以前の記事「扁桃やアデノイド摘出は様々な疾患のリスクを増加させる」で書いたように、扁桃摘出手術を受けるとがんのリスクが高くなる可能性があります。
今回の記事では、その関連をまとめてみてみましょう。
ホジキンリンパ腫:15歳未満で扁桃摘出術後1~4年でリスク3.9倍、扁桃摘出術後5年以上で3.5倍。15~34 歳で扁桃摘出を行っていない扁桃炎後 1~4年でリスク3.5倍、35歳以上の人で扁桃摘出を行っていない扁桃炎後リスク5.9倍。(この論文参照)
ホジキンリンパ腫:12歳未満で扁桃摘出でリスク4.1倍(この論文参照)
悪性リンパ腫:扁桃摘出で濾胞性リンパ腫の可能性1.84倍。扁桃摘出時の年齢6歳以下で濾胞性リンパ腫の可能性4.93倍、慢性リンパ性白血病4.01倍、B細胞非ホジキンリンパ腫2.97倍。
急性白血病:扁桃摘出で急性リンパ性白血病の可能性1.4倍(ここ参照)
中咽頭がん、舌がん:扁桃摘出術は1年以内の中咽頭がん、舌がん、扁桃がんの発生率増加と強く関連していた。扁桃摘出を以前受けた60歳以上で中咽頭がんリスク2.5倍、舌がん4.2倍。(ここ参照)
食道がん:扁桃摘出を受けていると食道がんの可能性が1.8倍。(ここ参照)
乳がん: 扁桃摘出術の既往は閉経前の女性では乳がんの可能性が1.5倍(ここ参照)
乳がん:15歳以上で扁桃摘出術を受けた女性の乳がんの可能性は1.76倍(ここ参照)
すべてのがん:扁桃摘出術はすべてのがんのリスク1.54倍。
もちろん、関連なしとする研究もいくつもあります。しかし、多くのメジャーな耳鼻科疾患(慢性中耳炎、慢性副鼻腔炎、慢性扁桃炎)では対照群と比較してBMIが有意に高く、下の図のように、肥満の割合は慢性中耳炎(グループA)37.5%、慢性副鼻腔炎(グループB)で42.9%、慢性扁桃炎(グループC)で40.1 %と有意に高くなっていました。(下の図はここより)
また、肥満とがんの関連は様々な研究でわかっています。肥満はリンパ腫のリスクを高めるし(この論文参照)、以前の記事「肥満関連がんはより若い年齢層にシフトしている」などで書いたように、乳がんも食道がんも肥満関連がんです。そうすると、扁桃炎や扁桃摘出手術を受けた人ががんになるリスクが高くなるのも、つながっていそうですね。
扁桃摘出手術と乳がんの関連だけをメタアナリシスした研究を見てみましょう。対象となったのは8つの研究で、乳がん患者2,252人、そのうち1,151人が扁桃摘出術を受け、対照者5,314人、そのうち1,725人が扁桃摘出をされました。(図は原文より)
上の図はAすべての研究(未調整分析)、 Bは高品質の研究のみ(未調整分析)、C調整済み分析です。どれも同じような結果で、扁桃摘出術は乳がんの可能性を1.24倍にするようです。
閉経前の女性は乳がんを発症する可能性がより高く1.71倍、閉経後では1.3倍でした。
がんのリスクを減らすために、糖質制限をしましょう。
「Prior Tonsillectomy and the Risk of Breast Cancer in Females: A Systematic Review and Meta-analysis」
「女性における扁桃摘出術の経験と乳がんのリスク:体系的レビューとメタ分析」(原文はここ)