痛覚変調性疼痛の本質は脳のインスリン抵抗性ではないか? その4 過敏性腸症候群

痛覚変調性疼痛には様々な疾患があります。代表的なものでは、線維筋痛症や片頭痛がありますが、過敏性腸症候群もその代表でしょう。過敏性腸症候群は大腸および小腸に特に器質的異常がないにもかかわらず、下痢あるいは便秘などの便通異常と腹痛、腹部膨満感などの症状がある病気です。下痢型、便秘型、混合型があります。

今回はその過敏性腸症候群とその他の痛覚変調性疼痛などとの関係、インスリン抵抗性との関連を書きたいと思います。

ある研究(ここ参照、表もここより改変)では、過敏性腸症候群患者の片頭痛、線維筋痛症、うつ病発症リスクを分析しています。

過敏性腸症候群は97,593人を特定し、過敏性腸症候群ではない比較集団を構成するために27,402人を無作為に抽出しました。調整後、過敏性腸症候群では非過敏性腸症候群の人と比較して、片頭痛、線維筋痛症、うつ病の発症の可能性が増加していました。

有病率
オッズ比
片頭痛 1.6
線維筋痛症 1.8
うつ病 1.4
上記のいずれか 1.6
うつ病と線維筋痛症 2.0
片頭痛と線維筋痛症 2.0
うつ病と片頭痛 1.5
うつ病、片頭痛、線維筋痛症 2.6

上の表のように、過敏性腸症候群患者は、片頭痛が1.6倍、線維筋痛症が1.8倍、うつ病が1.6倍も発症の可能性が高くなりました。さらに、この3つの疾患のうち、うつ病と線維筋痛症、および片頭痛と線維筋痛症の2つを合併するのは2.0倍、うつ病、片頭痛、線維筋痛症の3つとも合併するのは2.6倍にもなりました。

どれも同じ原因から起こると考えれば、全く不思議ではありませんね。

それでは、インスリン抵抗性を生む猛毒「果糖」と過敏性腸症候群との関係を見てみましょう。何千年もの間、人類は果物や蜂蜜から1日あたり5グラム未満の果糖を摂取してきたと考えられています。しかし、現代では果糖の1日摂取量が驚異的な50~80gに上昇したと言われています。成人の2人に1人は35gの果糖を完全に吸収することができません。

25 gおよび50 gの果糖摂取は、健康な人において過敏性腸症候群様の消化器症状を促進することがわかっています。6g/日未満の低果糖食は過敏性腸症候群の症状を改善します。

果糖は腸に対しては過敏性の消化器症状を起こします。そして、果糖はインスリン抵抗性を増加させます。果糖摂取に反応して脳のインスリン抵抗性が増加するとも言われています。つまり、果糖過剰摂取は認知症のリスクを増加させます。(ここここ参照)果糖の摂取量が最も多い人は、1週間あたりの累積摂取量が0の場合と比較して、アルツハイマー病は1.6倍です。

内臓肥満はインスリン抵抗性が非常に高くなっていますし、糖質過剰摂取、特に果糖過剰摂取によって起こります。内臓脂肪型肥満は過敏性腸症候群のリスク増加と関連しています。(ここ参照、図もここより)

上の図は、様々なパラメータによる過敏性腸症候群の可能性です。女性だと3.231倍、逆流性食道炎(これも糖質過剰摂取で起こりますね)によるびらん性食道炎があると2.786倍、腹囲が83cmを超えると75cmと比較して7.805倍、内臓脂肪の面積(図では単位がcm3になっていますが、恐らくミスプリでcm2でしょう)が80cm2未満の人と比較して126cm2を超えると9.419倍、内臓脂肪/皮下脂肪の比が1.6を超えると10.154倍です。

上の図は下痢型の過敏性腸症候群についてです。女性だと4.036倍、びらん性食道炎があると4.409倍、腹囲が83cmを超えると75cmと比較して12.455倍、内臓脂肪の面積が80cm2未満の人と比較して126cm2を超えると13.465倍、内臓脂肪/皮下脂肪の比が1.6を超えると14.665倍です。

上の図は便秘型過敏性腸症候群についてです。便秘型では内臓脂肪面積だけが有意とは言えませんが関係していますね。内臓脂肪の面積が80cm2未満の人と比較して126cm2を超えると44.888倍です。

過敏性腸症候群とメタボリックシンドロームの関係を分析したメタアナリシスの研究も見てみましょう。(ここ参照)

過敏性腸症候群ではメタボリックシンドロームのリスクが2.05倍でした。さらに下痢型では、メタボリックシンドロームのリスクが3.09倍でした。

過敏性腸症候群患者では、インスリン抵抗性のHOMA-IRの増加、肥満リスクの増加(1.46倍)、BMIの上昇、腹囲の上昇、収縮期高血圧との関連が認められました。 また、過敏性腸症候群は、総コレステロール、中性脂肪の上昇、HDLコレステロールの低下とも関連していました。

過敏性腸症候群はインスリン抵抗性の指標であるTyGインデックスと関連し、TyGインデックスが最も高いと、過敏性腸症候群の発症リスクは1.24倍になるという研究もあります。(ここ参照)

過敏性腸症候群発症機序にはインスリン抵抗性が大きく絡んでいる、もっと言えば、インスリン抵抗性が原因であると考えられます。

慢性的な高インスリン血症、高血糖は末梢神経だけでなく、中枢神経にも障害を起こします。

現在の医療では、様々な疾患には様々な原因があり、それぞれの診療科で、それぞれの理由をつけて治療を行いたがります。しかし、根本原因は一つに収束していきます。それが糖質過剰摂取です。それぞれの診療科の唱える原因は根本原因よりももっと下流のものでしかありません。

そして、治療と称して、症状や数値を改善することだけを目指し、根本原因は放置され、根本治療は行われないままです。

代謝障害を治療しなければ、どんどん様々な疾患が襲って来ます。まずは糖質制限をしましょう。

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