痛ましい交通事故が後を絶ちません。高齢者の事故も非常に多いですが、先日の神戸の事故は50代の運転手です。(ここ参照)このような事故があるたびに考えるのは、薬の影響です。報道には一切出てきません。しかし、非常に多くの人が運転に影響を与える薬を飲んでいるのが現実です。そして、それは高齢になれば尚更大きな影響があるでしょう。服薬歴を調べ、それを公表できると良いかもしれません。(個人情報の問題があるので、難しいでしょうけど)運転する人、そして薬を処方する医師は、運転に影響がある薬の副作用を軽視し過ぎです。
もちろん、今回の運転手が薬を飲んでいたかどうかはわかりません。他の持病があったのかもしれませんし、急な体調変化かもしれません。しかし、交通事故には少なくない割合で薬が関係していると思っています。
今回の研究では、2型糖尿病、慢性疼痛、または心房細動を患う65歳以上の治療歴が判明しているドライバー1783人を対象としました。運転能力を損なう可能性のある薬(PDI薬)の使用状況を調べました。
平均年齢は 75.9 歳で、65.5%が男性、20.9%が PDI薬を飲んで(PDI+)いました 。PDI+ ドライバーの多く(64.1%)は、1 種類の PDI 薬のみを服用していました。最も頻繁に処方された PDI 薬は、ゾルピデムで10.7%、次にゾピクロン8%、ブロマゼパム7.8%、トラマドール6.9%、プレガバリン5.5%でした。PDI+ドライバーは、慢性疼痛の可能性が2.30倍、うつ病の既往の可能性が4.28倍、多剤併用の可能性が4.32倍でした。
他の研究で(ここ参照)、PDI 薬の服用はESS(エプワース眠気尺度)による日中の眠気の評価と関連しており、これは自動車事故のリスクと関連付けられています。PDI薬を定期的に服用しているドライバーの平均エプワース眠気尺度(ESS)スコアは7.8でしたが、PDI薬を服用していない被験者の平均スコアは6.0で、PDI薬服用群の方が日中の眠気が強いことが示されました。PDI薬の種類に関わらず、定期的に服用している薬の総数もESSスコアと正の相関関係がありました。鎮痛剤のNSAIDsを服用している患者と抗パーキンソン病薬を服用している患者では ESS スコアが高くなりました。
では、認知機能が正常な高齢者における服薬と運転免許試験の成績について見てみましょう。この研究では、有効な運転免許証を所持し、認知機能が正常な65歳以上の198人を対象としています。路上試験の成績(合格またはぎりぎり合格/不合格)を調べました。平均年齢は72.6歳です。70人(35%)が平均5.70年の追跡期間中に路上試験でぎりぎり合格/不合格の評価を受けました。(図は原文より)
上の図のように、抗うつ薬の使用では、合格基準のぎりぎり合格/不合格となるリスクが2.82倍増加し、抗うつ薬の中でもSSRI/SNRIの使用のみで見た場合、SSRI/SNRI薬の使用は、合格基準ぎりぎり/不合格となるリスクが2.68倍でした。鎮静剤や睡眠剤を服用している人は、服用していない人に比べて、ぎりぎり合格/不合格となるリスクが2.72倍、痛み止めの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)またはアセトアミノフェンの使用でも2.72倍になりました。意外なことに、抗コリン薬/抗ヒスタミン薬と運転能力の間には有意な影響は見られませんでした。
多剤併用も問題です。ある研究では(ここ参照、図もここより)、多剤併用に関連する急ブレーキの発生率を調べました。2872人が対象となりました。登録時、157人(5.5%)のドライバーは2種類未満の薬を服用しており、904人(31.5%)は2~5種類、895人(31.2%)は6~9種類、571人(19.9%)は10~13種類、345人(12.0%)は14種類以上の薬を服用していました。
上の図のように、薬の服用数が増加するにつれて、急ブレーキの発生率は増加しました。2種類未満の薬を使用しているドライバーと比較して、2~5種類の薬を使用しているドライバーでは急ブレーキイベントのリスクが8%、6~9種類の薬を使用しているドライバーでは12%、10~13種類の薬を使用しているドライバーでは19%、14種類以上の薬を使用しているドライバーでは34%増加しました。
飲酒運転では重い罰則があります。しかしPDI薬の服用でも、十分に危険な運転のリスクが高くなります。厳しくするとしたら、アルコールと同様に、例えば1種類は罰金といくらかの減点、2~3種類では刑事罰と免停、4種類以上では刑事罰と免許取り消しでも良いのかもしれません。もちろん、全員が運転パフォーマンスが落ちるわけではないのですが、それは飲酒でも同様かもしれないません。リスクのある薬をレベル分けして、それに応じて、運転注意や運転禁止の措置があっても良いのかもしれません。免許更新時にもPDI薬服用の申請を義務付けるのも良いかもしれません。
さらに、医療側にも責任があります。PDI薬を処方する場合は必ず、医師および薬局で運転に対する注意または禁止を書面などで伝えるべきでしょう。
個人情報の問題はありますが、プライバシーに配慮しつつ、過去の事故での薬の服用状況をもっと公表して、注意喚起をすることも必要でしょう。
でも現実にはなかなかそこまではできません。しかし、何かをしなければなりません。そうしないと犠牲者は増えるばかりだと思います。
薬を飲んでいる方、運転には十分にご注意を。
「Use of potentially driver-impairing drugs among older drivers」
「高齢ドライバーにおける運転能力を損なう可能性のある薬物の使用」(原文はここ)
「Medication and Road Test Performance Among Cognitively Healthy Older Adults」
「認知機能が正常な高齢者における服薬と運転免許試験の成績」(原文はここ)


GLP-1受容体作動薬の副作用で救急搬送される事例のNHKニュース。
気になったのは、解説の医師の
「極端な食事制限はケトーシスになる場合があり危険」との解説。
明らかに糖質制限ダイエットを標的にしているようで残念です。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
生理的なケトーシスがまだ有害と思っている医師はいっぱいいるでしょう