食後1時間後の血糖値の上昇を認めたらすぐに糖質制限

糖尿病と診断されてからよりも、耐糖能障害が出て早い段階で糖質制限を始めた方が、効果が高く、その後様々な糖質過剰症候群の症状を呈することもないでしょう。そのためには少なくとも、食後1時間値が上昇したときには、気づくべきでしょう。

今回の研究では、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)で、糖尿病になる前の人を対象に、ライフスタイルを変更するように介入した場合の効果を調べています。

正常血糖調節(NGR)、1時間値高血糖、血糖調節障害(IGR)の3つのグループの317人が対象です。NGRは空腹時血糖 < 100mg/dL、2時間血糖値(OGTT)< 140mg/dL、1時間血糖値< 155 mg/dLと定義しました。1時間高血糖はNGRかつ1時間血糖値≥ 155mg/dLと定義しました。IGRは空腹時血糖≥ 100mg/dLかつ< 126mg/dL、2時間血糖値≥ 140mg/dLかつ< 200mg/dL、またはその両方と定義しました。ライフスタイル介入は個別化された食事カウンセリングと、少なくとも5%の体重減少を目指した心拍数モニタリングによる身体活動の増加からなる集中的なもので、9か月間実施されました。

ライフスタイル介入前、インスリン感受性およびβ細胞機能は、NGRから1時間値高血糖およびIGRへと徐々に低下しました。(図は原文より、表は原文より改変)

上の図は、NGR(緑)、1時間値高血糖(紫)、IGR(オレンジ)群におけるベースラインと介入後の主要な代謝パラメータのグラフです。Aはベースラインのインスリン感受性指数、Bは介入後のインスリン感受性指数、Cはベースラインβ細胞機能、Dは介入後のβ細胞機能、Eはベースライン内臓脂肪組織容積、Fは介入後の内臓脂肪組織容積、Gはベースライン肝内脂質含量、Hは介入後の肝内脂質含量、Iはインスリン感受性とインスリン分泌の双曲線関係です。

ライフスタイル介入後でも、インスリン感受性およびβ細胞機能は、IGR群と比較してNGR群の方が高かったのですが、1時間値高血糖群の方がIGR群よりも高い値を示し、NGR群と1時間値高血糖群の間で有意差は認められなくなりました。また、1時間値高血糖群の肝臓脂質含量はNGR群と同程度に改善しました。内臓脂肪はNGR群の方がIGR群よりも低いままでした。

グループ9か月時点での参加者数9か月間の血糖値、症例数(%)NGRへの寛解の発生率
NGR1時間値高血糖IGR2型糖尿病OR(95%信頼区間)
全体244105 (43.0)57 (23.4)80 (32.8)2 (0.8)/
NGR7253 (73.6)11 (15.3)8 (11.1)0 (0)/
1時間値高血糖7630 (39.5)25 (32.9)21 (27.6)0 (0)2.18 (1.13–4.28)
IGR9622 (22.9)21 (21.9)51 (53.1)2 (2.08)1.00

上の表は、9か月の時点でのそれぞれの群の耐糖能の状態の変化を見ています。9か月間の介入終了時点で、244人中105人(43.0%)がNGRへの寛解を達成した一方、IGR群の2人(0.8%)が2型糖尿病を発症しました。1時間値高血糖群ではIGR群と比較して正常血糖への寛解率が高く(約40%)、寛解の可能性は2.18倍でした

上の図は、追跡期間中の2型糖尿病に進行しない割合です。1時間値高血糖群ではIGR群と比較して、12年間の追跡調査までの2型糖尿病のリスクが80%低くなっていました。しかし、1時間値高血糖群もIGR群も10~11年を過ぎると、ガクッと進行しない人が減り、ドンと糖尿病に進行する割合が増加しています。9か月の介入で改善した人では、長期的にはある程度糖尿病リスクは減るのは減ると思いますが、継続が重要でしょう。

ただ、今回のライフスタイル介入は十分ではなく、大きな改善を示していません。ちゃんと糖質制限をして運動すれば、もっと大きな効果があったでしょう。

前糖尿病(糖尿病予備軍)は2型糖尿病の前兆と一般的には考えられていますが、耐糖能の異常は連続性のものであり、前糖尿病の段階でもすでに以上です。数値的に進んで糖尿病圏内入ると糖尿病と診断されるだけの話です。

1時間値が高血糖となった時点で気づくことはなかなかできないでしょう。それは食後の検査を行わないからです。通常、健康診断などは空腹時血糖を測定します。空腹時血糖が上昇するころでは、かなり耐糖能障害が進行していいる可能性があります。

可能であれば、自分で1時間値を測定してみましょう。または何らかの血液検査があるときに、あえて食後1時間くらいに測定できるようにしてみましょう。

「Lifestyle intervention is more effective in high 1-hour post-load glucose than in prediabetes for restoring β-cell function, reducing ectopic fat, and preventing type 2 diabetes」

「生活習慣介入は、前糖尿病よりも高負荷1時間血糖値患者において、β細胞機能の回復、異所性脂肪の減少、2型糖尿病の予防に効果的である」(原文はここ

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