糖質制限反対論を見たときに気をつけること

先日の記事「糖質を制限すると寿命が縮まる? 冗談のような研究」で、あまりにも質の悪い研究が一流の医学雑誌に載り、それをもとに様々なネットサイトで話題になっていました。その中身は先日の記事で書いた通り、非常に信用性が低い研究で、科学というにはほど遠い内容でした。

しかし、一般の人がこの記事を見たり、この記事をもとに自称専門家や3流医師が糖質制限反対論を繰り広げた時に、それを信用してしまう可能性があります。

糖質制限反対論を見た時にどのようなことを気を付けなければならないのでしょうか?

1.マウスなど動物の実験上での研究であり、人間の研究ではないもの

以前一時期、糖質制限が老化を早めるという内容を東北大学大学院・農学研究科の都築毅准教授が雑誌などで発言し、話題になりました。これに対して江部先生は東洋経済オンラインで非常にわかりやすい説明をされています。

詳しくは「糖質制限「老化説」が抱える根本的な大問題」を読んでください。

他にも、

「Short‐term feeding of a ketogenic diet induces more severe hepatic insulin resistance than a obesogenic high‐fat diet」

「ケトジェニック食の短期摂食は、肥満をもたらす高脂肪食よりも重度の肝臓のインスリン抵抗性を誘導する」(原文はここ

という研究は、ケトン体を生成するケトジェニック食はインスリン抵抗性を増加させ、糖尿病のリスクを高める可能性があるという内容でした。しかしこれもマウスを使った実験にすぎません。

同様に、

「High fat feeding causes insulin resistance and a marked decrease in the expression of glucose transporters (Glut 4) in fat cells of rats.」

「高脂肪摂取は、インスリン抵抗性を引き起こし、ラットの脂肪細胞におけるグルコーストランスポーター(Glut 4)の発現の顕著な減少を引き起こす」(原文はここ

という研究も、糖質制限の食事では通常よりも高脂肪食になりますが、高脂肪食がインスリン抵抗性を引き起こすという内容です。しかしこれもラットを使った実験にすぎません。

江部先生が記事で述べているように、全く人間と違う食性の動物を使った実験が人間にそのまま当てはまるとは考えられません。

つまり、糖質制限反対論の根拠となる研究が人間のものなのか、それとも動物のものなのかで、判断できます。わざわざ、動物実験とは書かずに、人間の研究と思わせる場合がありますので、元の論文で確認する必要がある場合もあります。

もし、マウスなどの動物による研究が根拠の場合は全く無視して構いません。最近の糖質制限反対論は動物実験レベルでしか根拠にできなくなってきている感じもします。

動物実験がすべて間違っているわけではありません。非常に有用な情報が得られる場合もあります。私も動物実験のものを引用する場合もないわけではありません。しかし、動物実験だけを根拠に糖質制限反対論を繰り広げることは無理があります。

 

2.食事のアンケートによるもの

先日の記事「糖質を制限すると寿命が縮まる? 冗談のような研究」の中でも書きましたが、質問票による食事内容のアンケートで正しい情報を得ることは非常に難しいと思います。人はそんなにいつ何をどれだけ食べたか正確に覚えていませんし、正直に申告する人がどれだけいるでしょうか?今回の研究も相当過少申告していた可能性が高いのです。そして、同じ食事を10年も20年も変わらずしている人もいれば、変化に富む人もいます。

しかし、毎日食べたものを報告してもらうわけにもいかないので、結局は1回~数回のアンケートで数年、今回のような25年という長い期間の食事を推定することになります。1回のアンケートの内容が信用性が乏しいのに、それを何年もの間続いたと考えてしまったら、さらに信用性が低下してしまいます。

ただ、食事に関する研究のほとんどはこのようなアンケートによるものが非常に多いのが実情です。「○○を食べると△△という病気になりにくい!」「○○を食べると△△という病気のリスクが上がる!」などの研究はほとんどがこのようなアンケートによるものです。

参考程度にはしても良いと思いますが、あまり気にする必要がない場合もあります。しかし、私もこのような食事の研究を引用することもあります。その裏のメカニズムを考えて、生物学的、生化学的に正しいと思われるものはある程度の信用をしています。

やはり、これも元の論文を確認する必要があるでしょう。もし、このような食事アンケートを根拠にした記事であるとわかる場合にはあまり気にする必要はありません。

 

3.根拠がわからないもの

根拠もはっきりさせず反対論を繰り広げている場合は、根拠も示せないのです。上の1や2のような信用性が低い内容の研究さえ存在しない可能性が高いので、根拠がわからない場合は無視して構いません。(もちろん同様な記事が他に書かれていて、そこでは根拠となる研究が示されている場合もありますが)

 

世の中には糖質制限が広まってしまっては困る人がいっぱいいます。米や小麦の農家さんや、それを使って商売をしている人、農家の人たちに支えられている政治家、従来の治療法で糖尿病や生活習慣病を専門にしている医師などです。

今後も雑音がいっぱい聞こえてきますが、何を信じるかはあなた次第です。

 

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