糖質制限でsdLDLが減少する

LDLコレステロールは数値を気にしても仕方がないと思います。数値よりも質を気にした方が良いと思います。LDLコレステロールのリポタンパクLDLは小さな危険なLDL(sdLDL)と大きな健康的なLDLがあります。もちろん2つに完全に分かれるわけではなく、連続的、段階的に大きさが変化します。

では、糖質制限をすると2型糖尿病の人ではLDLはどうなるでしょう。対象はBMI25以上の糖尿病の人で、2年間糖質制限をした194人と標準治療を行った68人が対象です。糖質制限の50%と 標準治療の59%がベースラインでスタチン治療を受けていました 。

標準治療群では、脂質、リポタンパク、アポタンパク、血圧、CIMT(頸動脈内膜中膜厚)、脂質低下薬および降圧薬の経時的変化はありませんでした。糖質制限群では、1年後および2年後の平均LDLコレステロールとHDLコレステロールは増加し、中性脂肪と血圧は低下しました。糖質制限でスタチンの使用量は2年目でも変化はありませんでしたが、他の脂質低下薬の使用量は2年前から減少しました。(図は原文より)

上の図はLDL表現型(Phenotype)パターンとLDLのピーク直径 (Å) の分布です。パターンAは大きな浮遊性の質の良いLDL粒子からなるLDLであり、パターンBは小さな、高密度の悪いLDL粒子からなるLDLであることを示しています。(「糖質制限とLDLコレステロール上昇」など参照)今回の研究ではパターンA (LDLピーク直径 > 21.88 nm の大きなLDL粒子の優勢)、パターンB (LDLピーク直径 < 21.55 nm の小さなLDL粒子の優勢)、またはその中間パターン I (LDL ピーク直径は 21.55 ~ 21.88 nm)で分けています。

上の図aは糖質制限、bは標準治療で、上から順にベースライン、1年後、2年後です。

ベースラインでは糖質制限群の48.7%が小さな危険なLDL優勢のパターンBで、パターンAは35.3%だけでした。1年後にはパターンAは大幅に増加し、63.3%、2年後でも60.7%でした。2年後でパターンAが少し減少するのは、やはり段々と糖質制限が甘くなってくるのでしょう。

一方標準治療群ではベースラインで57.1%がパターンBで、パターンAは57.1%でした。1年後パターンAは大幅に減少し、25.9%、2年後でも29.2%でした。逆にパターンBは1年後大幅に増加し、60.3%となり、2年後でも45.8%でした。

sdLDLが多くなると、様々な心血管疾患リスクが増加します。(「小さな危険なLDL(sdLDL)コレステロールと冠動脈心臓病のリスク」など参照)そして、糖質過剰摂取、特に果糖の摂取はsdLDLを増加させます。(「果糖は中性脂肪を増加させ、小さなLDLや酸化LDLも増加させる」など参照)さらに、低脂肪食もsdLDLを増加させます。(「低脂肪食は小さな危険なLDL(sdLDL)を増加させる」参照)

つまり、糖質制限をすれば、sdLDLの増加は防ぐことができるのです。標準治療をしていると今回の研究のようにsdLDLが増加してくる可能性が高くなります。

糖質制限はLDLコレステロールの上昇を起こすかもしれません。しかし、大きな良質なLDLの増加はLDLコレステロールの増加を起こすのは不思議ではありません。今回の研究では2年後、糖質制限により小さなLDLが 23% 減少し、大きなLDLが 29%増加しましたが、総LDL粒子濃度やApoBには変化はありませんでした。もちろんCIMT(頸動脈内膜中膜厚)も増加していません。

糖質制限でLDLコレステロールが増加しても、気にする必要はないでしょう。標準治療だけを行っている方が恐ろしいと思います。

「Impact of a 2-year trial of nutritional ketosis on indices of cardiovascular disease risk in patients with type 2 diabetes」

「2 型糖尿病患者の心血管疾患リスク指標に対する栄養ケトーシスの 2 年間の試験の影響」(原文はここ

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