肥満に対するトリプルホルモン受容体作動薬レタトルチドの効果はものすごいが……

GIP受容体、GLP-1受容体、グルカゴン受容体の3つのホルモン受容体に同時に作用する世界初の薬、トリプルホルモン受容体作動薬のレタトルチドがものすごい結果を出してきました。以前の記事「イーライリリーの次世代肥満症治療薬は手術並みの減量効果を示したが…」でも紹介しましたが、それが論文化されました。

もちろん、開発企業のイーライリリー社による資金提供を受けている試験ですが、それを差し引いても肥満患者の中には大喜びの人もいるでしょう。

この第3相無作為化二重盲検試験では、糖尿病のない肥満成人を対象に、レタトルチド(4mg、9mg、または12mg)またはプラセボを週1回皮下注射で80週間投与しました。2339人の参加者がランダム化されました。

参加者の平均の体重は112.7kgで、BMIも約40です。では、結果を見てみましょう。(図は原文より、表は原文より改変)

上の図のように、レタトルチド群では、ベースラインから80週目までの体重の平均変化率は、4mg投与群で-17.6%、9mg投与群で-23.7%、12mg投与群で-25.0%であり、プラセボ群の-3.9%と比較して有意に大きく減少しました。25%減ということは113kgの人が80kg台になるということです。延長フェーズでは、104週時点で平均体重が最大29.9%の減少でした。

図のBに示すように、腹囲も15%以上減少するのは、12mg投与群で80%近くになります。BMIが30未満になったのは9mg投与群と12mg投与群で50%を超えています。12mg投与群では4分の1以上の人がBMI25未満の正常体重になったのです。

さらに、パラメータの変化を見てみましょう。

上の図のように、中性脂肪値はレタトルチド群で30%以上の減少です。つまり、80mg/dL程度まで低下するようです。これはどうでも良いですがLDLコレステロールも低下します。

HDLコレステロールもわずかに増加します。

炎症を示すCRPは大きく減少しました。収縮期血圧はレタトルチド群で10mmHg前後の低下です。

図のBに示すように、耐糖能に関しても、レタトルチド群の90%前後の人が正常血糖でした。空腹時インスリンも50%前後低下しています。プラセボ群とは大きく異なります。

さらに、膝の変形性関節症の疼痛スコア(60%以上)、閉塞性睡眠時無呼吸群のAHIイベント(50%以上)も改善しました。

気になる安全性を見てみましょう。

有害事象 レタトルチド プラセボ群
(N=586)
4 mg
(N=584)
9 mg
(N=583)
12 mg
(N=582)
参加者数(パーセント)
治療開始後に発生したあらゆる有害事象 508 (87.0) 519 (89.0) 519 (89.2) 473 (80.7)
重篤な有害事象 45 (7.7) 45 (7.7) 61 (10.5) 32 (5.5)
死 0 3 (0.5) 1 (0.2) 2 (0.3)
治験中止につながる事象 6 (1.0) 8 (1.4) 16 (2.7) 10 (1.7)
参加者の10%以上に有害事象が認められた事象
吐き気 167 (28.6) 224 (38.4) 247 (42.4) 87 (14.8)
下痢 147 (25.2) 199 (34.1) 186 (32.0) 79 (13.5)
便秘 139 (23.8) 151 (25.9) 152 (26.1) 64 (10.9)
嘔吐 62 (10.6) 133 (22.8) 147 (25.3) 28 (4.8)
食欲不振 75 (12.8) 78 (13.4) 96 (16.5) 34 (5.8)
上気道感染症 83 (14.2) 71 (12.2) 76 (13.1) 68 (11.6)
めまい 29 (5.0) 52 (8.9) 70 (12.0) 18 (3.1)
消化不良 46 (7.9) 52 (8.9) 63 (10.8) 22 (3.8)
腹痛 41 (7.0) 34 (5.8) 60 (10.3) 11 (1.9)
倦怠感 43 (7.4) 62 (10.6) 59 (10.1) 21 (3.6)
特に関心のある有害事象およびその他の安全性に関するトピック
感覚異常:皮膚の灼熱感および関連する有害事象 30 (5.1) 72 (12.3) 73 (12.5) 5 (0.9)
注射部位反応 32 (5.5) 52 (8.9) 71 (12.2) 22 (3.8)
低血圧、起立性低血圧、血圧低下 16 (2.7) 31 (5.3) 51 (8.8) 5 (0.9)
重度または深刻な胃腸系の有害事象 15 (2.6) 35 (6.0) 30 (5.2) 8 (1.4)
がん 12 (2.1) 5 (0.9) 11 (1.9) 6 (1.0)
重度または深刻な不整脈または心臓伝導障害 1 (0.2) 4 (0.7) 5 (0.9) 5 (0.9)
重度または深刻な胆嚢または胆道疾患 10 (1.7) 5 (0.9) 4 (0.7) 4 (0.7)
審査で確認された膵炎 1 (0.2) 3 (0.5) 4 (0.7) 2 (0.3)
審査で確認された主要な心血管系有害事象 1 (0.2) 5 (0.9) 3 (0.5) 1 (0.2)
重度または深刻な栄養失調 1 (0.2) 2 (0.3) 0 0

重篤な有害事象は、レタトルチド群の参加者の 7.7 ~ 10.5%、プラセボ群の参加者の 5.5% で報告されました。レタトルチド群での死亡は4人、プラセボでは2人でした。

レタトルチド群でより多く報告された最も頻繁に発生した特に関心のある有害事象は、感覚異常、注射部位反応、および低血圧でした。特に感覚異常は9mgと12mg投与で12.3~12.5%もの高率で報告されています。

がんはレタトルチド群の4mgで12人 (2.1%)、9mgで5人 (0.9%)、12mgで11人 (1.9%)と、プラセボの6人 (1.0%)よりも多い気がしますが、どうなんでしょうか?

さらに、主要な心血管系有害事象が10人に発生しました。レタトルチドの4 mg群で1人(0.2%)、9 mg群で5人(0.9%)、12 mg群で3人(0.5%)に報告されたのに対し、プラセボ群では1人(0.2%)でした。これも多い気がしますが、どうなんでしょうか?

補足に隠されていますが、安静時心拍数の増加もちょっと気になります。

20週までは9 mg群と12 mg群で心拍数が増加し続け、その後低下していきます。しかし、ピークでは8~9の増加を示し、安静時心拍数80以上になっています。さらに80週でもベースラインには戻っていません。体重が大きく減ったのに、心拍数は増加、何でしょう?

安静時心拍数が増加するのは良いことではありません。(「安静時心拍数と死亡率」「高い安静時心拍数は心臓の危険因子」「心血管危険因子の数と安静時心拍数との関連」「安静時心拍数はがん死亡率と関連する」参照)

さて、このような薬の恩恵は数値では表されています。たった週に1回の注射で、体重が減った状態を維持し、様々な検査の数値も改善した状態でいられるのです。食事を変更する必要もありません。

しかし、数値の改善=健康、ではありません。もちろん、肥満がもたらす様々な有害性を低下させることは可能でしょう。でも、人間がどうしてこれほど太り、不健康になったかを考えなければなりません。食品業界が販売しているものを食べ、国が推奨している食事を食べても不健康になっているのです。もちろん、過度の肥満は国の推奨の食事ではないかもしれませんが、食品業界も医療業界も糖質過剰摂取をずっと続けさせています。

不健康な食事をさせて、それを改善する薬を提供する、というマッチポンプ状態です。

そして、このような薬は止めれば、リバウンドしてしまいます。つまり、薬を使った状態を維持するには、薬を使い続ける必要があるのです。いつまで経っても医療から離れられません。

医療が本当の為すべきことは、病気や症状を改善し、医療から離れられる状態にすることのはずです。しかし、今の医療はずっと医療に縛り付けることを行ってしまっています。

私は患者が良くなり、受診しなくなると嬉しいですが、世の中の医師の中には困る医師も大勢いるのでしょう。

そして、薬には必ず副作用が伴います。今流行りのマンジャロを医師に処方されてから、逆に具合が悪くなってしまった患者もいます。

薬に頼った人生をこれからも歩み続けることが良いと思っている人もいるでしょう。その人を否定するつもりはありません。私は医療を受けることが嫌いなので、できる限り医療とは距離を置きたい人です。だから、これからも糖質制限を続けます。

「Retatrutide, a Triple Hormone Receptor Agonist, for Treatment of Obesity」

「肥満治療薬であるトリプルホルモン受容体作動薬レタトルチド」(原文はここ)

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