2型糖尿病ではインスリン抵抗性だけでなく、インスリン分泌障害が起きることにより、血糖値が高くなることがあります。すい臓のβ細胞量の減少がこれに寄与している可能性があります。
今回の研究では124人の剖検(死亡した人から解剖で取り出したもの)からすい臓組織を調べました。肥満症例91例(BMI >27 、2型糖尿病41例、空腹時血糖異常(IFG)15例、非糖尿病35例) と痩せ症例33例(BMI <25 、2型糖尿病16例、非糖尿病17例) でした。そして、相対β細胞量、β細胞のアポトーシスおよび複製の頻度、外分泌管からの新しい膵島形成(新生)を測定しました。(図は原文より)
上の図は、肥満2型糖尿病と瘦せ2型糖尿病の治療別の人数と年齢等です。インスリン治療、経口糖尿病薬(スルホニルウレア薬)、食事療法で分けています。痩せた2型糖尿病の方が年齢が80歳前後と高くなっています。一方肥満2型糖尿病は60歳前後です。
上の図は肥満(OBESE)(非糖尿病患者(ND)、空腹時血糖異常(IFG)、2型糖尿病患者(TTDM))および痩せ(LEAN)(非糖尿病患者(ND)および2型糖尿病患者(TTDM))における空腹時血糖の平均(A )と相対的β細胞平均容積(B)を示しています。当然、空腹時血糖は糖尿病で非常に高くなっています。
β細胞容積はどちらのグループも、非糖尿病と比較して、IFGでも糖尿病でも減少しています。
さらに、肥満の非糖尿と痩せた非糖尿を比較すると、非糖尿病の肥満の相対的なβ細胞容積は痩せよりも約50%増加するという特徴がありました。β細胞が多い分、インスリンが多く出て肥満になりやすいのでしょう。
上の図は、肥満グループだけの非糖尿病(ND)またはインスリン、スルホニル尿素(経口糖尿病薬)、食事療法のみで治療した糖尿病患者の空腹時血糖(A)と相対β細胞容積(B)です。肥満の非糖尿病と比較すると、肥満 2型糖尿病の患者は、食事療法のみで70%減少、経口薬で67%減少、インスリンで50%減少と、治療法に関係なく、相対的なβ細胞容積が減少していました。3つの治療グループ間の平均空腹時血糖値に差はありませんでした。
上の図は、痩せグループだけの非糖尿病(ND)またはインスリン、スルホニル尿素(経口糖尿病薬)、食事療法のみで治療した糖尿病患者の空腹時血糖(A)と相対β細胞容積(B)です。痩せ2型糖尿病は、痩せた非糖尿病と比較して、相対的なβ細胞容積が41%減少していました。痩せた糖尿病患者では、治療法に関係なく、相対的なβ細胞容積の減少を示しましたが、食事療法では有意ではありませんでした。
肥満も痩せも糖尿病患者におけるβ細胞容積の減少は、個々の細胞の容積の減少ではなく、β細胞数の減少によるものでした。
膵島の平均サイズは、研究したすべてのグループで同様でした。対照的に、膵島β細胞の相対容積は、2型糖尿病の肥満でも痩せでも非糖尿病のと比較して減少しました。
肥満群と痩せ群におけるインスリン陽性外分泌管細胞の割合によって推定される新しい膵島形成の相対速度。肥満では痩せと比較してインスリン陽性外分泌管細胞の割合が増加していましたが、肥満の非糖尿病と2型糖尿病、または痩せ2型糖尿病と非糖尿病の間には差がありませんでした。
2型糖尿病でみられるβ細胞量の減少のメカニズムをさらに解明するために、β細胞のアポトーシスと複製の頻度を調べました。
上の図はβ細胞複製頻度(A)と β細胞アポトーシス頻度(B)です。複製の頻度は調べたすべての症例で非常に低くなっていました。肥満の非糖尿病と2型糖尿病の間、または痩せた非糖尿病と2型糖尿病の間で複製頻度に有意差はありませんでした。加齢とともにβ細胞の複製と新しい膵島形成が減少する傾向がありました。
2型糖尿病では相対的 β細胞容積が減少していたため、β細胞質量に対して標準化したβ細胞アポトーシスの頻度を比較できるように、膵島あたりのβ細胞アポトーシスの頻度を相対的な β細胞容積で割った値も調べました。アポトーシスイベントの頻度を、相対的な β 細胞容積で割った β 細胞アポトーシスの頻度として表した場合、アポトーシスの頻度は、それぞれの非糖尿病群と比較して、肥満型 2 型糖尿病では約3倍 、痩せ型 2 型糖尿病では約10倍増加しました。
上の図は膵島アミロイドの存在 ( A )、頻度 ( B )、程度 ( C )を示しています。予想通り、非糖尿病の肥満(10%)と比較した場合、2 型糖尿病肥満の81%に膵島アミロイドが存在していました 。興味深いことに、非糖尿病の肥満と比較して、IFGの肥満では膵島アミロイドが増加していませんでした。痩せたグループでは、2 型糖尿病の88%に膵島アミロイドが存在していたのに対し、非糖尿病では13%でした。頻度も程度も、両方のグループの2型糖尿病の方が、非糖尿病よりも高かったです。
ただ、2型糖尿病における膵島アミロイドとアルツハイマー病における脳のアミロイドは機能障害の原因ではなく結果でしょう。
2型糖尿病で観察されたβ細胞質量の約60%の損失が進行するのに約5年かかるという大まかな仮定を立てると、1日あたり1島あたりのβ細胞の純損失は約0.8個になります(1島あたり約3,000個のβ細胞と想定)。2 型糖尿病の膵島あたりのアポトーシスイベントの頻度増加は約0.3個と比較的低いですが、β細胞の損失の程度を説明するのに十分である可能性があるようです。
2型糖尿病で起きるアポトーシスの増加の原因は、高血糖である可能性が高いでしょう。2型糖尿病では膵島新生は損なわれていないように見えるため、3~10倍に増加したアポトーシスを大きく低下させれば、β 細胞質量の回復につながる可能性があります。それには糖質過剰摂取を止めて、血糖値を増加させないことでしょう。
アジア人に多い痩せた糖尿病の人は非常に注意が必要です。痩せている方がβ細胞容積が低く、膵島新生も低く、アポトーシスが高いため、特に糖質制限をしっかりやる必要があるでしょう。
糖尿病は糖質過剰症候群です。
「β-Cell Deficit and Increased β-Cell Apoptosis in Humans With Type 2 Diabetes」
「2型糖尿病患者におけるβ細胞欠損とβ細胞アポトーシスの増加」(原文はここ)
「糖尿病は糖質過剰症候群です。」
その通りだと思います。
しかし、医療職にこういう話を
すると逆に「可哀想な(情弱な)人」
扱いされますが。