妊娠中の母体血清葉酸値と胎児の先天性心疾患

妊娠中の十分な葉酸摂取は、胎児の神経管閉鎖障害の発症を予防、リスク低下するために必要です。葉酸は確かに神経管閉鎖障害を発症させるリスクを低下させるようですが、その10倍も多い先天性心疾患との関連はどうでしょうか?

今回の研究では、先天性心疾患症例とそうではない対照群で、妊娠初期から中期の母親の血清葉酸値と胎児の先天性心疾患の関連性を分析しました。最も一般的なタイプである心室中隔欠損症の先天性心疾患129人と、それに対応する対照群516人を対象としました。妊娠時の母親の平均年齢は31.6歳で、645人の女性のうち、611人(95%)が妊娠前後に葉酸サプリメントを摂取していると報告しました。先天性心疾患症例と対照群の間で、サプリメント摂取率と血清葉酸値に有意差はありませんでした。

しかし、葉酸サプリメントを摂取した母親は、摂取しなかった母親と比較して、血清葉酸値が有意に高くなりました。対照群と比較すると、先天性心疾患ではビタミンB12が90.2 pg/mL低い傾向がありましたが、ホモシステイン値は0.2 mg/L高い傾向がありました。(図は原文より)

上の図は母親の血清葉酸値(A)、ビタミンB12(B)、ホモシステイン(C)と出生児の先天性心疾患の可能性の関係を示しています。
葉酸値と先天性心疾患の可能性の間にはU字型の関連が認められました。つまり葉酸値が低くても高すぎても先天性心疾患リスクが高くなると考えられます。下の図のように、葉酸値で3つのグループに分けると、中程度の葉酸値と比較すると、葉酸値の低グループでは3.09倍、高グループは1.81倍、先天性心疾患の可能性が高くなることと関連していました。 WHO基準で定義された葉酸の正常レベル(5.9〜20.0 ng/ml)と比較して、葉酸欠乏では18.97倍、葉酸上昇では5.71倍と、先天性心疾患の可能性のより大きな増加と関連していました。

図のBのように、母親の血清ビタミンB12値と先天性心疾患の可能性の間にはL字型の相関関係が認められました。母親のビタミンB12欠乏と子供の先天性心疾患リスク増加の間には有害な相関関係があることが示唆されました。

図のCのように、母親の血清ホモシステイン値と先天性心疾患の可能性の間には逆L字型の相関関係が認められました。母親の高ホモシステイン値と子供の先天性心疾患リスク増加の間には有害な相関関係があることが示唆されました。

上の図のように、母親の葉酸値が中程度でビタミンB12値が正常なグループと比較すると、低葉酸および正常ビタミン B 12の場合の先天性心疾患の可能性は有意な差はなく、低葉酸およびビタミンB12欠乏の場合は7.30倍に増加しました。一方、母親の葉酸値が高く、ビタミンB12値が正常な人の場合には有意差は無かったのですが、葉酸値が高く、ビタミンB12が欠乏している人の場合は6.51倍に増加しました。

母親の葉酸値が中程度でホモシステイン値が正常なグループと比較すると、低葉酸値および正常ホモシステイン値の場合の先天性心疾患の可能性は2.44倍であり、低葉酸値および高ホモシステイン値の場合は8.93倍に増加した。また葉酸値が高くホモシステイン値が上昇している場合は7.17倍に増加しました。

つまり、葉酸値だけではなくビタミンB12およびホモシステインの影響もあると思われます。

葉酸は非常に重要で、葉酸不足は非常に有害ですが、過剰も有害である可能性が高いでしょう。そうすると、葉酸サプリを飲むのが良いのか、食材などから摂取するのが良いのか?ということもあります。それについてはまた次回以降で。

「Maternal Serum Folate During Pregnancy and Congenital Heart Disease in Offspring」

「妊娠中の母体血清葉酸と胎児の先天性心疾患」(原文はここ

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