安静時心拍数と死亡率

みなさんの安静時心拍数はどれくらいでしょうか?測定は簡単に自分でもできるので、一度測ってみてください。手首の親指側に反対の手の指を当てて、拍動している回数を1分間数えるだけです。もちろん血圧計などを持っていれば、それで血圧と共に表示されます。

安静時心拍数が高いと心血管疾患の危険が高くなり、以前の記事「高い安静時心拍数は心臓の危険因子」で書いたように、明らかに安静時心拍数の増加は心不全や心臓突然死を増加させます。

今回の研究では、1時点での安静時心拍数だけではなく、約10年間にわたる安静時心拍数の変化と死亡率を分析しています。メルボルン共同コホート研究の参加者からベースライン(1990~1994年、41,386人、死亡数9,846人)および追跡調査(2003~2007年、21,692人、死亡数2,818人)時の安静時心拍数測定値のデータを使用しました。生命状態と死因は、それぞれ2015年8月と2013年12月まで確認されました。追跡期間の中央値は21.9年です。

原因別死亡率の分析では、がんによる死亡が3618人、心血管疾患による死亡が2239人、その他の原因による死亡が2573人でした。1分間に10拍増加するごとに、全原因死亡は1.13倍、心血管疾患死亡は1.11倍、がんによる死亡は1.10倍、その他の原因による死亡は1.20倍でした。がんでは部位別のがん死亡率の⾼さが観察され、特に乳がん1.16倍、⼤腸がん1.18倍、腎臓がん1.27倍、肺がん1.19倍でした。(図は原文より)

上の図はベースラインで測定された安静時⼼拍数と全原因死亡率および死因別死亡率との関連性です。心拍数が60未満の人と比較して、男女とも心拍数が増加すると全原因死亡も死因別死亡率も増加しています。心血管死以外は男性の方が死亡率の増加が大きくなっています。

上の図は男女別ベースラインで測定された安静時⼼拍数(10拍/日増加あたり)と原因別死亡率の関連性です。がん全体では男女とも死亡率の増加は同じ程度ですが、部位別では、大腸がんは女性の方がリスクが高く、腎臓がんや肺がんは男性の方が高くなっていました。冠動脈疾患による死亡率増加は男女とも同程度、感染症死、内分泌疾患死は男性が高く、呼吸器疾患死は男女とも高くなっていました。

上の図はベースラインから追跡調査時、およそ10年間での安静時心拍数の変化と全原因死亡率の関連性です。安定した安静時心拍数(-5~5)と⽐較して、安静時心拍数の上昇は全体的な死亡リスクの上昇と関連していましたが、安静時心拍数の減少とは関連していませんでした。

男性ではおよそ10年間で5~15心拍数が増加するだけで、有意に死亡リスクが増加し、女性では5~25増加までは有意ではありませんでしたが、25以上も増加すると大きく死亡リスクが増加しました。

安静時心拍数が70以下から70以上に悪化した人では、70以下という健康な状態を維持した人と比較して、死亡リスクが24%高くなりました。

安静時心拍数が高いことだけでなく、年を追うごとに増加することは危険な状態になっている可能性があります。

以前の記事「心血管危険因子の数と安静時心拍数との関連」でも書いたように、心血管危険因子(高血圧、糖尿病、肥満(BMI28以上)、脂質異常症、喫煙、アルコール使用、身体活動の低下という 7 つの因子)とされる因子と安静時心拍数の関連を分析すると、最も関連しているのは糖尿病で1.82倍、次が高血圧で1.52倍でした。危険因子数が増えてもやはり糖尿病が因子として含まれている場合は安静時心拍数の増加の可能性は高くなっていました。3つの因子の組み合わせの場合は高血圧、糖尿病、脂質異常で2.41倍でした。糖尿病、高血圧、脂質異常(高中性脂肪や低HDLコレステロール)は全て糖質過剰症候群です。

年々、心拍数が増加するのであれば、糖質過剰摂取を続けていることにより、段々と様々な糖質過剰症候群の症状や疾患が進行しつつあるのかもしれません。

心血管疾患だけでなく、今回の記事や以前の記事「安静時心拍数はがん死亡率と関連する」で書いたように、がんの死亡率も増加します。

あなたの安静時心拍数は60を超えていますか?70を超えたら危険水域に入っていますので、食事を見直すべきかもしれません。80を超えているのであれば、かなり進行している状況だと思った方が良いでしょう。

「Resting heart rate, temporal changes in resting heart rate, and overall and cause-specific mortality」

「安静時心拍数、安静時心拍数の時間的変化、および全体的および原因別死亡率」(原文はここ

6 thoughts on “安静時心拍数と死亡率

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      いやいや私も極端には安静時心拍数は低くなくて、50台中盤くらいです。
      若いスポーツマンの人の心拍数が40台だったりすると、ちょっとだけなぜかうらやましく思います。

  1. 私は現在69歳心拍数は60台ですが、50歳ころ水泳をしていた時は30から40台で主治医から徐脈と診断されていました
    現在は水泳はしていません。
    運動により心拍数が下がったと思います。それ以前は60台でしたから

    1. TIさん、コメントありがとうございます。

      50代で40台の心拍数ですか。私は運動してもそこまでは下がりません。

  2. スーパー糖質制限歴10年で定期的に運動してますが、50代で心拍数は常に(昔から変わらず)80~90です。
    諦めモードです。

    1. Caesiusさん、コメントありがとうございます。

      スーパー糖質制限をしているのであれば、その分はリスクが低下するでしょう

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