慢性疲労症候群とは、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)とも呼ばれ、身体診察や臨床検査で客観的な異常が認められない状況で日常生活を送れないほどの重度の疲労感が長期間続く状態をいい、その原因は、身体的なもの、精神的なものを含め分かっていません。(ここ参照)
以前アメリカでは、診断基準を見直し、新しい疾患名「SEID(Systemic Exertion Intolerance disease)全身性労作不耐疾患 」というものが提唱されましたが、現在はどうなっているのか?
線維筋痛症や過敏性腸症候群、片頭痛などと併存することも多いと言われています。恐らく、慢性疲労症候群にも中枢性感作(中枢神経の過敏化)が大きく関係していると考えられています。
以前の記事「痛覚変調性疼痛の本質は脳のインスリン抵抗性ではないか? その1」「その2」「その3」「その4」「その5」で書いた痛覚変調性疼痛と同じメカニズムが働いている可能性が高いのではないかと思います。
そうすると、慢性疲労症候群と糖質過剰摂取の関連について調べたくなりますね。
今回の研究では、慢性疲労症候群(CFS)と糖質過剰症候群の代表、メタボリックシンドロームとの関連を調べています。CFSと診断されるほどの症状や疲労を伴わない原因不明の不調はISFという名前を付けています。123⼈の対照群、111⼈のCFS患者、259⼈のISF患者を含む493⼈が対象です。(図は原文より)
上の図は、横軸がメタボリックシンドロームの構成要素の様々なパラメータ、縦軸がその有病率です。左から低HDLコレステロール、腹囲の増加、高血圧、高中性脂肪、高血糖、インスリン抵抗性です。
興味深いことに、低HDLコレステロールの有病率は60%前後で、どのグループも違いはありません。腹囲の増加はCFSで有意に多く、ISFでもコントロールよりも多く見えます。
高血圧は有意ではありませんが、CFSで多くなっています。高中性脂肪はCFSで有意に多く、ISFでもコントロールよりも多く見えます。
高血糖は、コントロールと比較してCFS、ISFの両群で有意に多くなっています。インスリン抵抗性も同様にCFS、ISFの両群で有意に多くなっており、CFSが最も多くなっています。
CFS患者では、メタボの構成要素を持ってる数が平均2.12個あり、これは対照群の平均1.59個よりも有意に⾼い値でした。メタボリックシンドロームの有病率は対照群で最も低く(21.1%)、ISF群で中間(32.4%)、CFS群で最も⾼く(38.7%)なっていました。
CFS患者は対照群と⽐較してメタボリックシンドロームを発症する可能性が2.65倍⾼くなりました。メタボリックリスク因子が1つ増えるごとに、CFSを有する可能性が有意に37%増加しました。
同様に、ISF患者は対照群と比較して、メタボリックシンドロームを有する可能性が2.19倍高く、メタボリックリスク因子が1つ増えるごとに、ISFを有する可能性が13%増加しました。
糖質過剰摂取による高インスリン血症は、HPA軸(視床下部-下垂体-副腎系:ストレスから体を守るために脳とホルモンの分泌を調節する重要なシステム)および交感神経系を活性化します。サイトカインであるIL-6やTNF-αなどの炎症性分⼦の産⽣が刺激され、CRPも増加します。慢性の炎症に晒された脳や脊髄、全身の様々な臓器は、様々な不調を起こしても不思議ではないでしょう。
さらに、慢性疲労症候群では、脂質酸化生成物であるマロンジアルデヒドとタンパク質酸化生成物であるタンパク質カルボニルが増加しています。(ここ参照)イソプロスタンという酸化ストレスの指標が増加しているという研究もあります。(ここ参照)CFSは酸化ストレスが非常に高い状態だと考えられます。糖質過剰摂取では酸化ストレスが大きく増加します。
さらにさらに、mTORの過剰な活性化はミトコンドリアの機能障害を起こし、CFSの発症を誘発および促進すると考えられています。(こことここ参照)糖質過剰摂取ではミトコンドリアの機能障害およびmTORの過剰活性化を起こします。
また、糖質過剰摂取ではマグネシウムが低下することが多いですが、CFS患者の赤血球マグネシウム濃度は対照群よりも低く、CFS患者にマグネシウムを投与すると、エネルギーレベルの向上、感情状態の改善、痛みの軽減を報告し、治療を受けた15人のうち12人が治療から恩恵を受けたと述べ、7人の患者ではエネルギースコアが最大値から最小値に改善しました。(ここ参照)
慢性疲労症候群には、まずは糖質制限とマグネシウムですね。
「Chronic fatigue syndrome is associated with metabolic syndrome: results from a case-control study in Georgia」
「慢性疲労症候群はメタボリックシンドロームと関連している:ジョージア州における症例対照研究の結果」(原文はここ)
