血液型によるすい臓がんのリスクの差

以前の記事「血液型による乳がんのリスクの差」では、血液型による乳がんのリスクに差があり、非常に大きな差ではなかったのですが、A型が最も高く、O型が低いという結果でした。

今回は非常に厄介ながんである、すい臓がんです。膵癌診療ガイドライン2016によると、様々なリスク因子があり、家族性では6.79倍で、50歳未満の若年発症のすい臓がん患者が家族にいると家族性すい臓がんは9.31倍にも上昇します。

また、2型糖尿病では1.94倍になります。糖尿病発症2年以内にすい臓がんが発症することが最も高いので、すい臓がんによって糖尿病が発症している可能性もあるのでしょう。さらに、糖尿病治療薬による差もあり、インスリンで1.59倍、スルホニルウレア薬(SU製剤)では1.70倍とリスクが増加します。肥満もリスクを増加させ、男性ではBMI30以上で3.5倍ものリスク増加になります。(図は上記ガイドラインより)

家族性以外のすい臓がんの多くは糖質過剰症候群だと考えられます。膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)はがん化しやすいすい臓にのう胞ができる疾患です。江部先生のブログにこのすい臓ののう胞が糖質制限で小さくなった報告が書かれていました。もしかしたら、がん化しやすいこのIPMNも糖質過剰摂取が原因である可能性もありますね。

今回の本題は、血液型とすい臓がんについてです。日本人を対象にした研究では次のような結果でした。(表は原文より改変)

遺伝子型由来のABO血液型によるすい臓がん発症の多変数調整OR(オッズ比)(95%CI)
OAABB
多変数調整OR1.01.64(1.08–2.48)1.67(0.94–2.98)1.42(0.88–2.31)

O型と比較してA型は有意差ありで、すい臓がんになる可能性が高くなりました。乳がんと同様にまたもやA型リスクが高い結果です。血液型を細かく見てみると、

遺伝子型由来のABO血液型対立遺伝子によるすい臓がん発症の多変数調整OR(95%CI)
2つ目の対立遺伝子最初の対立遺伝子
OAB
O
 多変数調整OR1.01.67(1.08–2.57)1.24(0.74〜2.06)
A
 多変数調整OR1.53(0.80–2.91)1.67(0.93–2.98)
B
 多変数調整OR3.28(1.38〜7.80)

OO型つまり、O型と比較して、AO型で1.67と有意にすい臓がんになりやすく、最もすい臓がんになりやすいのはBB型でした。BOとBBを合わせるとA型よりも低かったのに、細分するとBBが最も注意が必要なようです。このことは日本人のデータだけでなく、他の人種のデータでも同じ傾向です。

ABO血液型対立遺伝子によるすい臓がんの年齢調整済みおよび多変数調整済みオッズ比
2つ目の対立遺伝子最初の対立遺伝子
OAB
O年齢調整済みOR1.01.35(1.14-1.59)1.43(1.14-1.81)
多変数調整OR1.01.33(1.13-1.58)1.45(1.14-1.85)

A年齢調整済みOR1.61(1.23-2.11)1.43(1.05-1.95)
多変数調整OR1.61(1.22-2.18)1.47(1.07-2.02)

B年齢調整済みOR2.35(1.26-4.39)
多変数調整OR2.42(1.28-4.57)

(上の表はこの論文より)

私は最もすい臓がんになりにくいO型です。もちろん、O型の人ががんにならないわけではありません。しかし、BB型の人は十分な注意が必要かもしれません。糖質制限でできる限りすい臓がんになりにくくしましょう。

 

「ABO blood group alleles and the risk of pancreatic cancer in a Japanese population」

「日本人集団におけるABO血液型対立遺伝子と膵臓癌のリスク」(原文はここ

2 thoughts on “血液型によるすい臓がんのリスクの差

  1. 2人に1人が癌になると言われ「早期発見、早期治療」も喧伝されていますが、
    もしかしたら民間癌保険会社のキャンペーンなのでしょうか?
    素人には解りかねています。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      データ的には2人に1人はがんに罹患します。死亡率は別です。
      ただ、私は早期発見は大切だと思っています。
      しかし、もっと大切なのは日々の食事だとも思っています。

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