トラムセット、トラマールは依存性があるかもしれない

以前は痛み止めといえば、Nsaidsというロキソニンやボルタレンなどの消炎鎮痛剤でした。しかし、現在は様々な痛み止めがあります。

みなさんの中にも痛みを抱えて、トラマドール(トラムセットやトラマール)を処方された人もいると思います。

トラムセットに関して製薬会社は次のように述べています。(持田製薬のホームページより)

(1)薬物依存
慢性疼痛及び抜歯後疼痛患者を対象に実施された本剤の国内臨床試験では、依存及び乱用は報告されていません。

米国では、1995年からトラマドール(経口薬)が、2001年から本剤がそれぞれ発売されており、以降、全国的なネットワークを通じて依存や乱用の発現状況をモニタリングするプログラムが実施されています。
このデータベースによると、2年間における本剤の依存及び乱用発現の頻度は、10万人あたり0.25件であり、トラマドール単剤よりも有意に低い頻度でした(p<0.001、Poisson regression法による解析)。また、依存及び乱用発現者の94%は、アルコール又は薬物の乱用歴を有していました。

依存性や乱用は非常に低いと考えられ、製薬会社もそれをアピールしていました。しかし、今回出された報告ではどうやら違うようです。

トラマドールは、アメリカで術後急性疼痛の治療に頻用されているのですが、他の短時間作用する麻薬よりも安全で依存性が低いことのちゃんとしたデータはありません。そこで、術後疼痛治療にトラマドールが投与された麻薬による治療を受けていない患者を対象に、トラマドールの急性期使用から長期使用への移行リスクを明らかにするため、他の短時間作用する麻薬と比較する研究を行いました。その結果、トラマドールの長期使用リスクは、他の短時間作用する麻薬と同程度か、やや高かったということがわかったのです。

退院時にトラマドールを単独処方された患者は、その後麻薬の持続使用が40%以上も高くなったのです。

依存性は非常に低いと言われていたのに、アメリカのメディケア受給者を対象とした最近の研究では、トラマドールは他の短時間作用する麻薬よりも急性期使用から長期使用に移行するリスクが高いことが報告されました。

近い将来、トラマドールは麻薬扱いになる可能性があります。実際に弱い麻薬なんですから。

実は以前よりトラムセットやトラマールといったトラマドールは依存性があると思っていました。ある薬学部の先生も同じように話していました。

脳(中枢)に働く薬は多かれ少なかれ依存性があると思っています。今回のトラマドールだけでなく、リリカ、サインバルタなどの抗うつ薬、睡眠薬などは脳に働きます。安易に長期に飲む薬ではありません。

私はできる限りこのような薬を処方しないようにしていますし、処方してもできる限り短期で減量したり、中止したりするように促します。他の医師より処方されていても、薬の効果の評価を行い、できる限り止めるように話をするようにしています。

これらの多くの薬は痛みに対してプラセボと大きな違いはありません。統計的に有意差を示すのですが、それは有意差を示すようにデザインされている可能性があります。

薬を飲んだとき、痛みが半分以下にならないのであれば、それはプラセボ効果であり、脳に作用して、脳の働きを鈍くさせているために少し効果があると感じるだけだと思います。しかし、痛みが半減もしないのに長い期間飲んでいると、恐らく脳の機能が変化し、その薬を飲まないと正常な働きができなくなり、その薬を止めると禁断症状が出て、薬をなかなかやめられない状態になってしまうと考えています。

全ての薬を止めることは難しいかもしれませんが、可能であれば薬はできる限り止めるべきです。あなたの体が壊れる前に。

「Chronic use of tramadol after acute pain episode: cohort study」

「急性疼痛後のトラマドールの長期使用:コホート研究」(原文はここ

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