スタチンは腎臓病のリスクを上げる

以前の記事「日本でも末期腎疾患患者の肥満が増加している」でも書いたように、慢性腎臓病(CKD)のガイドラインでは、「動脈硬化性疾患予防の観点より,CKD 患者でも健常者と同様に脂質の%エネルギー摂取比率は 20〜25%とする」としているので、当然LDLコレステロールも気にして、LDLコレステロールが高くなれば、スタチンが処方されてしまうでしょう。CKDになる前でも、当然のようにLDLコレステロールが高いとスタチンを強力に勧められます。

では、スタチンは腎臓にとって良い薬なのでしょうか?

今回の研究では、スタチンの腎疾患に対する長期的影響を調べました。サンアントニオ地域の軍事医療システムのデータを分析しています。6,342人のスタチン使用者と6,342人の非使用者を比較しています。追跡調査の平均期間は6.19年で、急性腎障害、慢性腎臓病(CKD)、腎炎/ネフローゼ/腎硬化症になる可能性は次のようでした。(図は原文より)

上の図のように、スタチン使用者は、急性腎障害1.30倍、CKD1.36倍、腎炎/ネフローゼ/腎硬化症1.35倍でした。併存疾患のない患者のグループでは、スタチン使用はCKDの可能性を1.53倍に増加させました。

高強度のスタチン使用者は非使用者と比較して、急性腎障害1.44倍、CKD1.33倍、腎炎/ネフローゼ/腎硬化症2.21倍でした。

下の図は低中強度スタチン使用者と高強度スタチン使用者との比較です。

低中強度スタチン使用者と比較して、高強度スタチン使用者は急性腎障害1.24倍、CKD1.14倍、腎炎/ネフローゼ/腎硬化症1.45倍でした。

下の図は傾向スコアをマッチさせた集団全体(スタチン非使用者 6,342 名とスタチン使用者 6,342 名)における腎臓疾患の危険性です。

上の図のように、スタチン非使用者と比較して、使用者は急性腎障害のリスクは1.29倍、CKD1.34倍、腎炎/ネフローゼ/腎硬化症1.35倍でした。

いずれにしても、スタチンは長期に渡って使用すると、腎毒性がありそうですね。ひょっとしたらこれほどのスタチン処方の多さは、糖尿病およびCKD増加作戦ですかね?

それでは、2型糖尿病の人にスタチンを使うメリットはどうでしょうか?推定糸球体濾過率(eGFR)が30以上の2型糖尿病患者を対象とした研究を見てみましょう。スタチンを新たに処方された412人の患者と、スタチンの処方歴のない946人の対照群を調査しました。

上の図は対照群と比較したスタチン群 のeGFRの30%以上の低下のリスクです。スタチン群のリスク比は1.74でしたが、わずかに有意差はありませんでした。親油性スタチン群の30%以上の低下リスクは2.15倍でした。ただ親水性スタチン群の結果には差がありませんでした。つまり、スタチンは糖尿病患者の腎臓に有益な効果をもたらさないばかりか、親油性スタチンは腎機能に有害な影響を及ぼす可能性があるのです。

さすが2大マッチポンプ薬の一つですね。いろんな有害効果があります。

でも、スタチンを飲んでいて、腎機能が低下してきても、「スタチンを飲むくらい動脈硬化が進行していて、腎機能が低下してきたんだよ。スタチンを飲んでいなければ、もっと早く、もっと強く腎機能が低下したかもしれないから、スタチンを飲んでいて良かったね!」と言われてしまうかもしれません。

心血管疾患、CKDも糖質過剰症候群です。重要なのは糖質制限です。

「Statin Use and the Risk of Kidney Disease With Long-Term Follow-Up (8.4-Year Study)」

「スタチンの使用と長期追跡調査による腎臓病リスク(8.4 年間の研究)」(原文はここ

「Effects of statins on the kidneys in patients with type 2 diabetes」

「2型糖尿病患者におけるスタチンの腎臓への影響」(原文はここ

One thought on “スタチンは腎臓病のリスクを上げる

  1. 余談ですが、スタチン押しの山中先生、
    別大マラソン、3週間後の大阪マラソン共に3時間20分台。
    御健脚ですね。

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