低脂肪食は小さな危険なLDL(sdLDL)を増加させる

心血管疾患を予防するための食事療法として、通常はエネルギー(カロリー)控えめで、脂質の摂取量を減らすことが推奨されます。また一方で、小さな危険なLDLであるsdLDLは心血管疾患との強い関連が認められています。

では、低脂肪食は我々にどのような影響があるのでしょうか?以前の記事「脂肪の摂取量が少なくなれば小さな危険なLDLが増加する」でも取り上げた研究からです。(図は原文より)

上の図は、高脂肪食と中脂肪食の両方について238人の男性のLDLピーク密度の分布を示しています。白いのはLDL粒子が大きい人 (表現型A)で、黒いのは小さくて密度の高いLDL (表現型B) が優勢な人です。明らかに40~46%の高脂肪食の方が表現型Aが多く、表現型Bが少ないことがわかります。高脂肪食でも中脂肪食でも表現型Aだった人の食事をさらに10%の低脂肪食にしたらどうなるでしょうか?

高脂肪食と中脂肪食の両方を4~6週間続けた後に表現型Aを示した38人の男性を対象に、脂質を炭水化物に置き換えた10%脂肪食 (2.7%飽和脂肪酸) を10日間摂取しました。通常の食事は、エネルギー摂取量の平均31.8%が脂質(飽和10.8%、一価不飽和11.8%、多価不飽和6.9%)、炭水化物52.1%、タンパク質14%で構成されていました。低脂肪食はエネルギーの10%を脂質 (飽和 2.7%、一価不飽和 3.7%、多価不飽和 2.6%) から供給し、炭水化物75% 、タンパク質15%でした。

上の図は通常の食事と10%の低脂肪食を10日間食べたときの違いです。38人中26人はそのまま表現型Aでしたが、12人は表現型Bになってしまいました。さらに、10%脂肪食の後、中性脂肪、 VLDL 、アポBが有意に増加し、HDLコレステロールが減少しました。

上の図は38人の男性の10%および20〜24%脂肪食の中性脂肪値の変化量とLDLサイズの差の相関係数です。〇は10%低脂肪食でも表現型Aのままだった人です。■は表現型Bに変化した人です。変化した人では10%低脂肪食で中性脂肪が増加している人がほとんどです。しかし、表現型Aのままの人では中性脂肪値はほとんど変化しないか、マイナスの変化です。つまり、低脂肪にするほど、言い換えれば高炭水化物にするほど中性脂肪値が増加する人のLDLは小さくなりやすいことがわかります。

上の図は横軸が食事の脂質の割合、縦軸が表現型Bの割合です。脂質の割合が低下すると、表現型Bの割合が増加します。糖質が多くなると、食後の中性脂肪も増加します。食後の中性脂肪の増加、TGスパイクがあるとsdLDLは増加します。(「食後の中性脂肪スパイクとsdLDLの関連」「食後の中性脂肪が増加するとLDLが小さくなる」参照)

いくつもの学会が食事に関する推奨で、カロリー制限や脂質の摂取量を減らすことを勧めています。カロリー制限も結局は脂質制限です。脂質を減らせば糖質が増加します。そうすると、sdLDLが増加します。それをわかっていながら推奨しているのはなぜでしょうか?健康に良いと思わせる食事をさせて、患者を患者のままにとどめておくことを目的にしているのか、それともただの無知の集団が科学的根拠を無視して、何となく良さそうな食事を勧めているだけなのか?いずれにしても間違った栄養療法を勧められて、実行して、病気になったり、病気が改善しなかったり、悪化したりするのは患者の方です。

糖質制限をすると病院は儲かりません。薬も必要なくなり、患者は健康状態を回復してしまうからです。「糖質教会」の関連団体は今後も洗脳を続けるでしょう。

 

「A very-low-fat diet is not associated with improved lipoprotein profiles in men with a predominance of large, low-density lipoproteins 」

「非常に低脂肪の食事は、大きいLDLが優勢な男性のリポタンパク質プロファイルの改善とは関連していない」(原文はここ

2 thoughts on “低脂肪食は小さな危険なLDL(sdLDL)を増加させる

  1. 「健康に良いと思わせる食事をさせて、患者を患者のままにとどめておくことを目的にしているのか、それともただの無知の集団が科学的根拠を無視して、何となく良さそうな食事を勧めているだけなのか?いずれにしても間違った栄養療法を勧められて、実行して、病気になったり、病気が改善しなかったり、悪化したりするのは患者の方です。」
    医師の方々が優秀な頭脳の持ち主なのは間違いないですが、良心的かは別問題、なのでしょうかね。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      多くの医師は良心的に考えていると思いますが、食事や栄養について知識がないだけだと思います。
      だからガイドラインに書かれたものは鵜呑みにするのでしょうね。
      しかし、一部の医師は知っていながら、薬を処方するためにウソを言っている人もいるでしょう。

      コロナのワクチンについても同様で、一般人とほとんど違いの無い知識の医師もいっぱいいます。
      ワクチン接種したから感染しても軽症で済んだと本気で思っている医師もいます。
      その一方で知っていながらお金のためにワクチンを推奨している医師も一部にはいるでしょう。
      そういう医師はマスコミに出ます。世の中は一部の企業によって動かされています。

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