コレステロール値に一喜一憂しないために

いまだにLDLコレステロールが高いというだけでスタチンを処方される方がいます。十分にHDLコレステロールが高く、中性脂肪が低くても、LDLコレステロールだけでスタチンの適応と考える医師がいます。患者さんがスタチンの副作用の筋肉痛を訴えても、CPKが上昇していなければ、我慢させる医師もいます。

以前の記事「コレステロールを恐れ過ぎてはいけない LDLコレステロール値が低いほど死亡率が上がる!」に書いたように、コレステロール値はリスク評価には不適当であり、コレステロールが高い方が死亡率が低いのです。

まずは日本のデータを分析したものから、(以下のグラフはこの文献より)

左が男性、右が女性で、LDLコレステロール値が80未満の人を1とした場合のLDLコレステロール値による死亡率を示しています。死亡率なので、グラフの高さが低いほど生存している、つまり良い結果なわけです。一目瞭然でLDLコレステロール値が高い方が死亡率が低下しているのがわかります。男性では140以上で冠動脈疾患での死亡率は有意に高くなりますが、全原因死亡率は80未満よりも低くなります。

次はノルウェーのデータですが、

総コレステロール値による死亡率の比較です。194未満を1とした場合に、女性は総コレステロール値が高くなればなるほど右肩下がりで死亡率が減少します。男性はJカーブを示すようで、総コレステロール値が上昇するとやや死亡率が高くなってきますが、最も低い群よりは死亡率が低いようです。

オランダのデータでは、

年齢別ですが、総コレステロール値が39mg / dl(1mmol /L)増加するにしたがって、どれぐらいリスクが増減するかを示しています。Aが心血管疾患以外の死亡、Bが心血管疾患での死亡、Cが全ての原因の死亡です。年齢区分はⅠが55~64歳、Ⅱが65~74歳、Ⅲが75~84歳、Ⅳが85歳以上です。Bの心血管疾患の65~74歳の部分だけが、総コレステロール値が上がるほどリスクが上がっていますが、それ以外は全てコレステロールが増加するほど死亡率が低下しているのがわかります。

 

以前の記事「もうLDLコレステロール検査は時代遅れ?」でも書いたようにLDLコレステロールで心血管疾患のリスク評価をする時代は終わっているはずなのですが、それに固執する方たちがいます。以前の記事ではapoBを測定すべきであると主張しています。

しかし、LDLコレステロール値が高いことを悪者にしないと、スタチンが処方できません。スタチンを処方し、その後ずっと予防のためにスタチンを使い続けるように仕向けるためにはLDLコレステロール値の測定が一番都合が良いのです。それがだれの利益になるのかはおわかりでしょう。少なくとも現在通常に測定している検査データでも十分にリスク評価ができます。(図はこの文献より)

 

冠状動脈疾患の発症のリスクと最も関連しているのは、総コレステロールでもLDLコレステロールでもなく、中性脂肪とHDLコレステロールの比です。中性脂肪とHDLコレステロール比を2未満、できれば1.3未満にしましょう。

以前の記事「アイルランドの血管外科医のSherif Sultan教授によれば、スタチンは…」で書いたように、

「スタチンは、62歳を超える患者、女性およびすべての子供に禁忌である。」

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