糖尿病と低マグネシウム

みなさんは自分のマグネシウム値を知っていますか?マグネシウムは通常の血液検査では測定されません。

ほとんどのマグネシウムは細胞内や骨の中にあるので、体内のマグネシウムの正確な評価は困難です。全身のマグネシウムの0.3%が血清中に出てきていると言われています。血中のマグネシウム値は、施設により多少の範囲の差はありますが、1.7~2.6mg/dL(0.7~1.07mmol/L)が基準値です。マグネシウムの研究者の多くは、血中のマグネシウム値は、特に糖尿病では2.07mg/dL(0.85mmol/L)以上あるべきであるとしています。

ヨーロッパの研究では、1.7mg/dL(0.7mmol/L)の人では90%が臨床的なマグネシウム欠乏症を認め、1.82mg/dL(0.75mmol/L)の人では50%が臨床的なマグネシウム欠乏症を認めると報告されています。1.94mg/dL(0.8mmol/L)を境界としてそれ以上であれば臨床的なマグネシウム欠乏症を認めるのは10%となり、2.19mg/dL(0.9mmol/L)を境界としてそれ以上であれば臨床的なマグネシウム欠乏症を認めるのはたった1%となります。ちなみに私のマグネシウム値は2.4mg/dLです。

全身のマグネシウムの量はわからなくても、血中のマグネシウム値を測定すると十分にマグネシウム欠乏症の評価ができると考えられます。

2型糖尿病の発症のリスクは1.94~2.04mg/dL(0.8~0.84mmol/L)の間では20%増加し、1.94mg/dL(0.8mmol/L)未満であると50%増加します。低マグネシウムと糖尿病の急速な腎機能の低下は関連しているようです。

糖尿病がマグネシウム低下の原因となるのか、マグネシウム摂取不足が糖尿病を招くのかはどちらが先かはわかりませんが、糖尿病の人には比較的多く低マグネシウム血症を認めます。逆にマグネシウムの摂取量と糖尿病の発症率は逆相関をしています。マグネシウムが豊富な食品の摂取を増加させると、2型糖尿病のリスクが軽減するという報告もあります。最もマグネシウムを少なく摂取していた群と比較して最も多く摂取していた群では、糖尿病のリスクが半分程度になっていました。さらに、マグネシウム摂取量の増加は、炎症所見であるCRPやIL-6などと逆相関し、血中のマグネシウム値はCRPやインスリン抵抗性の指標であるHOMA-IRと逆相関していました。

マグネシウムをたくさん摂るとインスリン抵抗性が改善する可能性があります。

糖質制限を行い、ナッツを適量摂取し、野菜や海藻類をいっぱい摂れば、マグネシウムを十分に摂取できます。

4 thoughts on “糖尿病と低マグネシウム

  1. 糖質制限によりマグネシウム不足になる機序(金属トランスポーター不足)について考えてみました。

    糖質制限食は、気を付けていないと食物繊維不足になりやすいと思いますが、なかでも水溶性食物繊維が不足すると腸内細菌の餌が不足し、腸内細菌叢が不活性になると考えられます。
    そうなると腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸が不足し、それを唯一のエネルギー源とする腸管上皮細胞が不活性となります。
    金属トランスポーターの多くは腸管上皮細胞で産生されるようですから、それが不活性となるとトランスポーター産生不足となり、食物からマグネシウムを摂取しても通常量では取り込まれる量が少なくなるのではないかと考えています。
    実際、私は、糖質制限前より野菜をはるかに多く摂取しているにもかかわらず、便秘気味になったり、マグネシウム不足と思われるこむら返りを頻発したりします。マグネシウムのサプリメントなどで通常の摂取量より多く摂取すれば、かなり回復することからもマグネシウム不足を疑っています。
    マグネシウム不足はインスリン抵抗性や、糖尿病発症リスクを高めるのは確かなようですから、この状態を放置すると、マグネシウム不足でインスリン抵抗性など良くないことが起こるのではないかと懸念しています。一過性のものであれば、糖質制限により食後高血糖は回避できているので多少のインスリン抵抗性は大丈夫かと思いますが、不可逆的であれば対策が必要になります。

    食物繊維不足→腸内細菌叢不活性→短鎖脂肪酸不足→腸管上皮細胞不活性→金属トランスポーターの産生低下→マグネシウムの取り込み低下→マグネシウム不足→こむら返りなど発生→(インスリン抵抗性)

    素人考えですが、いかがでしょうか。

    1. 西村 典彦さん、コメントありがとうございます。

      糖質制限食でも糖質過剰食でも、何を食べるかで食物繊維の摂取量は異なります。
      肉食のみでなく、野菜等も通常に摂取していれば水溶性食物繊維も摂れていると思います。
      私は腸内細菌のエサである野菜摂取を推奨しています。

      一方マグネシウム不足は多いと思います。しかし、体内のマグネシウムを測定する方法はなく、実際に足りないかどうかはよくわかりません。
      塩分制限をしていなければ、こむら返りはマグネシウム不足の良い指標かもしれません。ナトリウム不足でもこむら返りは起きるかもしれません。

      私は非常に意識的にマグネシウムを摂取していますし、患者さんにもマグネシウムをできる限り摂るように推奨しています。
      以前は私もこむら返りが頻発していましたが、現在はぬちまーすとナッツと海藻などでほぼ消失しています。
      食物繊維不足で金属トランスポーターの産生低下が起こり、マグネシウムの取り込みが低下しているというよりは、
      単なる摂取不足だと思います。調理や加工する過程で、マグネシウムは結構損失していると思われます。
      スープ系ならマグネシウムが外に出たとしても摂取できます。

      食事でも摂取量が満たされないのであればサプリでも良いと思います。

  2. マグネシウム不足のその後です。

    以前、マグネシウムサプリでこむら返りが解消した件を投稿しましたが、その後、腸内環境改善のため、リンゴ酢(短鎖脂肪酸)、フラクトオリゴ糖を摂取しています。
    それ以来、サプリメントは中止しましたが、毎晩のように起きていたこむら返りは一度も起きていません。他の食事内容は変えていませんのでマグネシウムの吸収率が上がったのではないかと予想しています。

    1. 西村典彦さん、コメントありがとうございます。

      前後の腸内細菌を調べられると面白いかもしれませんね。
      マグネシウムは重要だと思います。

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