超加工食品は人間の生活を便利にしました。しかし、恐らく人間を不健康にしました。便利と健康はトレードオフの関係にあるのかもしれません。
糖質オフの食品が増加しましたが、その超加工食品ばかり摂取することはお勧めしません。血糖値さえ上がらなければ健康でいられるわけではありません。
乳化剤は、商品の粘度を調整し、食感を改善し、保存期間を延長するために、加工された食品に広く使用されている食品添加物です。でも乳化剤って界面活性剤ですよね。簡単に言えばせっけんと同じですよね。
この乳化剤には様々な有害性が指摘されています。
国際炎症性腸疾患研究機構による食事ガイドラインでは、クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患では、乳化剤を避けることが推奨されています。
ある研究(ここ参照)では、乳化剤の人間の腸内細菌叢への影響を確かめる実験をしたところ、20種類の食品乳化剤のうち、大豆レシチン、モノグリセリド、ジグリセリドでは影響がありませんでしたが、カルボキシメチルセルロースとポリソルベート80はどちらも、微生物叢の構成と機能に持続的な悪影響を及ぼしました。様々なカラギーナンやガムは、微生物叢の密度、構成、および炎症誘発性分子の発現を変化させ、顕著な悪影響を示しました。
多くの乳化剤は腸の炎症を促進する可能性があることを示唆しています。
別の研究(ここ参照)では、軽症または中等症の活動性クローン病の患者113人を対象に、8週間の低乳化剤食と対照群を比較しました。乳化剤を含まない食品(介入群)またはカラギーナン、カルボキシメチルセルロース、ポリソルベート80を含む食品(対照群)を1日3回摂取しました。
その結果、低乳化剤食の介入群では対照群と比較して、クローン病活動指数での寛解が2.1倍、客観的な炎症所見である便中カルプロテクチンの50%以上減少が2.9倍高くなりました。
やはり乳化剤は腸の炎症にとって悪影響があるのは確かなようです。
また、食事アンケートのデータの研究なので質は低いですが、別の研究を見てみましょう。(ここ参照)オーストラリア、香港、中国の3つの地域において、クローン病患者、その近親者、その世帯員、そして同居していない健康な非血縁対照群の4つの参加者群を評価しました。
その結果、幼少期の加工食品摂取量は、クローン病患者は同じ世帯の人よりもソフトドリンクやファーストフードを消費し、近親者よりも加工フルーツやスナック菓子を消費し、健康な対照よりも様々な加工食品を消費する傾向がありました。香港と中国のクローン病患者は健康な対照よりも様々な加工食品を消費する傾向がありました。
最近12か月の食品添加物摂取量では、クローン病患者は健康な対照よりもアスパルテーム、スクラロース、ポリソルベート80の摂取量が有意に多く、乳化剤、人工甘味料、二酸化チタンの総摂取量が近親者と健康な人よりも多くなりました。香港と中国のクローン病患者は、ほぼすべての食品添加物の摂取量がすべての対照群よりも多くなりました。
現在(3日間)の添加物摂取量では、オーストラリアと香港のクローン病患者は近親者よりも食品添加物の総摂取量が多く、香港のクローン病患者は同じ世帯の人よりも食品添加物と乳化剤の総摂取量が多くなりました。
このように、クローン病は多くの加工食品や乳化剤などを含む食品添加物に曝露されており、それがクローン病発症や炎症の継続に影響を及ぼしている可能性があります。
では乳化剤の影響は腸の炎症だけにとどまるのでしょうか?ある研究では(これも食事アンケートのデータなので質が低い研究ですが)乳化剤とがんとの関連を示唆しています。(ここ参照)また、今回の研究のアンケートの食事記録には、摂取した工業製品のブランド名と商品名が記録されているので、食品添加物摂取量はある程度定量化できそうです。
615,749人年がこの研究に参加し、平均追跡期間は6.7年でした。合計2,604件の新規がん症例が診断され、その内訳は乳がん750件、前立腺がん322件、大腸がん207件、メラノーマ162件、肺がん124件、扁平上皮がん110件、リンパ腫90件などでした。
腸の炎症では影響がなかった、乳化剤である脂肪酸のモノグリセリドおよびジグリセリドの摂取量が多いと、全体的ながんリスクは1.15倍になり、乳がんは1.24倍、前立腺がんは1.46倍でした。さらに、乳がんリスクは総カラギーナンの摂取量が多い場合1.32倍、カラギーナンは1.28倍でした。
閉経前乳がんリスクの上昇は、二リン酸エステルで1.45倍、ペクチンで1.55倍、重炭酸ナトリウム(重曹)で1.48倍でした。重曹のリスク増加はにわかに信じ難いですが、結果はそのようです。
さらに、キサンタンガムの摂取量が多いと、全体的ながんのリスクが1.13倍、乳がんリスクの上昇は、脂肪酸ポリグリセロールエステルで1.50倍、閉経後乳がん上昇は、総カラギーナンで1.28倍、リン酸二カリウムの摂取量が多いと、閉経前乳がんのリスク1.77倍でした。
前立腺がんのリスク上昇は、グアーガムで1.39倍、アラビアガムで2.53倍、およびミツロウ(蜜蝋)は2.43倍でした。
いずれの乳化剤も大腸がんリスクとの関連は認められなかったことを考えると、この研究の結果はちょっと疑問かもしれませんね。
ただ、乳化剤が安全であるということはないでしょう。乳化剤が含まれているということは、他の食品添加物もたっぷりである可能性があるので、何重にも有害である可能性もあります。
これからさらに暑い夏がやってきます。アイスクリームなどの摂取も増えるかもしれません。アイスクリームは糖質たっぷりだけではなく、多くが乳化剤を含んでいます。その他の超加工食品も乳化剤がいっぱいです。
できる限り超加工食品の摂取は避けましょう。
さらに乳化剤は食品だけの添加物ではありません。「あれ」にも添加されています。それについては次回以降で。