鉄を減らせばインスリン抵抗性が改善する

貧血になるほどの鉄欠乏は有害です。しかし、むやみやたらに鉄サプリを飲んでいると、それも有害になる可能性があります。特に糖尿病や耐糖能異常がある場合には鉄を減らした方が良いでしょう。

今回の研究では、献血者と献血経験のない者(非献血者)のインスリン感受性を比較しました。181人の男性だ対象です。

献血者は、時々献血する者(研究前の6か月から5年間に1回の献血:グループ1)と頻繁な献血者(同時期に少なくとも2回の献血、中央値4回;グループ2)に分類されました。(図は原文より)

上の図は横軸がインスリン感受性、縦軸がフェリチン値です。かなりばらけていますが、全体的にはフェリチンが低いほどインスリン感受性が高いという関係があります。

フェリチン値は、非献血者の162g/Lに対し、献血者において有意に低く101.5g/Lでした。頻繁な献血者だけで見ると、フェリチン値は86.9でした。

上の図のように、鉄貯蔵量の減少と並行して、インスリン感受性は有意に上昇し、コントロールの2.45mIU/Lに対し、グループ2では3.42mIU/Lでした。頻繁献血者におけるインスリン感受性の改善を反映して、インスリン分泌はコントロールの401.7mIU/L minに対し、グループ2では186mIU/L minと有意に低下しました。

鉄の異常な過剰状態ではなくても、貯蔵鉄はインスリン作用に悪影響を及ぼす可能性が高いでしょう。

糖質過剰摂取によって生成される終末糖化産物(AGEs)自体は鉄などと結合し、インスリン抵抗性などの毒性効果を増強する可能性があります。(ここ参照)糖化タンパク質は、非糖化タンパク質の少なくとも3倍の鉄と結合します。糖質過剰摂取者にとっては鉄は低めに維持した方が良いかもしれません。

以前、アメリカなどの欧米諸国では小麦粉などに鉄が添加され、鉄補給対策がされているが、日本はそれがないので、鉄欠乏になってしまう、と批判されていた人がいます。しかし、現状は、アメリカはほとんどの人が肥満などの代謝障害です。鉄がインスリン抵抗性に大きな影響がある可能性があるでしょう。どの国でも国が行っている対策がすべて正しいわけではないのです。

今、アメリカはケネディさんにより、栄養や食事のガイドラインを見直し、大きな変化を遂げようとしています。その中身を見るのが楽しみですね。

以前の記事「鉄を減らすと糖代謝に好影響をもたらす」で書いたように、鉄を減らすと代謝が改善する可能性があります。少なくともフェリチンは2桁にとどめましょう。

「Iron stores, blood donation, and insulin sensitivity and secretion」

「鉄貯蔵量、献血、インスリン感受性および分泌」(原文はここ

One thought on “鉄を減らせばインスリン抵抗性が改善する

  1. ランニング習慣があると楽に走れるようになれそうな鉄剤に惹かれますが、
    やはり余計な薬やサプリは摂らないのがいいですね。

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