運動誘発性アルブミン尿と糖質過剰摂取 その1

運動後のアルブミン尿(タンパク尿)が出る、運動誘発性アルブミン尿(タンパク尿)は良性のものだと考えられていますが、実際にはそこまで楽観的に考えられないかもしれません。

以前の記事「マラソン後の運動誘発性アルブミン尿」で書いたように、マラソンのような過酷な運動だと、どうしてもアルブミン尿が増加するかもしれませんが、そこまでの運動でなくてもアルブミン尿が大きく増加するのはやはり異常でしょう。

今回の研究では、ある医療センターで毎年行われる健康調査に参加した412人を対象に、運動負荷試験の実施前と実施直後に尿サンプルを採取し、平均3年間の追跡期間で2回目の追跡調査を行いました。運動誘発性アルブミン尿の上昇は20mg/g以上と定義されました。平均年齢は40代後半、平均BMI25~30程度です。(図は原文より)

上の図のaは2回の来院時の運動誘発性アルブミン尿値で横軸が1回目、縦軸が2回目です。図のbは2回のアルブミン尿によって4つのグループに分けたときのメタボリックシンドロームと診断された人の割合です。左から2回とも正常のアルブミン尿、1回目のみ運動誘発性アルブミン尿の上昇、2回目のみ運動誘発性アルブミン尿の上昇、2回とも運動誘発性アルブミン尿の上昇です。

1回目でも2回目でも、どちらか1つの時点で運動誘発性アルブミン尿の上昇が認められただけで、メタボリックシンドローム診断の有病率は増加し、20%を超えました。2回とも運動誘発性アルブミン尿の上昇した人では37.5%がメタボでした。

上の図は運動誘発性アルブミン尿の経時的変化です。aは運動誘発性アルブミン尿の2回目の診察時の値から1回目の値を引いたものです。まあ、ほとんどが0付近に集まっていますが、大きく変化した人もいます。bは初回診察時に糖尿病と診断された患者と診断されなかった患者の運動誘発性アルブミン尿の変化です。糖尿病患者は時間の経過とともに運動誘発性アルブミン尿が増加しました。

cはHbA1c 値による運動誘発性アルブミン尿の変化です。左から健康(HbA1c ≤ 5.7%)、前糖尿病(5.7–6.4%)、および糖尿病(≥ 6.5%)です。糖尿病では大きく増加しました。

糖尿病の診断は、様々な調整をした後でも、時間の経過に伴って運動誘発性アルブミン尿が大きく増加(上位10パーセンタイル)する可能性が4.4でした。

上の図はメタボリックシンドロームのどのパラメータが、時間の経過に伴う運動誘発性アルブミン尿の増加と関連しているかを示しています。(左図)空腹時血糖値の上昇 (≥ 100 mg/dl) は、運動誘発性アルブミン尿上昇の最も強力で唯一の有意な予測因子で、運動誘発性アルブミン尿上昇の可能性は4倍でした。

右図のように安静時アルブミン尿ではHDLコレステロールの減少が唯一の有意な予測因子で、安静時測定値のより大きな増加の可能性は2.2倍でした。

今回の研究の運動は心臓の運動負荷試験なので、マラソンおよびウルトラマラソンとは比べものにもならない運動量です。それくらいの運動でもアルブミン尿の増加があるのが、糖代謝異常、代謝機能障害なのです。

運動誘発性アルブミン尿上昇は腎機能障害および血管の内皮機能障害の早期かつ高感度なバイオマーカーである可能性が高いでしょう。つまり、運動誘発性アルブミン尿は、激しい⾝体活動の後に起こる⼀過性の良性の現象ではないと思われます。

「Exercise-induced albuminuria increases over time in individuals with impaired glucose metabolism」

「運動誘発性アルブミン尿は、糖代謝障害のある人では時間の経過とともに増加する」(原文はここ

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