小さな危険なLDLの割合を推測するには?

コレステロールを運ぶリポタンパク質のLDLには質があります。大きな粒子のLDLはいわゆる「善玉」LDLと考えられ、小さなLDLは「悪玉」LDLと考えられています。小さな危険なLDL(sdLDL)がどれくらいあるのかというのは特別な方法でなくてはわかりません。

ある研究で日本人で糖尿病や脂質異常症のない健常人ボランティア13人(平均年齢:37.54±8.36歳)でsdLDLを測定したところ、平均値は16.8 ±8.45mg/dLでした。糖尿病を有した高コレステロール血症の患者さんの平均値はは55.2±22.5mg/dLでした。sdLDL の測定値の中央値55mg/dL未満の群(低値群)と中央値以上の群(高値群)での比較では,高値群が低値群に比べて中性脂肪、sdLDL/LDL比、RLP(レムナント様リポタンパク)が有意に高値であり、HDLが有意に低値であったとのことです。そしてsdLDLはLDLとは相関関係が認められず、sdLDL/LDL比とは相関関係が認められたということは、LDLコレステロール値は重要ではなく、LDLとsdLDLの比率が重要と考えられます。

また、別の報告では脂質が正常の人のsdLDLは1.4±1.2mg/dLという非常に低値であるというものもあります。

海外の論文(原文はここ)では、13年間虚血性心疾患を起こさなかった人のsdLDLは1.5±0.9mmol/L(57.9±34.7mg/dL)でした。大きなLDLを多く有している人だけを見るとsdLDLは1.0±0.7mmol/L(38.6±27.0mg/dL)でした。

正常な人でもある程度はsdLDLは存在すると思われます。ただ、どの程度以上だと危険だということははっきりはわかっていません。恐らくは少ない方が良いのでしょう。

先ほどの論文の図では、大きなLDLは多いほど、小さなLDLは少ないほど生存率は高くなっています。

しかし、一般の人はsdLDLを測定できません。

だから通常では他の検査値から推測するしかありません。絶食中の中性脂肪値や中性脂肪HDLコレステロール値の比と、LDLサイズとの間に強い逆相関が存在するので、血液検査の中性脂肪値とHDLコレステロール値を見れば良いのです。(図は原文より)

中性脂肪が70以下であれば主に大きな粒子のLDLを持っていると考えられます。90.9%が大きなLDLだそうです。一方、中性脂肪が200を超えるようだと、多くの小さなLDLを抱えることになります。その割合は84.8%だそうです。

また、主に小さなLDLを有する人の75%は、中性脂肪/ HDLコレステロール比が2.0を超えると言われています。中性脂肪/ HDLコレステロール比が4を超える場合は明らかに小さなLDLがほとんどになります。

以前の記事「中性脂肪が低くHDLコレステロール値が高いと虚血性心疾患のリスクは低い」などでも書いたように、最低でも中性脂肪は100未満の2桁、今回の記事と合わせるとできれば70未満、HDLコレステロール値は50以上を目指し、できれば中性脂肪/HDLコレステロール値の比を1.3以下を推奨しています。この比が2以上の方は今すぐ糖質制限を始めることを考えた方が良いと思います。

「Advanced Lipoprotein Testing and Subfractionation Are Clinically Useful」

「高度なリポタンパク質検査とサブ分画は臨床的に有用」(原文はここ

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コメント

  1. 愛読者 より:

    示唆に富む考察、いつもありがとうございます。
    下記記述の「sdLDL/LDL比・LDLとsdLDLの比率」は、「中性脂肪/HDL比・HDLと中性脂肪の比率」のタイプミスではないでしょうか?
    高値群が低値群に比べて中性脂肪、sdLDL/LDL比、RLP(レムナント様リポタンパク)が有意に高値であり、HDLが有意に低値であったとのことです。そしてsdLDLはLDLとは相関関係が認められず、sdLDL/LDL比とは相関関係が認められたということは、LDLコレステロール値は重要ではなく、LDLとsdLDLの比率が重要と考えられます。

    • Dr.Shimizu より:

      愛読者さん、コメントありがとうございます。
      タイプミスではありません。通常sdLDLは測定しませんが、
      測定したとして、sdLDLはLDLコレステロール値とは関連いていないということです。
      しかし、sdLDL/LDL比とは関連が認められます。
      LDLうち、どれほどの割合がsdLDLになっているかが重要であるか?
      ということが考えられます。
      説明が下手で申し訳ありません。

  2. 愛読者 より:

    先生、リコメありがとうございました。
    >説明が下手で申し訳ありません。
    いえいえ、こちらこそ読みが浅くて申し訳ありませんでした。

    これからも記事のアップ、楽しみにしております。

  3. としの より:

    初めまして。
    江部先生にブログでコレステロールについてお伺いしたところ、先生のブログを紹介いただきさっそく勉強させていただいております。内科医師です。
    sd-LDL-Cの重要性を再認識している次第です。
    ところで、TG、HDL-Cおのおのでは、例えば、TG100以上、HDL-C60以上、のこともあり、質の良いLDL-Cかどうかよく分からないこともあるかと思います。これについては、どのように考えたらよいでしょうか。
    先生が、御呈示されている、TG、HDL-Cは使いやすい指標のように思えました。ネットで調べても、この比が2以下ではプラークの退縮がみられたとか、高血圧や、糖尿病では、1.3以下がよいとか、検索できました。ただ、報告はあまり多くはなく、何か参考になる論文など、先生がご存知でしたら御教示いただければ、幸いに存じます。

    • Dr.Shimizu より:

      としのさん、コメントありがとうございます。
      恐れ多くて内科の先生に対して教えられることはありませんが、何かの助けになるのであれば
      非常にうれしいです。

      内科のご専門は何かわかりませんが、私よりはこのような分野に詳しいのでは?
      私の方から質問させていただいてよろしいでしょうか?
      脂質異常症の専門医は何を指標にされて治療しているのでしょうか?
      いまだにLDLコレステロール値でしょうか、LDL/HDL比でしょうか?
      そもそもLDLの質なんて考えている内科医はどれぐらいの割合がいるのでしょうか?
      予想では、ほとんどいないのではと思います。そうでなければこれほどスタチンが処方されるわけありません。
      LDLコレステロールが高い=スタチン処方が機械的に行われている気がします。
      また、LDLコレステロール増加の原因は何だと思いますか?

      TG100以上で、HDL60以上ってそんなにありますか?そのHDLが増加した理由は何でしょうか?質の良いHDLですか?

      内科の医師であれば、大学などで、sdLDLを実際に測定できるのではないでしょうか?
      患者さんに協力してもらい、ご自身で報告するのが最も良いと思います。

      参考となる論文が少ないのは事実です。文献検索はネットがあればできるので、
      もし他にもいい論文があれば私こそ教えていただきたいです。

  4. としの より:

    ご返答ありがとうございます。
    sd-LDLコレステロールが、通常の臨床現場で測定できないので、それを推測するものがあれば非常に良いと考えています。TG100、HDL60であれば、先生の御呈示された文献からは、penotypeA,Bどちらが多いのかわからなくなってしまいます。。
    このような例がどれ程あるか私の患者で調べてみようと思っています。
    もしTG HDL-C比でsd-LDL-C量を推測できるのであれば、いい指標かなと、思いました。内科医の多くは2017年の動脈硬化性疾患ガイドラインの吹田スコアでスタチンを処方していると思います。
    LDL,HDL比も結局、LDLの質がどうなのかという疑問が生じます。。
    HDLも質があるようで、どうもTGの値のみが一番良い指標ということでしょうか。

  5. としの より:

    糖尿があって、普通の食事の方は、多くがTG100以上はあると思われます。
    もしTGが重要となると、sd-LDLが多いと思われるので、スタチン投与はやむを得ない、ということになりますか。(もっとも糖質制限すればいいわけですが、)

    • Dr.Shimizu より:

      としのさん
      スタチンは本当に効果があると思っていますか?検査値の数字の問題ではなく、
      本当に患者さんの利益になっていますか?
      薬を投与することが前提であれば、スタチン処方はやむを得ないですが、
      TGを低下させる、害も無く非常に安価な方法があるので、それを勧めるのが医師の仕事だと思いますが?

      しかし、医療もビジネスなので、私みたいな考えで内科医であったとすると、病院の上のものから
      睨まれそうです。

      糖尿病で普通の食事であれば当然TG100以上はあると思います。当然sdLDLいっぱいだと思いますが、
      研究で測定されてはいかがでしょう?

  6. としの より:

    肥満、糖尿、脂質異常に対し、運動、食事指導、などはまず、すすめるわけですが、軽い糖質制限も出来ない人が、多い様に感じます。
    米は食べてませんという方も、聞くと、どうしても職場でお菓子を食べたり、数日に一回沢山食べるなど、痩せない原因は様々です。不明のことも、少なくはないです。
    糖質の取りすぎが良くないのは、分かっている方は多いように感じます。
    2キロのダイエットも出来ず、困る事は多々あります。
    数が月は待つのですが。。。
    それが、私の外来の現状ですね。いつまでも待つわけにもいかず患者さんに理解を得た上でスタチンまたは、ゼチーアなどが開始されます。
    TGが、悪いならスタチンでなく、フィブラートでは?という疑問も浮かんでいます。
    かつてTG150程でで、フィブラートは投与したことは無いのですが。
    もちろんダイエットに成功し、クスリが不要な方もおられますよ。
    指導方法が弱いでしょうか。
    なお、研究については、立派な方の研究を学ぶのが限界です。

    • Dr.Shimizu より:

      としのさん
      薬ならフィブラートが良いのではと思いますが、フィブラートが人間の体にどのような影響があるのかは
      私は明るくありません。スタチンのような致命的な副作用がないのであれば良いと思います。

      どのような生き方をするのかは患者さんの選択ですから、どうしようもありません。
      ただ、適切なインフォメーションが行われているかは疑問です。
      特に病因の栄養士の栄養指導は古典的なものだと思いますので、意味がありません。
      いまだに脂質の摂り過ぎでTGが増加すると思っている栄養士が多いのではないでしょうか?
      (違っていたらごめんなさい)

  7. としの より:

    指導法の再考が必要かもしれません
    ありがとうございました!