はここ

 

以前はアルブミン値が高ければ栄養状態は良く、低ければ低栄養と言われていました。(もちろんアルブミンだけで判断するわけではありませんが)

しかし、アルブミン値が低下する原因は様々です。

もちろん栄養不足(タンパク質の摂取不足)でも、アルブミンはタンパク質なので、低下します。それ以外の原因として、

・タンパク質の体外への喪失 (尿、消化管、皮膚など)

・肝臓におけるアルブミンの合成障害

・タンパク質の吸収障害

・タンパク質の異化亢進(タンパク質が分解すること、炎症など)

・血液の希釈

などが考えられます。

極端な発展途上国のタンパク質の欠乏とは違い、現代日本においてはタンパク質の摂取不足だけではアルブミンの低下は通常起こらないと考えられます。しかしだからと言って栄養状態が良いかということにはなりません。アルブミンだけでは栄養状態は評価できません。

アルブミン値は栄養状態と関連はしていますが、アルブミン値低下が栄養状態の低下とは言えません。

では、最近よく認められる若い人のアルブミン値の低下はなぜ起こっているのでしょうか?栄養不足でしょうか?確かに、若い人が間違った食事の知識を持っていて、痩せるためにほとんどタンパク質を摂取しないのであれば、それも考えられます。

しかし、太っている人でもアルブミンが低い人もよく見かけます。糖質過多になって、太っていますが、その方たちが本当にタンパク質が不足しているかどうかはよくわかりません。その方たちがある程度タンパク質を摂れていたとして、なぜアルブミンが低下してくるのでしょうか?

上にあげたアルブミンが低下する原因の中から考えるとすると、ひとつは炎症でしょう。炎症が起きるとIL-6、TNF-αという炎症性のサイトカインという物質が分泌されます。そうすると、炎症性タンパク質であるCRPが合成されます。その合成の際に、貯蔵されているタンパク質であるアルブミンも分解されて利用されます。また、炎症で血管の透過性亢進(血管から血管内の物質が漏れ出やすくなること)が起き、アルブミンが漏れ出てしまいます。さらに、食事の質が悪いことにより、腸内細菌が悪く、もしかしたら腸でのタンパク質の吸収も悪いのかもしれません。

そして、もう一つ考えられるのが、もしかしたら、意外と尿から排泄されているアルブミンが多いのかもしれないということです。腎臓に問題があってタンパク尿が出る場合と、それ以外の場合の生理的なタンパク尿(激しい運動や体位によるものなど)がありますが、腎臓に問題が無くても高血糖が起きるとアルブミンの尿への排泄が増えるようです。糖尿病の人に比べるとそうでない方の方が割合は少ないですが。

糖質の過剰摂取により、頻繁に高血糖になっている場合には、その分アルブミンが尿からも排泄されて、結果として低アルブミンになってしまうということです。いくら食事でタンパク質を適量摂取できていても、どんどん捨てている可能性があると考えられるのです。それに、慢性炎症によるアルブミン低下というダブルパンチです。

これは栄養不足、低栄養ではなく、せっかく摂った栄養を自分の体に役立たせることができないようにしているのです。結局は栄養不足と同じことにはなりますが、ちゃんと食事を摂っているつもりなのにアルブミンが低いという方は、糖質過剰摂取になっていないかを考えてみた方が良いかもしれません。だから糖質過剰摂取の場合、アルブミン値の低下があるからと言って、栄養不足だからタンパク質をもっと食べなさいと言っても無駄なのかもしれません。糖質制限をすれば自ずとアルブミンが上昇してくる可能性が高いと考えられます。

 

「The concomitants of raised blood sugar: studies in newly-detected hyperglycaemics: II. Urinary albumin excretion, blood pressure and their relation to blood sugar levels.」

「上昇した血糖の随伴症状:新たに検出された高血糖の研究:II。尿アルブミン排泄、血圧およびそれらの血糖値との関係」(原文はここ

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