アメリカの食事ガイドラインでは、2000kcalの食事の一部として、1日5サービングの果物と野菜を摂取することを推奨しており、これには果物から2カップ相当量以上が含まれます。1カップ相当の摂取量の例としては、次のようです。
リンゴ、ナシ、オレンジ、桃、ネクタリン:中サイズ1個
バナナ:大1本
グレープフルーツ:中サイズ1個
ブドウ:22
キウイフルーツ:2~3個
イチゴ:大8個
日本人の果物の推奨量は200gですので、2カップの半分くらいでしょうか?
さて、日本人でも果物が健康的な食事だと信じていて、1日に非常にたくさん摂っている人もいるでしょう。アメリカ人の食事ガイドラインで推奨されているように、果物を 2 カップ摂取すると、どうなるでしょう。
今回の研究では、30~70歳(平均年齢45歳)の健康な男女38人を対象に、8週間、1日2カップ相当の果物を摂取する群と、果物の摂取量を1/2カップ未満に制限する群とを比較しました。実際の果物制限群の摂取量は0.23カップ/日でした。BMI、体重、除脂肪量、脂肪量、腹囲、収縮期血圧、拡張期血圧については、8週間の前後および果物2カップ群と制限群の間で有意差は認められませんでした。(表は原文より改変)
果物制限試験 | 果物2カップ試験 | |||
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ベースライン | 8週間 | ベースライン | 8週間 | |
血糖値(mg/dL) | 94.1 ± 11.9 | 92.7 ± 11.6 | 92.3 ± 11.9 | 92.9 ± 13.3 |
中性脂肪(mg/dL) | 70.6 ± 44.1 | 69.7 ± 65.8 | 69.9 ± 37.7 | 75.3 ± 75.2 |
HDLコレステロール(mg/dL) | 52.1 ± 14.1 | 53.9 ± 14.6 | 51.6 ± 15.0 | 50.5 ± 14.7 |
LDLコレステロール(mg/dL) | 116.0 ± 43.6 | 118.9 ± 42.5 | 120.0 ± 42.1 | 116.5 ± 40.9 |
総コレステロール(mg/dL) | 182.2 ± 44.1 | 186.7 ± 41.9 | 185.5 ± 38.8 | 182.0 ± 40.9 |
インスリン(μIU/mL) | 8.0 ± 6.6 | 5.9 ± 5.2 | 7.6 ± 7.0 | 8.0 ± 5.9 |
インスリン抵抗性(HOMA-IR) | 1.9 ± 1.8 | 1.3±1.3 | 1.7 ± 1.8 | 1.9 ± 1.8 |
C反応性タンパク質(CRP)(mg/dL) | 3.0 ± 3.3 | 2.9 ± 3.8 | 2.4±2.9 | 3.5±5.0 |
総抗酸化能(TAC)(mM) | 2.42 ± 0.49 | 2.39 ± 0.50 | 2.47 ± 0.43 | 2.41 ± 0.40 |
グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)(mM) | 171.6 ± 31.3 | 167.5 ± 26.2 | 172.3 ± 32.9 | 166.5 ± 26.8 |
血流依存性拡張期(FMD)(%) | 5.77 ± 4.34 | 5.71 ± 5.12 | 5.58 ± 3.39 | 6.58 ± 6.21 |
上の表のように、HDLコレステロールは、 果物制限と比較して果物2カップ後に有意に低下し、インスリン値およびHOMA-IRは、果物制限試験中、ベースラインから8週間まで低下し、 果物2カップ試験と比較して果物制限試験後に有意に低下しました。つまり、1日に果物2カップも摂取すると、果物をほとんど摂らない場合と比較して、HDLコレステロールは低下し、インスリンが増加し、インスリン抵抗性も増加してしまうのです。
果物制限試験 | 果物2カップ試験 | |||
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ベースライン | 8週間 | ベースライン | 8週間 | |
食物エネルギー(kcal) | 1595 ± 737 | 1352 ± 568 | 1586 ± 691 | 1550 ± 661 |
タンパク質(g) | 65.7 ± 35.4 | 54.3 ± 23.4 | 64.3 ± 30.3 | 60.3 ± 28.1 |
炭水化物(g) | 166.7 ± 80.3 | 137.5 ± 63.4 | 167.8 ± 77.9 | 178.3 ± 77.6 |
脂肪(g) | 71.1 ± 35.5 | 60.7 ± 26.9 | 71.1 ± 33.1 | 64.8 ± 33.1 |
食物繊維(g) | 16.3 ± 10.1 | 13.0 ± 8.6 | 16.9 ± 10.2 | 18.9 ± 11.0 |
グリセミック指数 | 50.6 ± 2.9 | 51.4 ± 2.8 | 50.6 ± 3.2 | 49.8 ± 3.6 |
グリセミック負荷 | 76.7 ± 38.1 | 64.3 ± 30.7 | 76.4 ± 36.8 | 80.1 ± 38.6 |
今回の研究では、2カップの果物は参加者に提供されましたが、それ以外の食事は自分で摂り、その摂取量は自己申告の食事アンケートなので、いい加減なデータになりますが、一応、見てみると、上の表のように、8週間後果物制限群ではエネルギー摂取量が減少しました。果物制限では、炭水化物ももちろん少なくなりましたが、タンパク質も脂質の少なくなっていました。
国が推奨する量の果物を食べてしまうと、インスリン抵抗性が高くなり、不健康になってしまいます。現代の果物は甘すぎます。昔の果物とは全く別物です。(「昔の果物や野菜は今とは大違い!」参照)酸っぱい果物はどこかに消えてしまいました。果物には果糖がたっぷりです。果糖はあまりインスリン分泌を刺激しないはずなのに、空腹時のインスリンおよびインスリン抵抗性は高くなってしまいます。
果物は食べるとしても、少しにした方が良いでしょう。リンゴであれば4分の1(0.25カップ)でも糖質は9gもあり、その3分の2は果糖です。これくらいが1日の摂取量の限界だと思います。
「Daily Intake of Recommended Servings of Fruit Improves Nutrient Intake but Shows no Major – Effect on Cardiovascular Health or Cognition in Low Fruit Consumers」
「毎日推奨量の果物を摂取すると栄養摂取量は改善されるが、果物摂取量の少ない人の心臓血管の健康や認知機能に大きな影響は見られない」(原文はここ)