糖尿病は白内障の発症を2倍増加させる

白内障の原因は完全にはわかっていないと思いますが、大きな原因の一つは活性酸素です。酸化ストレスで白内障が起きていると考えられています。そしてもう一つの大きな原因としては糖化です。AGE(終末糖化産物)によって変性したタンパク質が水晶体を濁らせるのです。

酸化、糖化となれば糖尿病で白内障の発症が劇的に増えても全く不思議ではありません。

イギリスでの研究で、糖尿病での白内障の発症が全体として2倍になると報告されました。しかも、45歳から54歳の糖尿病患者では、糖尿病ではない人よりも白内障を発症する可能性がかなり高く、45歳から49歳の糖尿病患者の方が4.6倍、50歳から54歳の糖尿病患者は5.7倍もリスクが高かったのです。

「Cataract in patients with diabetes mellitus—incidence rates in the UK and risk factors」「糖尿病患者の白内障ーイギリスにおける発症率および危険因子」(原文はここ

酸化がひとつの大きな原因であるので、抗酸化物質は白内障の予防には大きな効果が期待できます。日本の研究では食事中のビタミンCが増えると、白内障の発症が3~4割低下すると報告されています。

「Prospective study showing that dietary vitamin C reduced the risk of age-related cataracts in a middle-aged Japanese population」

「前向き研究では、食事中のビタミンCが中年の日本人における加齢性白内障のリスクを低下させることを示す」(原文はここ

 

ではどうしてビタミンCが増えると白内障が減り、ビタミンC欠乏で白内障が増加するのでしょうか?

水晶体は透明性を維持するために高い濃度のビタミンC(アスコルビン酸)やグルタチオンなどの抗酸化物質を含んでいます。ビタミンCを運ぶナトリウム依存性ビタミンCトランスポーター(SVCT)というものが様々な細胞に存在していますが、SVCT1とSVCT2というものがあります。水晶体には SVCT2が多く、さらにビタミンCの取り込みに関しては、グルコース(ブドウ糖)を運ぶグルコーストランスポーターである GLUT1も関与しています。GLUT1は還元型ビタミンCであるデヒドロアスコルビン酸を取り込むトランスポーターでもあるのです。

糖質を過剰摂取しているとグルコースの濃度が上昇することにより、恐らくSVCT2の数が減少し、GLUT1の数の増加を招きます。さらにGLUT1によるビタミンCの水晶体への取り込みは増加したグルコースと競合し、妨害されます。SVCT2の数も減少し、さらにGLUT1による取り込みも減少するので、結果として全体としてビタミンCの取り込み量が減少し、水晶体内のビタミンCが減少してしまうと考えられるのです。

また、ビタミンCをたくさん摂取すれば相対的にグルコース濃度とビタミンC濃度の比率が変化し、競合するGLUT1からのビタミンCの取り込みが増加すると考えられます。

つまり、白内障を予防するには、ビタミンCを増やすことが重要なのではなく、糖質を減らすことが根本的な解決策となると考えられます。体内の抗酸化物質はビタミンCだけではありませんし、糖質制限をすれば酸化ストレスが激減すると考えられるので、敢えてビタミンCを意識して多く摂らなくても十分に対処できると思います。

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