日本人の胆石の保有率は5%程度とされています。欧米では20%前後と民族、人種によって差があるようです。胆石はコレステロール胆石が最も多いことから、予防には脂っこいものを食べ過ぎないことを専門医は推奨しています。本当でしょうか?
朝日新聞の記事によると、
「――胆石の予防には、やはり食事が大切ですか?
高カロリーや高コレステロールの食事を避けることが、予防に有効です。脂っこい料理はほどほどにしましょう。肉やバター、生クリームなどは飽和脂肪酸が多く、胆石のリスクを高めます。逆に、コーヒーや大豆を使った食事は、胆石のリスクを下げます。胆のう炎や胆管炎を避けるには、胆のうに胆石ができないように食生活を改善するのが有効です。また、肥満は大敵です。
アルコール分が強い酒もよくありません。飲み過ぎに注意しましょう。こうしたことは、疫学データによって明確に裏付けられています。結局のところ、健康の原則ははっきりしているのですね。バランスのとれた食事、適度な睡眠、そして体を動かして肥満を避けること。この三つです。」(この記事はここ)
と、専門医は書いています。
つまり、脂っこいものはコレステロールが高いので、胆汁中のコレステロールが増加すると考えているのでしょう。また、いつものごとく「バランスのとれた食事」という魔法のフレーズでごまかしています。昭和のアドバイスですね。
まずは、今回はコレステロールの吸収と合成について見てみましょう。(表は原文より改変)
変数 | BMI≤26.0 | BMI> 26.1 |
---|---|---|
コレステロール吸収(%) | 40.2±2.4 | 32.4±1.4 |
総コレステロール吸収量(mg / d) | 566±45 | 578±34 |
吸収される食事性コレステロール(mg / d) | 137±16 | 114±9 |
吸収された胆汁コレステロール(mg / d) | 428±36 | 464±30 |
糞便中の胆汁酸(mg / d) | 447±31 | 674±49 |
総糞便ステロール(mg / d) | 1280±61 | 1885±86 |
総腸内コレステロール流出(mg / d) | 1399±75 | 1789±72 |
胆汁コレステロール分泌(mg / d) | 1059±63 | 1439±64 |
コレステロール合成(mg / d) | 940±57 | 1533±80 |
コレステロール回転率(mg / d) | 1077±52 | 1649±78 |
上の表は2型糖尿病の体重(BMI)によるコレステロールの吸収と合成の比較です。肥満の方がコレステロールの吸収が悪く、逆に合成が増加しています。胆汁中へのコレステロールの分泌も肥満の方が増加しています。便に捨てられるコレステロールも肥満で増加しています。つまり、単純にコレステロール摂取量がそのまま吸収増加と関連していないということであり、逆に吸収が減れば、合成は増加するのです。
さらに様々な変数との関連を分析すると、食事性コレステロールはどの変数とも関連していませんでした。BMI、血糖値とインスリンはコレステロール合成の変数と正の相関があり、コレステロール吸収と負の相関がありました。SHBG(性ホルモン結合グロブリン)はコレステロール吸収の変数と正の相関があり、コレステロール合成と負の相関がありました。2型糖尿病ではSHBGは負の関連があります。SHBGは肥満群よりも正常体重群で1.5倍高く、インスリンレベルは1/2低くなりました。インスリンに対するSHBGの比率は、肥満群よりも正常体重群で4倍高くなりました。
つまり、インスリン抵抗性があると血糖値とBMIは増加、当然インスリン値は高くなり、それに応じてSHBGは低下し、コレステロールの吸収は低下し、合成が増加するのです。合成が増加すれば、胆汁のコレステロールも増加します。食事のコレステロールはどの変数とも関連していないので、食事の脂質を減らし、コレステロール摂取量を減らしても無駄であり、インスリン抵抗性を改善することの方が非常に重要になるのです。
他の研究でも胆石症のある人では、腸管からのコレステロールの吸収は低下し、合成が増加しているという結果が出ています。(その論文はここ)
だから、胆石は脂質過剰摂取で起きるのではなく、糖質過剰摂取で起きると考えられるのです。糖質過剰摂取状態で脂質過剰摂取すればもちろん最悪でしょう。
次回以降ではさらに、胆石と糖質過剰摂取について書きたいと思います。
「Body weight modulates cholesterol metabolism in non-insulin dependent type 2 diabetics」
「体重はインスリン非依存型2型糖尿病患者のコレステロール代謝を調節する」(原文はここ)
ドクターシミズ氏の言われてる事は、特に生活習慣病について、要するに現在の医学の常識として専門医が言っている事は、真実とは異なる場合が多い、という事だと思われますが、それでは、仮にドクターシミズ氏の言っている事が真実だとしたら、なぜそれが通説にならないのでしょうか?真実が通説にならず、我々患者に必要な真実としての情報がなぜ伝わらないのでしょうか?
そこが明確に、しかも分かり易く我々一般人に伝わらなかれば、どちらを信用して良いか分かりません。また、データなどもたくさん出されていますが、その数値を見ても、また書かれている文章を見てもとても理解しづらいと思います。
一般人によく分かるように説明出来なければ、言っている事が真実でも、その真実は「絵に描いた餅」となってしまうのではありませんか?
極力簡便でわかりやすい表現に改めるべきだと考えます。なお、この文章が専門家に向けられたものであれば、この限りではありません。
吉岡 斎さん、コメントありがとうございます。
いつもご指摘ありがとうございます。
一度記事にしますね。
>朝日新聞の記事によると、・・・・・・と専門医は書いています。
東京帝大出の理学博士の三石巌さんは20年以上前の啓蒙書のなかでコレステロールに罪はないと断言されていますね。
活性酸素によって、コレステロールのパッケージが破れることが問題なわけで、活性酸素を発生させない食生活の環境を整えることが大切だと言います。
もっとも、三石さんは糖質過剰摂取の害悪性については、まだ考えが及んでいなかった節がありますが、それにしても方向性の正しさには先見性があったわけですね。
コレステロールを悪者と決めつけている専門医たちがやみくもにコレステロールの降下剤を処方し、その副作用によって胆石が生じやすくなるとも書いていました。
ちなみに三石さんの健康年齢は95歳まであったというのは素晴らしいですね。死因は風邪からくる肺炎だったと記憶しています。かくありたい
やまもと一平太さん、コメントありがとうございます。
三石氏は何十年も前にあれだけのことを言っていたので、すごいですね。もちろんすべてが正しいわけではありませんが。
コレステロールが悪者であれば、胆汁の再吸収なんてしないでしょう。
ただ、スタチンは胆石のリスクを低下させるようですが。