脂質は血糖値を上げるか?

血糖値を直接上昇させるのは糖質だけです。直接ではないにしても、脂質は代謝の中で血糖値の上昇に関与するのでしょうか?

多くの研究の場合、食後2時間程度までしか測定していませんし、経口脂肪負荷試験(OFTT)では、それなりに糖質が含まれていて、脂質だけを摂取していません。確かに糖質に脂質を加えると血糖値の変動が変化します。

今回の研究では、1型糖尿病の子供や若者30人(8~18歳)を対象に、ほとんど脂質だけ(実際には糖質1.8g、タンパク質0.4gを含む)ドリンクを飲んでもらい、インスリンは使用せず、その後の血糖値の推移を調べました。脂質含有量の異なる飲料(1、13、26、39、51g)または糖質20gの飲料をランダムな順序で6⽇間連続して摂取しました。

血糖値の代替としてフリースタイルリブレのように間質液のグルコース値を連続グルコースモニタリングシステム(CGM)で測定しました。(図は原文より)

上の図はグルコース値の変動です。20gブドウ糖では60分後に2.4mmol/L(日本の単位で約43mg/dL)上昇しました。その後210分ごろにベースラインに戻り、その後さらに低下しました。脂質は1、13、26、39、51gどれもベースラインから一時的に低下しています。1g脂質では480分でベースラインに戻りましたが、13gでは480分でもまだベースラインより低い状態です。

しかし、26g以上の脂質では240分~300分ころからベースラインを超えて、グルコース値が高くなりました。それは脂質量が増加するほど大きくなるように見えます。上の図のように51g脂質摂取ではグルコース値がおよそ1.3mmol/L(日本の単位で約23mg/dL)増加しました。

つまり、1型糖尿病のようにインスリン分泌のない場合、脂質でも血糖値を上げるポテンシャルを秘めています。しかし、単体で脂質だけを摂取することはありませんし、インスリン分泌が可能な場合は異なる可能性もあります。

この研究のまずいところは、この脂質ドリンクを飲む4時間前まで、通常の夕食を自由に食べるようにしていたところです。この研究を8時間続けていて、8時間後でもグルコース値の変化が起きているのですから、せめて8時間の絶食は必要だったと思います。さらに、ドリンクを摂取する前の血糖値が人により、またその日により70~216mg/dLまでの範囲で幅があったことが影響している可能性もあるでしょう。

ただ、脂質の量が大きくなるほどグルコース値の上昇が大きくなることより、やはり脂質も間接的に血糖値を上げる可能性はあるのでしょう。

上の図のように(図はここより)3大栄養素すべてが1型糖尿病の血糖値に影響を与えるメカニズムを持っています。当然直接血糖値を上げるのは炭水化物、糖質だけです。タンパク質は、グルカゴン、コルチゾール、成長ホルモン、インスリン様成長因子 1、グレリンなどの複数のホルモンに影響を与えるだけでなく、糖新生を介してアミノ酸がブドウ糖に変換されることにより、血糖値の上昇は遅れてやってきて、より長期間に渡って引き起こします。したがって、インスリン抵抗性が増加します。脂質もその摂取により、遊離脂肪酸が増加し、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体および遊離脂肪酸受容体を介して作用し、インスリンに対する細胞反応に影響を与え、インスリン抵抗性の増加につながります。脂質は、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド 1、胃抑制ポリペプチド、グレリンなどの血糖調節に影響を与える他のホルモンにも影響を与えるようです。

ただ、自分自身の実験として、下のフリースタイルリブレの図を見てわかるように、糖質制限でたっぷりのタンパク質と脂質を摂っていても、食事の後1~2時間後に血糖値の上昇は上がりますが、その後遅れて数時間後に血糖値が上昇することはありません。

メカニズム的には脂質もタンパク質も血糖値を上げるポテンシャルはあるでしょうが、インスリンが分泌されている場合は無視できる範囲なのでしょう。

「Does dietary fat cause a dose dependent glycemic response in youth with type 1 diabetes?」

「食事の脂質は、1型糖尿病の若者に用量依存的な血糖反応を引き起こしますか?」(原文はここ

6 thoughts on “脂質は血糖値を上げるか?

  1. 清水先生、こんにちは。
    脂質もわずかではあるものの血糖値に影響がある可能性はあるのですね。代謝は、ホルモンなどが色々と複雑に関係しあっているのですね。
    とはいえ、やはり糖質を制限する意味は大きいですね。

    1. じょんさん、コメントありがとうございます。

      所詮人間のメカニズムでわかっていることなんてほんの一部です。

  2. 清水先生、いつもありがとうございます

    全然話が変わりますが、政令指定都市が公表し始めている4月の人口動態統計では、超過死亡がさらに増えているところが多いようです。

    なんとなく、死亡者が加速している気がします。

    また、仕事でいろんな方と接することも多いのですが、特に年配の方に持病なのか体調が悪い人、マナー品位にかける人の割合がどんどん増えてきている気もします。

    1. いのっちさん、コメントありがとうございます。

      4月は確かに数値が増加しているところが多いですね。統計の集計方法が原因でもあるかもしれませんが、
      それを上回っている都市もあります。
      人口減少を狙っていたとしたら大成功ですね。

  3. 清水先生、いつもありがとうございます。

    また全然関係のない話で恐縮なのですが、職場の同僚や上司に肥満や身体の悪い人は年齢に比例して多くいます。
    先日、上司が55歳で癌で亡くなりましたがお腹周りは100センチ前後はありました。また、別のお腹周りが軽く100センチ超えている同僚は先日から体調不良で長期休暇しています。

    もちろん詳しいことは聞いていないですが、普段の食生活見てても糖質過剰症候群なのは間違いありません。
    そして、みんな十分なお腹の脂肪があるのに、栄養摂らないといけないといって3食御飯をたべ、間食もしてるのです。

    私は元々胃腸が弱く、過敏性腸症候群で入院することもよくあり、さまざまな検査結果を自分自身の身体を統計的に分析する中で糖質制限をはじめました。

    身体の何処かが悪いのは、それを持ってイジメられたり白い目で見られることも多いのですが、逆に気付きを与えてくれることも多いと思うのです。

    私は胃腸が弱かったりアレルギー疾患あったり身体があまり良くなかったからこそ、糖質制限を実践するという考えに至ったと思うのです。

    その長期休暇になった同僚や先日亡くなった上司はもちろん、職場の多くの同僚は糖質が危険だとは全く思わず、毎日3食食べ、共用の机に誰かしら置いていくお菓子を暇を見つけては食べているのです。

    糖質は出来たら減らしたほうが良いと思うよみたいなこと言っても、もちろん誰も聞くことはないのです。

    1. いのっちさん、コメントありがとうございます。

      医師もメタボ体型でありながら普通に間食しています。
      彼らが健康について語るのは変だと思いますが、人のことは何とでも言えるのでしょう。

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