GLP-1受容体作動薬の副作用シリーズも「その12」になりました。「その11」ではうつ病、不安、自殺行動のリスクについて書きましたが、今回はそれ以外での精神科的な有害事象についてです。
今回の研究では、FDA有害事象報告システム(FAERS)データベースのデータを用いて、報告オッズ比(ROR)を使用してGLP-1受容体作動薬の精神系有害事象を分析しました。GLP-1 薬に伴う有害事象報告181,238件のうち、精神科有害事象報告は合計8,240件でした。およそ66%は女性で、平均年齢は56歳でした。(図は原文より)
報告件数が最も多かった精神系有害事象の上位6つは、不眠症( 1,198件、11.70%) 、不安( 1,131件、11.04%)、神経過敏( 941件、9.19%) 、うつ病(770件、7.52%)、ストレス(770件、7.52%)、錯乱状態(689件、6.73%)でした。
上の図のAは、様々なGLP-1薬治療におけるFAERSデータベース上位40件の精神系有害事象のRORを示しています。RORが1より大きい8つの精神系有害事象がありました。具体的には、神経過敏1.97倍、ストレス1.28倍、摂食障害1.57倍、注射に対する恐怖1.96倍、一般的な病状による睡眠障害(不眠症型)2.01倍、過食2.70倍、食事への恐怖3.35倍、自己誘発性嘔吐3.77倍でした。
図のCのように、薬の違いによる報告の差もあるようです。全体ではROR1.62倍でしたが、デュラグルチド1.88倍、エキセナチド1.76倍、セマグルチド1.41倍でした。
いずれにしても、GLP-1薬で精神を病んでしまう人がいることは事実でしょう。そして、「その11」でも書いたように、自殺まで起こしてしまう可能性もあります。誰かの目がない状況で、この薬を使用することはかなりリスクが高いかもしれません。若い女性が体重減少目的でこの薬を使っていることは非常に心配です。
糖尿病も肥満も食事で起こります。食事を変えた方が健康的です。病気の治療で薬を使って、他の病気になってしまっては本末転倒です。まして体重を減少させる目的で薬を使って、様々な病気のリスクが高くなるなんて、何をやっているかわかりません。処方する医師は製薬会社の影響下にあることを知っていますか?よく考えて判断しましょう。
「Psychiatric adverse events associated with GLP-1 receptor agonists: a real-world pharmacovigilance study based on the FDA Adverse Event Reporting System database」
「GLP-1受容体作動薬に関連する精神疾患の有害事象:FDA有害事象報告システムデータベースに基づく実際の医薬品安全性監視研究」(原文はここ)