「その2 C型肝炎ウイルス①」の続きです。
ある研究(ここ参照)では、肝生検を受けたC型肝炎ウイルス(HCV)陽性患者279人を対象とし、65.9か月追跡しました。糖尿病の有無と肝細胞がんのリスクとの間に正の関連が認められ、糖尿病患者における肝臓がんリスクは非糖尿病患者と比較して5.681倍高いことが示された。3年、5年、および10年時点での肝臓がん累積発生率は、糖尿病患者ではそれぞれ9.5%、9.5%、22.4%であり、非糖尿病患者ではそれぞれ0.9%、2.0%、5.0%でした。
糖尿病があることは非常にHCV感染患者の肝臓がんリスクを増加させます。
C型肝炎ウイルス(HCV)感染と糖尿病は関連していると考えられています。C型肝炎になると糖尿病リスクが多くなると言われていますが、その逆も考えられます。2型糖尿病だとHCV感染が増加するのでしょうか?
今回の研究では、22件(78,051人)の研究のメタアナリシスを行っています。HCV感染が糖尿病を引き起こすのか、あるいはその逆なのか?
メタアナリシスの結果は、2型糖尿病患者は非糖尿病患者よりもHCV感染の可能性が3.5倍高くなりました。
インスリン抵抗性と2型糖尿病の患者で観察される高インスリン血症はHCV複製を促進する可能性があることが示唆されています。さらに、糖尿病では免疫機能が低下します。インスリン抵抗性や糖尿病はHCV感染の自然経過の変化に関与し、脂肪肝、脂肪性肝炎、肝線維化の悪化につながる可能性があります。
感染と糖尿病発症、どっちが先かははっきりとはわかりませんが、いずれにしても糖質過剰摂取で悪循環に陥り、肝臓がんを発症する可能性が高いでしょう。
さらに興味深いことに、糖尿病の薬によって肝臓がんのリスクが変わります。(ここ参照)インスリン抵抗性を改善するメトホルミンだと、メトホルミン使用による肝臓がん発生の可能性は50%減少、インスリンを無理やり分泌させるスルホニル尿素だた1.62倍増加、インスリンを使用すると2.61倍に増加してしまいます。肝臓がん発症にインスリンが大きくかかわっている証拠でしょう。
HCV感染でC型肝炎の抗ウイルス療法が成功した後、糖尿病を併発している人にメトホルミンが肝臓がん発症リスクを低下させるという研究もあります。(ここ参照)
7,249人の慢性C型肝炎患者のうち、781人 (10.8%) が糖尿病を患っており、647人 (82.8%) がメトホルミン使用者でした。中央値4.4年の追跡期間中に、227人が肝臓がんになりました。5年間の累積肝臓がん発生率は、非メトホルミン使用者では10.9%、メトホルミン使用者では2.6% であり、糖尿病のない人では3.0%でした。非メトホルミン使用者はメトホルミン使用者と比較して、2.83倍肝臓がんリスクが高くなりました。メトホルミンで非糖尿病と同じくらいまで発生率を下げられるということは、インスリン抵抗性がかなり関与していることを示唆しますね。
抗ウイルス療法によって持続的ウイルス学的奏効の後の肝臓がん発生リスクは、肝硬変患者では非肝硬変患者に比べて3倍高いので、肝硬変に進行しないようにしなければなりません。(ここ参照)
当然ながら、糖尿病も非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)も糖質過剰症候群です。インスリン抵抗性が先か、肝臓の線維化、肝硬変が先かは議論があるかもしれませんが、糖質過剰摂取、特に果糖の過剰摂取で脂肪肝を招き、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)およびインスリン抵抗性を起こすことを考えると、糖質過剰摂取による肝臓の障害が進行して、肝臓の線維化、肝硬変へと進行すると考えた方が妥当でしょう。
その1でも書きましたが、C型肝炎ウイルス感染は確かに、肝臓がんのリスクを上げますが、その背景または共因子として、糖質過剰摂取による高血糖、インスリン抵抗性などが大きくかかわっている可能性が非常に高いと思われます。
糖尿病にはなっていなくても、糖質過剰摂取による影響は甚大でしょう。もしかしたら、C型肝炎ウイルス感染していても、糖質制限をしていれば肝臓がんにはならないのではないかと思っています。まだ、エビデンスはありませんが。
「Type 2 diabetes mellitus and the risk of hepatitis C virus infection: a systematic review」
「2型糖尿病とC型肝炎ウイルス感染リスク:系統的レビュー」(原文はここ)
「Epidemiology of Hepatocellular Carcinoma」
「肝細胞がんの疫学」(原文はここ)