超厚底ランニングシューズは衝撃を逆に強めるかもしれない

マラソンのランニングシューズにはやはり頭を悩ませています。軽量、薄底、という考えは変わっていませんが、どんなシューズを履いても、私の右足はかかとから着地してしまいます。5月末に新調したランニングシューズも、すでに右足のかかとの部分はえぐられているように、すり減ってしまっています。

いろいろシューズをネットで見ていると面白いというか、こんなに厚底のシューズがあるのか?と思ったものがあります。

HOKA ONE ONE」というメーカーのシューズです。何て読むかわからず、最初は「ホカ ワンワン」だと思っていました。本当は「ホカ オネオネ」だそうです。どちらにしても変わった名前ですが。

このHOKA ONE ONEのボンダイというシリーズは現在5のようですが、4を研究したものがあります。(写真、図は原文より)

上の写真の左がHOKA ONE ONEです。めちゃくちゃ厚底です。身長がかなり高くなりそうです。シークレットブーツを思い出させます。実際には、かかとの高さ41.6mm、前足の高さ34.7mmです。右側が普通のランニングシューズを代表して(?)ニューバランスの880というシューズで、かかとの高さ33.3mm、前足の高さ23.2mmです。このシューズは中間的なレベルのランニングシューズでしょうか?よくわかりません。

この2つのシューズを比較しました。さぞかしHOKA ONE ONEは厚底なので、衝撃が少ないと思われますが…。

トレッドミルで5km走ったときの脚への影響は、下の図のようになりました。

 

上の図は負荷率(どれだけの負荷がかかったか?)を表しています。図の左がニューバランス、右がHOKA ONE ONEです。HOKA ONE ONEの方が負荷率が明らかに高いことがわかります。

上の図は衝撃のピークです。これもHOKA ONE ONEの方が高くなってしまいました。

通常はクッションを増やせば衝撃や負荷は減ると考えられますが、余計なクッションは逆に自分自身の筋肉や関節の動きによって吸収するはずの衝撃を妨害するのか、逆に負荷や衝撃が大きくなってしまっています。衝撃が大きくなるということはその分、故障のリスクが高くなるとも考えられます。

フォアフットやミッドフットを意識している方も多いかもしれませんが、多くの市民ランナーはかかと着地ではないでしょうか?私もミッドフットのつもりが右足だけはどうしてもかかと着地です。そのかかと着地の衝撃を和らげるつもりでクッション性の良いもの選んだつもりでも、実際には衝撃が強くなってしまうこともあるということです。

以前の記事「所詮、スポーツのシューズのクッションなんてこんなもん」でも書いたように、企業の宣伝文句は科学的に証明されたものとは違うことが多いです。ナイキのヴェイパーフライ4%のようなエリートランナーが使用する厚底シューズもあります(「ナイキのマラソン用のランニングシューズは確かにランニングエコノミーを改善するが…」参照)が、かなり履く人を選ぶシューズでしょう。このHOKA ONE ONEもかなり覚悟が必要なシューズなのかもしれません。

 

「Influence of Maximal Running Shoes on Biomechanics Before and After a 5K Run」「最厚ランニングシューズが5km走行前後の生体力学に及ぼす影響」(原文はここ

7 thoughts on “超厚底ランニングシューズは衝撃を逆に強めるかもしれない

  1. 連日のコメント申し訳ありません^^;
    先生につきまとっているわけではなくて(笑)、記事内容が私に最近の興味や疑問にやたらと絡んでいるものですから。

    で、医学的な影響は私にはもちろん全く分からないのですが、ランニングにおけるシューズやレース中の補給食類、今私が特に気になっているのは機能性タイツ・ウェアの是非なんです。

    特に機能性(コンプレッション)ウェアのように直接的に体を補助するものは、何となく”邪道”に感じてしまうのです。
    ですが、実際に着用してみると私には明らかな効果があります。

    マラソンは精神力が重きをしめることは先生の過去記事でもよく分かります。
    シューズや脳の罠関連グッズ(?)も同様に考えて、どこかで線引きする問題なのかなと言う気がしています。イヤなら使わなければ良いだけなんですが^^;

    先生は何かご自身でお決めになっているルールがありますか?

    1. ねけさん、連日のコメントありがとうございます。

      マラソンのタイツについては以前の記事「マラソンの圧縮タイツ(着圧タイツ)は効果なし?」でも、書いていますが、効果は無いでしょう。
      エリートランナーでタイツを履いている人は見たことがありません。

      私は夏のマラソンではもちろん履きません。寒い時期のマラソンでは防寒代わりに履いて走っています。
      しかし、効果が感じられるのであれば、メンタル的に良いので、履いた方が良いのではないでしょうか?
      薬だって医療だって多くの効果がプラセボによるもの、なんていうのは珍しくないのです。
      マラソンのタイツだってプラセボで、自分が効果を実感できるのであれば使うべきです。
      しかし、効果がないと思った瞬間から効果が無くなるかもしれません。

  2. シューズのお話、興味深く読ませていただきました。
    昨年秋にひざを痛めて、ビモローに変えました。初の東京マラソンもビモローで乗り切りました。とてもいいシューズだと思います。合う合わないがありますが、私の感覚では以前にはいていたナイキのシューズに比べて最初の走り出しがすごく楽で、靴底の薄さは気にならないのは初動不可理論というもののおかげで、足の指あたりの自然な力で足が回転している感じです。(わかりにくい説明ですね・・・ごめんなさい)
    靴底がフラットなのでそれに違和感を感じて買ってみたもののやっぱり・・・という友人もいます。靴は大事なので自分に合うものを探すのは一苦労でした。

    1. まるさん、コメントありがとうございます。

      ビモローは私も興味あります。ただなかなか目にすることがなく、まだ試せずにいます。
      ビブラムもそうですが、人によって評価がわかれそうなシューズですよね。
      私のように意識してもかかと着地の人でも大丈夫でしょうかね?
      機会があれば試してみたいシューズです。

  3. ご返答ありがとうございます。

    着圧タイツについて、少なくとも現時点での私個人に関してはプラセボではないと思います。
    というのは、効果について”圧迫されるんだろう”ぐらいしか予備知識がなく使用したからです。

    いつも通りのコース・ペースで走り、データを見るといきなり心拍数が顕著に低下していて、そういえばいつもより楽に走れた気がする(その時はジョグペースだったので主観的にはそれほど印象がありませんでした)と。

    ユニクロのエアリズム(タイツのみ)でも楽天で購入した一番安いクラス(上下3000円)でも同様に、同じペースなら毎分10以上低心拍数に、同じ心拍数ならペースがキロ30秒前後上がっています。
    いきなりデータが向上したので、原因を探ってみたらウェアを替えたことぐらいしかなかったということです。

    もしかしたら、まだ筋量も筋力も一定レベルに達していない初心者には、無駄な動きや姿勢制御のためのエネルギー消費を抑制できるのかも知れません。
    そう考えると、ラン歴わずか半年未満の私には効果があって、ベテラン・エリートレベルである先生やサブ3.5以上クラスの方々にはそれが感じられないと言うことも説明がつかないことでもないと思います。
    確か件の研究はベテラン・エリートランナーが被験者だったかと思います。

    逆に言えば、着圧ウェアが不要と感じたとき、一定のレベルに達したということなのかも知れませんね。
    補助輪付きで速くなるうちはまだまだ鍛錬不足ってことでしょうか。走る理由、アイテム選択ももちろん人それぞれですけど。

    ナイキ(他ブランドでもですが)としては、”初心者にしか効果がない”となれば初心者マーク付けて走ってるようなものですから売れ行きに影響必至でしょうけど(笑)

    1. ねけさん

      面白いデータをありがとうございます。そうですか心拍数が10も低下するとなると非常に良いですね!
      これは誰にでも起きるのであればすごく良いですが、初心者限定なのでしょうか?
      私自身はタイツによって心拍数が変化した実感はありません。というかそのようなことが起きるなんていう
      予想をしていなかったので気付きませんでした。
      ただ一般的に起きることであれば、企業がすでに宣伝しているでしょう。
      しかし、初心者限定であっても、面白い切り口ですよね?

  4. 私はビモローに元々興味があったので、購入を視野に入れてワールドウイングの提携施設となっている整形外科で足の診察をしてもらった折に試しばきをさせてもらいました。その病院のスタッフの方がほとんど履いていたので、感想を聞くこともできました。私もかかとからの着地ですが、大丈夫でした。
    試し履きができるといいですね!

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