サインバルタに気をつけろ!

前回の記事「PPI(プロトンポンプ阻害薬)は電解質異常を引き起こす」では、PPIによる電解質異常について書きましたが、電解質異常を起こす薬はいろいろとあります。今回はサインバルタですが、この電解質異常は急激に起きてしまうので、注意が必要です。

サインバルタ(デュロキセチン)はセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)と呼ばれる抗うつ薬のひとつであり、日本での適応は、うつ病・うつ状態に加え、糖尿病性神経障害・線維筋痛症・慢性腰痛症、変形性関節症に伴う疼痛です。うつ病と痛みの疾患に適応があるのです。

今回は日本からの報告ではないのですが、帯状疱疹後神経痛にサインバルタを処方して、急性の低ナトリウム血症を来した症例です。(図は原文より)

上の図は経過を示していますが、なんとサインバルタを飲んでたった2日で低ナトリウム血症になってしまったのです。恐ろしい!この患者さんはサインバルタを2回飲んだ後、疲労を感じ始め、方向感覚が低下し、無気力になり、眠りについたときに腕を振ったり、無差別に探ったりし、その行動を起きたときにニワトリを捕まえるかバケツを運んでいたと説明したのです。せん妄状態ですね。検査をすると低ナトリウムがわかり、すぐにサインバルタを中止し、数日後に改善しています。

実はこの低ナトリウム血症の報告はいっぱいあります。小さくて見辛いですが、下の図です。

抗うつ薬であるSNRI、SSRIでは、低ナトリウム血症が比較的頻繁に起きるにも関わらず、ほとんど注意が払われていない可能性があります。これだけの報告があるということは氷山の一角であり、この何百倍、何千倍も起きている可能性があります。特に痛みでサインバルタを処方されたような場合には全く低ナトリウム血症のことなど考えていないでしょう。

低ナトリウム血症の症状は、軽度ではほとんどありませんが、今回の症例報告のようにナトリウムが125でもかなりの症状が出ています。低ナトリウムの症状として一般的には悪心、食欲低下、傾眠、無気力、精神状態の変化、せん妄、けいれんなどがあります。もちろんそのままにしておけば死に至る場合もあります。

多くはサインバルタを飲み始めて数日から数週間で低ナトリウム血症が起こります。しかしもっと長い期間経ってから起きる場合もあるようです。決して高齢者だけに起きるものではありません。30代~40代でも起きます。

ご家族がいる場合には、ご家族が注意を払う必要がありますが、一人暮らしの場合は非常に危険になることもあります。

以前の記事「サインバルタ慢性腰痛症に適応拡大」「サインバルタ今度は変形性関節症に伴う痛みに適応拡大!大丈夫か?」で書いたように、厚労省は安易に処方するな、という要旨のお達しを出しています。しかし、実際には非常に安易な処方をされています。自殺や攻撃性という副作用、今回の低ナトリウム血症という副作用。よく考えましょう。そして、先ほどの記事にも書いたように、適応拡大になった痛みに対する効果は非常に微妙です。製薬会社がやったにもかかわらず、大きな効果ではありません。製薬会社とは独立した研究をしたら、恐らく効果の有意差は出ないでしょう。しかも、根本的な治療になるわけではありません。脳に働いて、少し脳の働きを鈍くさせて、症状を感じにくくするだけです。

リリカも同様です。(「リリカの安易な使用は止めるべし!」「やっぱりリリカは効かない 副作用たっぷりの科学的根拠のない適応症」「坐骨神経痛にリリカは効かない」など参照)

この程度の効果で、このようなリスクのある薬をのむのか?しっかり自分で判断しましょう。

「Rapid-onset hyponatremia and delirium following duloxetine treatment for postherpetic neuralgia: Case report and literature review.」

「帯状疱疹後神経痛に対するデュロキセチン治療後の急性発症低ナトリウム血症とせん妄:症例報告と文献レビュー」(原文はここ

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