なぜ日本だけがくも膜下出血が増えているのであろう?

今回の研究を読む前は、くも膜下出血も糖質過剰症候群ではないかと考えていました。それは脳動脈瘤の発生に炎症が強く関係していることや、血管のグリコカリックスも関係していると考えられるからです。また日本のデータでは肥満との関連も認めています。(下の図はこの論文より作成)

上の図は日本人のデータで、BMIに対するくも膜下出血発生率のリスクを示しています。Jカーブとなっており、BMI30以上ではBMI22~25の人の6倍にもなります。

しかしくも膜下出血が糖質過剰で起きているのであるならば、世界的にくも膜下出血が増加しているはずです。世界の発生率はどうなっているのでしょうか?(図は原文より)

くも膜下出血の世界的な発生率は1980年から2010年の間に40%減少しましたが、年齢、性別、地域、期間、血圧、喫煙率によるくも膜下出血発生率の大きな変動があります。 1980年から2010年の間に、くも膜下出血の発生率は、ヨーロッパで40.6%、アジアで46.2%、北米で14.0%減少しました。この世界的な減少は、平均血圧と喫煙率の世界的な減少と平行していました。

しかし日本では、くも膜下出血の発生率は過去30年間で59.1%増加しました。特に顕著だったのが75歳超の日本人女性で、45~54歳の日本人男性に比べ相対リスクが2.5を示しました。ヨーロッパでは75歳超の女性の相対リスクは、45~54歳の男性に比べ1.5でした。

血圧や喫煙率の減少が関連しているのであれば、日本だけ増加していることは不思議な話です。日本の喫煙率は世界的に見れば高いようですが、確実に低下してきています。日本では未破裂脳動脈瘤をバンバン見つけて、恐らく他の国より予防的な手術をたくさんやっているように思えます。にもかかわらず、日本だけ増加しています。他のアジアの国と比較しても発生率がかなり高いのです。

ある研究ではくも膜下出血の発症率に、東アジア人では高い総コレステロールと低い総コレステロールの間に有意差を示し、総コレステロールが低い群は高い群と比較してリスク比が1.48となっています。(その論文はここ

低コレステロールと脳出血の関連を合わせて考えると、日本人はコレステロールに対して脳の血管の脆弱性を来しやすいのでしょうか?

他に日本だけ何か違う環境であったり、違う食事を摂っているのでしょうか?特に高齢の日本人女性の食事と言えば、日本のお米と野菜メインの食事+肉の摂取量の少なさ、が関係しているのでしょうか?

原因は不明ですが非常に気になります。

「Worldwide Incidence of Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage According to Region, Time Period, Blood Pressure, and Smoking Prevalence in the Population: A Systematic Review and Meta-analysis」

「地域、期間、血圧、人口の喫煙率による動脈瘤性くも膜下出血の世界的な発生率:系統的レビューとメタ分析」(原文はここ

7 thoughts on “なぜ日本だけがくも膜下出血が増えているのであろう?

  1. 私は終わらないスイーツブームが日本人女性の血糖値スパイク頻度を2-3割上昇させていると考えます。平成初期のティラミス・ブームから始まって現在は第3次タピオカ・ブームですが、常に何かのスイーツが全国的ブームになっている国を日本ぐらいしか知りません。ちなみにタピオカ・ミルクティーの普通サイズは角砂糖30個、インスタ映えするLサイズだと角砂糖50個分の糖質です。主婦向けテレビ番組や女性誌はひっきりなしに流行スイーツ特集組んでますし、「平成 スイーツブーム」で検索すると凄い数のブームが続いていているのが解ります。私のいる国では最近、甘味含有量に対し砂糖税を導入しましたが、日本でもそろそろ政府が対策を考えるべきでは無いでしょうか。https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/07/fa1b2b7e0f600396.html

    1. 駐在君さん、コメントありがとうございます。

      もちろん、糖質過剰も問題でしょう。ただスイーツブームが、というのはちょっと疑問です。
      アメリカでは日本人よりももっと甘いものを口にしている人が多いと思われます。
      しかし、アメリカではくも膜下出血は減少しているのです。
      ちなみにタピオカのインスタ映えするものは、全部飲み干さずに写真撮ったら捨てている人も多いとか?それもまた問題ですが。

    1. 尾崎正時さん、コメントありがとうございます。

      低タンパクというのはもちろんあると思います。日本人の高齢者はベジタリアンのような食事をしている人もいますから。
      ただ、他国と比較して魚からのタンパク質摂取量は多いので、必ずしも日本だけタンパク質摂取量が少ないとも言えないと思います。
      インドは一人当たりの食肉の消費量は3㎏/人/年(2011年)で、日本の49㎏/人/年よりも大幅に少ないにも関わらず、
      くも膜下出血は日本の5分の1程度です。医療が発展していないので、診断されていないだけかもしれませんが。
      コラーゲンの劣化なら、糖質過剰摂取によるAGEの蓄積でも起こりそうですが?

  2. 酸化、糖化、炎症、インスリンなどでコラーゲンの劣化が起こり、低蛋白なのでそれを更新できないということでしょう。日本人の耐糖能が低いのも一因かと思います。
    https://macrobiotic-daisuki.jp/india-140556.html
    こんな記事がありました。豆、穀類あわせてプロテインスコアをあげているのでしょうか?。意外に乳製品もたべるのですね。

  3. 酸化、糖化、炎症、インスリンなどで劣化したコラーゲンを、蛋白不足で更新できてないのだと思います。日本人の耐糖能が低いのも一因かと思います。
    https://macrobiotic-daisuki.jp/india-140556.html
    こんなサイトがありました。豆と穀類の組み合わせでプロテインスコアを上げているのだと思います。意外に乳製品も食べているんですね。日本は米ばかりだからだめなのでしょう。

    1. 尾崎正時さん、情報をありがとうございます。

      インドでは肉以外のタンパク質摂取が多いということですね?知りませんでした。

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