筋肉を増やすのに糖質は必要ない

筋肉を増やすのにはインスリン分泌が必要であり、だからタンパク質だけでなく糖質(炭水化物)の摂取も同時に必要だ、という考えを持つ人もいるでしょう。以前の記事「筋トレでインスリンを分泌するための糖質(炭水化物)は必要ない その1」でも書いたように、タンパク質だけでもインスリン分泌はされ、それによって筋肉はできるので、あえて糖質を摂る必要はありません。

今回の研究では、9人の若い男性(平均年齢23.0歳、体重80.3kg、BMI24.2)が参加しました。筋トレ後、25gのホエイプロテイン入りの飲み物または、25gの同じホエイプロテイン+50gのマルトデキストリンという糖質入りの飲み物を飲み、筋トレ後に筋生検を行い、どのような変化があったかを調べました。筋トレは片側の脚だけ行い、何もしない安静にしている脚と比較しています。(図は原文より)

上の図は血液の血糖値、インスリン値、必須アミノ酸値の推移です。○がプロテインのみ、●がプロテイン+糖質です。当然、血糖値もインスリン値もプロテイン+糖質の方が大きく増加しています。曲線下面積では血糖値はプロテイン+糖質の方がプロテインのみの17.5倍、インスリンは5倍でした。必須アミノ酸についてはプロテインのみの方が60分と90分でプロテイン+糖質よりも有意に増加しています。

上の図は血流の推移です。上の方のグラフは筋トレ側の脚、下は安静にしている脚です。筋トレ脚の方が安静脚よりも血流増加が多いですが、飲み物による差はありませんでした。

上の図は、筋タンパク質合成(MPS)と筋タンパク質分解(MPB)の筋トレ脚と安静脚の比較です。MPSは、運動後、安静脚と比較して筋トレ脚では約54%増加しましたが、飲み物による差はありません。同様にMPBは、安静脚と比較して、運動後に約37%増加しましたが、飲み物による差はありません。

つまり、糖質およびそれによるインスリン分泌増加は、筋肉に相加的、相乗的な効果はもたらさないのです。高血糖になればAGEsができてしまうので、質の悪い筋肉ができてしまうかもしれません。

 

筋肉をつけたい人でも糖質は必要ありません。糖質制限をしていても筋肉は減りませんし、増加させることもできます。

 

「Carbohydrate does not augment exercise-induced protein accretion versus protein alone」

「炭水化物は、タンパク質単独と比較して、運動誘発性のタンパク質蓄積を増強しない」(原文はここ

5 thoughts on “筋肉を増やすのに糖質は必要ない

  1. 糖質制限であったであろう原始人は筋力不足では絶滅したでしょうし、現在もマサイ族は牛の乳や生血が主食だそうですが、超人的活動力を保ってます。

    糖質摂らないと筋肉落ちる云々は、ボディービルダーの必要以上に肥大した筋肉をイメージしているような気がします。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      プロテインに糖質を入れた方が飲みやすく、売れやすいので、そこが関係しているかもしれません。

  2. 「炭水化物を食べないと筋肉だけが減る。脂肪は減らない!」とかなんとか宣伝する人たちは、タンパク質の摂取もインスリンの分泌を刺激する生理学的事実や、炭水化物を食べることで惹起される高血糖とインスリンの過剰分泌、その果てに忍び寄ってくるインスリン抵抗性と、それが惹き起こす様々な疾患について、どうお考えなのでしょうか。
    「ひたすら筋トレに励めば万事解決だ」とでも言うつもりなのでしょうか。
    「筋肉量が増えれば代謝が上がり、何もしていなくても脂肪が減ってくれる!」とか何とか主張するつもりでしょうか。筋肉信者のこの手の主張は、ただの都市伝説のように思えます。

    とくに、糖質制限食を露骨に嫌っている人たちの多くは、最終的にあらゆる病気の原因となる炭水化物を食べさせて、そんなに人々を病気にさせたいのでしょうか。

    清水先生のご指摘のとおり、炭水化物とインスリンの相乗効果で増えた筋肉は質の悪いものとなるでしょう。最終的に自分自身の身体でその代償を支払うことになるはずです。

    1. クリードンさん、コメントありがとうございます。

      健康を度外視して筋肉を増強したい人は、お好きな方法で良いと思います。
      しかし、健康的に筋肉を増やしたいのであれば、やはり糖質は止めた方が良いでしょうね。
      仰るように生理学的な事実を考えないとなりません。

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