高齢者の不眠症に対するマグネシウムの効果

みなさんは夜は眠れていますか?若い人でも不眠の人がいますが、高齢者ではその割合が多く、50%ともいわれています。そして、多くの人が眠剤を処方され、依存が形成されてしまっている人もいます。

こんな有害な薬よりも、有益なもので不眠症が改善すれば、非常に良いですよね。マグネシウムは睡眠の調節に重要な役割を果たしていると考えられています。

今回の研究では、不眠症と診断された43人の高齢者(平均年齢65歳)を対象としています。8週間毎日500mg のマグネシウムまたはプラセボを投与しました。BMIは25~34.9(平均29.2)で、マグネシウムの食事摂取量がアメリカで推奨されている摂取量の75%未満であること、血清マグネシウム値が0.95 mmol/L未満(2.5倍すると日本の単位2.375mg/dLになります)は参加条件です。ただし、マグネシウムは非常に吸収の悪い酸化マグネシウムが使われているのが残念です。(図は原文より)

上の図は、介入前後のマグネシウム群とプラセボ群の睡眠指標の比較です。プラセボ群と比較して、マグネシウム群では睡眠時間および睡眠効率(就寝後の睡眠時間の割合)が統計的に有意に増加しました。また、入眠潜時(就寝してから眠り始めるまでの時間)および早朝覚醒は、それぞれ有意およびわずかに減少しました。さらに、ISI(不眠症重症度指数)質問票から得られたISIは、マグネシウム群で有意な減少を示しましt。しかし、総睡眠時間は、2群間で有意差はありませんでした。

上の図は、介入前後のマグネシウム群とプラセボ群における血清マグネシウムと生化学的指標の比較です。血清マグネシウムレベル

プラセボ群と比較して、マグネシウム群では、血清マグネシウムレベルはわずかに増加し、レニンとメラトニンのレベルが有意に上昇し、コルチゾールレベルが有意に減少しました。レニンはREM睡眠およびNREM睡眠の間に密接な関係があるそうです。NREM睡眠はレニン値の上昇と関連して起こり、レニン値の低下は睡眠が浅くなるのと同時に起こるそうです。

上の図は、8週間後、対照群と比較したマグネシウム群の不眠症の主観的および客観的な測定値の変化率をまとめたものです。酸化マグネシウムは吸収が悪いとはいえ、これだけの違いが出ています。やはりマグネシウムは重要ですね。

加齢はマグネシウム欠乏の主な危険因子だと考えられますが、マグネシウム摂取量の低下だけでなく、薬剤性、特にPPI(プロトンポンプ阻害薬)などによりマグネシウムの吸収障害が大きな要因でしょう。腎機能が低下すればマグネシウムの再吸収も低下するでしょう。

さらに、糖質過剰摂取、糖尿病、インスリン抵抗性では体内のマグネシウムが低下します。(「糖質の摂取はマグネシウムやカルシウムの排泄を増加させる」「糖尿病とマグネシウム」など参照)

もちろん、睡眠に対する行動や環境も改善すべきです。眠くもないのに時間が来たらベッドに入ってしまったり、眠るギリギリまでテレビやスマホを見たり、不適切な昼寝をしたり、日中の活動が非常に少なかったりすれば、眠りにも大きな影響があるでしょう。

薬に頼るのではなく、まずは自分でできることをすべきです。そして、マグネシウムを積極的に摂取し、足りなければサプリで補っても良いでしょう。

もちろん、糖質制限も眠りには有効です。

「The effect of magnesium supplementation on primary insomnia in elderly: A double-blind placebo-controlled clinical trial」

「高齢者の原発性不眠症に対するマグネシウムサプリの効果:二重盲検プラセボ対照臨床試験」(原文はここ

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