やむを得ず胆嚢摘出を受けた人もいるでしょう。胆石で苦しんでいる人もいるでしょう。
胆石は、以前の記事「胆石も糖質過剰症候群である その1」「その2」「その3」で書いたように、糖質過剰症候群です。
また、「GLP-1受容体作動薬は青年や若年成人でも胆道系疾患リスクを増加させる」などで書いたように、今流行りのGLP-1受容体作動薬は胆嚢炎、胆石症、胆嚢摘出のリスクを高くします。
胆嚢なんて無くても良いや、と思っている人もいるかもしれませんが、人間の臓器で不要なものはありません。
胆嚢摘出術を受けると、つまり胆嚢がなくなってしまうと、がんのリスクが高くなります。胆嚢摘出術の術後に胆汁酸の生理的特性が変化する可能性があります。胆汁を貯蔵する袋がなくなり、オッディ括約筋の弛緩がなくなるため、胆汁酸は腸に継続的に排出されます。胆汁酸の組成と分泌にも変化が生じ、腸の粘膜は、胆汁酸の代謝産物である二次胆汁酸によって継続的に刺激されることになります。胆汁酸による継続的な刺激により腸内細菌叢の産物が二次胆汁酸とともに大腸がんのリスクを高める可能性があるのです。
ある研究(ここ参照)では、10件の研究のメタアナリシスをしたところ、胆嚢摘出術を受けた人の間で大腸がんのリスクは1.22倍増加しました。男女別にみると、女性と大腸がんとの間にも正の相関関係が認められ、リスクは1.17倍でした。
別の研究(ここ参照)では、がんの既往歴のない36~61歳の女性85,184人を対象とした前向き研究を実施しました。16年間の追跡調査期間中に、877例の大腸がんが記録され、追跡調査期間中に内視鏡検査を受けた1,452人の女性に遠位結腸腺腫が診断されました。年齢やその他の既知または疑われるリスク因子を調整した後、胆嚢摘出術と大腸がんのリスクとの間に有意な正の関連性が認められ、そのリスクは1.21倍でした。リスクが最も高かったのは、近位結腸がんで1.34倍、直腸がんで 1.58倍でした。
台湾のデータベースを使った研究を見てみましょう。(ここ参照)新たに胆石症と診断された患者15,545人と、マッチングを行った非胆石症患者62,180人を比較しました。胆石症のうち5,850人(37.6%)が胆嚢摘出術を受けました。
11年間の追跡期間で、胆石症患者群におけるがん発症率は、対照群と比較して1.52倍高くなりました。20~34歳の胆石患者と比較して、年齢が高くなる患者群ではがん発症リスクが高く、50~65歳では6.43倍、65歳超では12.6倍でした。
胆石症患者では様々な消化器系のがんのリスク増加があり、胆嚢がん59.3倍、肝外胆管がん10.7倍、膵臓がん3.12倍、肝がん1.90倍、胃がん1.71倍、大腸がん1.36倍でした。
胆嚢摘出術後、胃がんの発症リスクは1.81倍、大腸がんは1.56倍でした。
メカニズム的に、胆石症でもがんのリスクが上がり、二次胆汁酸と関係のない部位でのがんのリスクも上がっています。つまり、他の要因が大きいことになります。胆嚢摘出術は胆汁酸の代謝を変化させるだけでなく、腸内細菌叢の変化が起こることが一つの要因でしょう。
もう一つの興味深い研究を見てみましょう。(ここ参照)これも台湾の研究です。胆石症と診断された9496人の患者と、対照群として、マッチングした非胆石症の37983人を比較しています。胆石患者では、非胆石に比べて、前立腺がんのリスクは1.30倍になり、さらに、胆石症の診断後の追跡期間が長くなるにつれて前立腺がんのリスクは増加し、特に9年間の追跡期間後にはリスクが1.95倍に高まりました。
胆石で前立腺がんリスク増加となると、もうこれは胆汁酸や腸内細菌の変化だけでは説明できないように思えます。そうすると、原因は何か?そうです。最初に書いた、胆石は糖質過剰症候群です。もうこれは代謝疾患であり、代謝障害の表れが胆嚢炎、胆石となっただけでしょう。そして、もちろん、胆嚢摘出術の影響も多大にあり、それは消化器系のがんのリスク増加の大きな要因となっているでしょう。
いずれにしても、胆石になる前に、胆嚢を取る前に、どうにかするべきです。胆嚢炎、胆石症、胆嚢摘出のリスクを高くGLP-1受容体作動薬も、その必要性が本当にあるのかどうかを考えるべきです。食事を変更すればそれだけで改善するものを、薬で強制的に変えようとすると、そこにはリスクが伴うと考えるべきです。
胆石や胆嚢摘出術は様々ながんのリスクを上げる可能性があります。胆石のある人や胆嚢摘出術を受けた人は十分に注意してください。