冠動脈カルシウムの発症や進行はLDLコレステロールの質によって異なる

医師はLDLコレステロール値が高いと患者を脅しますが、LDLコレステロールの質に触れて、説明する医師は皆無でしょう。

LDLコレステロールには大きなものから小さなものまで連続性があり、その性質も違います。大きなふわふわしたLDL(lbLDL)は有益なLDLです。害はありません。しかし、小さな危険なLDL、sdLDLはすでに異物であり、有害です。

冠動脈カルシウム(CAC)スコアは、動脈硬化性プラーク負荷のマーカーであり、アテローム性動脈硬化性心血管疾患のリスク予測因子です。

今回の研究では、脂質低下療法を受けておらず、2回のCAC測定を受けた2,632人が対象です。これらの人のうち、2,066人(平均年齢47.2 歳、62.2% 女性)は、ベースラインのCACが0でした。残りの566人(53.63歳、36.9%女性)は、ベースラインのCAC>0でした。平均スキャン間隔は 5.15年でした。

ベースラインの平均総LDLコレステロールは122.1mg/dLでした。小さなLDLのsdLDLコレステロールのは57.2mg/dL(多すぎ!)、大きなふわふわのLDLのlbLDLコレステロールの平均は55.0mg/dLでした。ベースラインCACが0の人の平均sdLDLコレステロールは55.4mg/dL、平均lbLDLコレステロールは54.9mg/dLでした。ベースラインCAC>0の人の平均sdLDLコレステロールは64.3mg/dL、平均lbLDLコレステロールは55.4mg/dLでした。

ベースラインの CAC が0であった2066人の参加者のうち、273人(13.1 %)が、平均5.2年後の連続評価で CAC>0を発症しました。

総LDLコレステロールはCAC発生率とほんのわずか(1.01倍)正の相関関係にありましたが、LDLの質を考えた場合、sdLDLコレステロールレベルはCACの可能性を1.37倍にしました。、lbLDLコレステロールとCAC 発生率の間には関連がありませんでした。

ベースラインのCAC>0であった566人の参加者のうち、平均4.8年後に、CAC の進行が認められたのは一つの基準で254人 (44.9%) 、もう一つの基準で334人 (59.0%) でした。総LDLコレステロールはいずれの基準でもCACの進行と関連がありませんでした。LDLコレステロール値がCACの進行と関連していないというのは大きな意味がありますね。

無調整の分析ではsdLDLコレステロールはCACの進行の可能性が1.13倍になりましたが、調整すると、この関連は見られなくなりました。

lbLDLコレステロールは調整後、CACの進行の可能性は0.82倍、つまりCAC進行とは逆相関しているました。大きなふわふわしたLDLが多い方が進行しないのです。

まとめると、CACの発生率はsdLDLコレステロールと正の相関関係にあり、CACの発生率はlbLDLコレステロールとは相関関係になく、CACの進行はsdLDLコレステロールとは相関関係になく、CACの進行はlbLDLコレステロールと逆相関しているのです。

そうであるならば、まずは小さなsdLDLを増やさないことが重要になります。そして大きなlbLDLは多くて問題ありません。

もちろん、この研究は問題があります。LDLを大きいか小さいかの2つにしか分類していないことです。本来はもう少し細かく分類して、真のsdLDLを考えるべきでしょう。そうであったとしても、大きなLDLは心臓に全く問題がないと考えます。

さて、sdLDLを増加させるのは何でしょう。そうです。糖質過剰摂取です。(「糖質制限でsdLDLが減少する」参照)

LDLを2つに分類するとすると、以前の記事「小さな危険なLDLの割合を推測するには?」で書いたように、中性脂肪値や中性脂肪/ HDLコレステロール比で推測できます。糖質制限だと、どちらも非常に減少しますから、大きなLDLを有意に多く持っている人の方がほとんどでしょう。

果糖は特にsdLDLを増加させます。(「果糖は中性脂肪を増加させ、小さなLDLや酸化LDLも増加させる」参照)

食後に高中性脂肪になるTGスパイクもsdLDLを増加させます。(「食後の中性脂肪スパイクとsdLDLの関連」参照)

また、多くの人が健康的だと洗脳されている低脂肪食は、「低脂肪食は小さな危険なLDL(sdLDL)を増加させる」で書いたように、sdLDLを増加させてしまいます。

そして、sdLDLは糖化を受けやすくなります。(「糖尿病でなくても糖化LDLは意外と多い」参照)

真のsdLDLはすでにまともなLDLではなく、異物です。大きなLDLは人間に有益で、必須のものです。単にLDLコレステロール値ばかり一生懸命気にしても仕方がありません。LDLの質、sdLDLについて説明をせずに、LDLコレステロールの数値にとらわれている医師は、無知か、セールスマンかどちらかでしょう。

「Low-density lipoprotein-cholesterol subfractions as predictors for coronary artery calcium incidence and progression – The Brazilian longitudinal study of Adult Health (ELSA – Brasil)」

「冠動脈カルシウム濃度および進行の予測因子としての低密度リポタンパク質コレステロールサブフラクション – ブラジル成人健康縦断研究(ELSA – ブラジル)」(原文はここ

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