何らかの原因、細菌感染で抗生物質を投与しなければならないこともあるでしょう。そんな状況だと食欲も落ちることもあるでしょう。そんなとき私だったら無理して食べない方が良いと思いますが、医療の世界では、何でも食べられるものを食べるように推奨されます。食事が進まないなら、少ない量でカロリーや栄養素がいっぱい入っているという理由で、栄養補給のシェイク(例えば、エンシュアリキッドなど)が出されることもあるかもしれません。
水分補給にはスポーツドリンクや口当たりの良いジュースもOKが医療の世界です。
では、本当に抗生物質投与中に糖質を多量に含んだものを口にしていいのでしょうか?
今回の研究では、造血幹細胞移植のために入院した173人の患者が摂取した9,419食を詳細に追跡し、その後の腸内細菌叢の変化を分析することで、食事と腸内細菌叢の動態との関係を評価しました。いつもの食事アンケートではなく、非常に細かい数字まで調べられた、食事関係の研究では珍しいものです。何日に何を何グラムまで調べています。
抗生物質に晒されると、腸内細菌叢は乱れてしまいます。α多様性の喪失や通性嫌気性菌の増殖など深刻な細菌叢の撹乱が生じる可能性があります。
173 人の患者全員が、食事収集期間中に少なくとも 1 種類の抗生物質を投与され、通常、最初は予防的抗生物質で治療されました。173 人の患者のうち 138 人 (80%) は、発熱またはその他の感染の可能性のある兆候が現れたため、この期間中に予防的抗生物質から広域スペクトル抗生物質に切り替えられました。(図は原文より)
上の図は、α多様性に対する糞便サンプル採取前の 2 日間に各食品群を100 g摂取した場合の影響、抗生物質(abx) および抗生物質と食品群の相互作用などを示しています。一番上のabx(抗生物質)とその3つ下のabx × sweets の2つが負の作用、つまりα多様性の低下を示しています。予想通り、過去 2 日間の広域スペクトル抗生物質への曝露は腸内細菌の α 多様性と負の相関があり、糖類、菓子類、飲料(以下、菓子類)は単独ではなく、抗生物質曝露サンプル採取前のこれらの食品の摂取量は、α多様性の最大の減少と関連していました。つまり、抗生物質そのものの有害性よりも糖類たっぷりの菓子類摂取はさらに有害さが増加したのです。広域抗生物質曝露後の摂取量が100g増加するごとに、抗生物質に曝露されていないサンプルと比較して、平均α多様性がさらに24.1%減少すると予測されます。
上の図fはグレーが抗生物質非曝露、赤が曝露群で、横軸が菓子類の摂取量です。非曝露群では菓子類の摂取量とα多様性の関連はありませんが、曝露群では甘いものを食べるほどα多様性が低下しました。サンプリング前の2日間に抗生物質に曝露された患者のサンプルでは、摂取した甘いもののグラム数と糞便微生物叢のα多様性との間に統計的に有意な逆相関が明らかになったのです。
図のhは脂質、食物繊維、糖類の影響ですが、脂質はどちらかと言うと右肩上がり、つまり摂取量が増加するほどα多様性が増加します。しかし糖類は抗生物質曝露群で摂取量が増加するほどα多様性は低下します。
これらの関連性は、造血幹細胞移植患者には糖分を多く含む経口栄養補助食品が一般的に推奨されているため、意外なものに思えるでしょう。しかし、これが現実です。糖分を多く含む食品、抗生物質への曝露、そして腸内細菌叢のα多様性の低さという関連性において、重要な要因となっているものとして、調整栄養飲料(スポーツドリンクや栄養補給シェイクなど)や、食品に元来含まれる糖分ではなく添加糖が挙げられることが示唆されました。
もちろん、病気そのもの、治療そのものの影響もある可能性がありますが、基礎疾患である悪性疾患、併存疾患、または集中的な鎮痛剤への曝露を最も重篤な病状の指標として考慮したモデルでは、甘いものの摂取と抗生物質との相互作用が、微生物叢のα多様性の低下の有意な予測因子のままでした。
次に広域スペクトル抗生物質と菓子類の多量摂取の相乗効果が臨床転帰を予測するかどうかを検討しました。
上の図は、移植前7日目から移植後12日目までで平均化した糖類摂取量の中央値で2つに分けたときの死亡率を示しています。糖類を多く含む食事を摂取している患者では、抗生物質への曝露と死亡率に相関関係が認められました。抗生物質曝露日数が1日増えるごとに死亡率は1.12倍になります。糖類摂取量が中央値以下のグループでは死亡率の増加はありませんでした。
抗生物質誘発性腸内細菌叢撹乱中の糖類摂取が特定の細菌の増殖を促進する可能性があるかどうかを調べてみると、最も顕著に増殖した種としてエンテロコッカス属、特にE. faeciumを認めました。エンテロコッカスは抗生物質耐性血流感染症の重要な原因であり、有害な臨床転帰を増加させます。
抗生物質投与中に糖質、特に糖類、添加糖の摂取の増加はα多様性の低下や病原性細菌であるエンテロコッカス属の増殖の増加として現れるのです。そして、死亡率さえ増加させてしまうのです。
医療の無責任な食事のアドバイスは役に立たないばかりか有害なのです。自分たちの無知な推奨が患者を悪化させているのに気付いていません。
食欲がない場合は無理に食べないか、糖質制限を徹底した方が良いでしょう。
無理に糖質入りの補助食品やドリンクなどを勧めてくるようであれば、この論文やこの記事を示して、この論文を否定できるエビデンスを求めましょう。
入院中の食事で、医療側は患者が「何か」を食べれば良いのです。白米が食べれない場合、お粥を勧めてきます。麺やパンに変更ができることもあります。でも肉には変更してくれません。消耗しているのであればタンパク質が重要なはずなのに。彼らは主食という言葉から離れられません。主食はあくまで炭水化物でなくてはならないのが医療の世界なのです。
入院中の食事で、医療側は「何か」を飲めば良いのです。牛乳が飲めなければ、フルーツジュースを勧めてきます。全く栄養成分の違うものを平気で交換してきます。でも水やお茶への変更では納得してくれません。恐らくスポーツドリンクだったら納得してくれる可能性はあるでしょう。彼らにとってスポーツドリンクは健康的な飲料だからです。
自分を守るのは自分です。
「Sugar-rich foods exacerbate antibiotic-induced microbiome disruption」
「糖分の多い食品は抗生物質による腸内細菌叢の乱れを悪化させる」(原文はここ)


