LDLコレステロール低下の程度と死亡率は関係ない

コレステロールはいまだに悪玉であり、LDLコレステロールの上昇は様々な心血管疾患や死をもたらすと思い込んでいる人がいます。そして、医師の中にもLDLコレステロールは低ければ低いほど良いと思っている人も多いでしょう。

LDLコレステロールを低下させればさせるほど死亡率は低下するのでしょうか？

スタチンなどを使用してLDLコレステロールを下げたとき研究のメタアナリシスを見てみましょう。合計323,950人の参加者を対象とした60のランダム化比較試験の分析です。プラセボ、通常のケア、または強度の低い治療と比較して、積極的またはより強力な脂質低下療法は、全原因死亡のリスクをわずかに（リスク比0.92）低下させました。しかし、NNT（治療必要数）は754です。 754人に1人が助かるのです。（図は原文より）

上の図の横軸はどれだけLDLコレステロールが低下したかのパーセンテージです。縦軸は死亡率の違いです。結果は明らかです。LDLコレステロールが10％低下しても60％以上低下しても、死亡率の変化はありません。つまり、スタチンなどの薬でどんどんLDLコレステロールを低下させても死を防ぐわけではないのです。「薬を飲まないと死ぬよ」というのは明らかに過剰な脅しです。

上の図はベースラインよりもLDLコレステロールが30%未満減少した試験と、LDLが30%～49% に減少した試験と50％以上減少した場合を分けています。30%未満減少とLDLが30%～49% に減少で全原因死亡率のリスクが減少しましたが、50%以上減少した試験では、リスクの減少は有意ではありませんでした。

上の図は全原因死亡、心血管疾患による死亡、心筋梗塞による死亡、脳卒中による死亡のLDLコレステロール減少率に対するNNTを示しています。最低でも心筋梗塞の50％以上の減少率でNNTが187です。しかし、心血管疾患および脳卒中では違いが無いかまたはNNTが1000前後となっています。1000人に1人に入るために、一生スタチンを飲みますか？

スタチンがわずかながらの効果を示すのは、LDLコレステロールを低下させるからではなく、恐らく炎症を抑えるからでしょう。LDLコレステロール値で疾患が起きるかどうかが決まるわけではありません。インスリン抵抗性の方がはるかに重要なのに、ほとんどの医師はそれを無視しています。

中性脂肪が十分に低く、HDLコレステロールが十分に高ければ、LDLコレステロール値を気にする必要はないでしょう。逆に中性脂肪が非常に高く、HDLコレステロールがかなり低いインスリン抵抗性の場合は、わずかな効果を得るためにスタチンを使うよりも、大きな効果を得るためにインスリン抵抗性を低下させる方が非常に重要ですし、薬も必要ありません。

糖質制限をすればインスリン抵抗性は十分に低下するでしょう。心血管疾患は糖質過剰症候群ですから。

「Extent of Low-density Lipoprotein Cholesterol Reduction and All-cause and Cardiovascular Mortality Benefit: A Systematic Review and Meta-analysis」

「LDLコレステロール低下の程度と全原因および心血管死亡率の利点：系統的レビューとメタ分析」（原文はここ）