中性脂肪/HDLコレステロール比は安定狭心症の冠動脈疾患のリスクを予測する

中性脂肪/HDLコレステロール比(TG/HDL-C比)は非常に重要だと考えられています。ある研究では、TG/HDL-C比が4より大きいことが、冠動脈疾患発症の最も強力な独立した予測因子であるとしています。(「糖質制限とLDLコレステロール上昇」参照)(中性脂肪、HDLコレステロールの単位はmmol/Lなので、日本の単位にHDLコレステロール×0.02586、中性脂肪×0.01129で計算してください。)

理想のTG/HDL-C比はというと

2未満のTG / HDL-C比が理想的
4以上のTG / HDL-C比が高すぎる
6以上のTG / HDL-C比はさらに大きな危険!

です。私はTG/HDL-C比1.3以下を推奨しています。

今回の研究ではTG/HDL-C比の増加、つまり中性脂肪の増加とHDLコレステロール低下が安定狭心症の人の冠動脈疾患にどのように影響するかを分析しています。対象は154人の安定狭心症の患者です。TG/HDL-C比の平均値は2.78です。(図は原文より、表は原文より改変)

上の図はTG/HDL-C比と様々な関連です。Aは性別、糖尿病の有無、肥満およびメタボリックシンドロームの有無でのTG/HDL-C比の比較です。予想通り、男性、糖尿病有り、肥満あり、メタボありの方が有意に高いTG/HDL-C比を示しました。

TG/HDL-C比とLDLコレステロールとの関連は非常に弱いですが、図がちょっと見ずらいので省略します。

TG/HDL-C比を4つのグループに分けました。最小が1.305未満、最大が3.384より多いものです。

全体四分位I <1.305四分位II1.305–2.095四分位III2.129–3.384四分位IV> 3.384
脂質代謝
総コレステロール、mg / dL180±47184±45182±50172±47180±47
 LDL-C、mg / dL104±38106±36108±39103±3999±39
 HDL-C、mg / dL52±1766±1756±1446±1139±9
総コレステロール/ HDL-C3.7±1.12.84±0.583.30±0.563.87±1.014.67±1.17
 レムナント-C24±1512±419±524±742±17
 中性脂肪、mg / dL123±7761±1792±23119±31219±89
 中性脂肪/ HDL-C2.78±2.370.96±0.251.67±0.232.63±0.4110.05±0.46
 アポA1、mg / dL143±32158±35149±31136±26128±26
 アポB、mg / dL86±2780±2285±2584±2996±29
 アポB /アポA10.62±0.220.54±0.260.57±0.120.62±0.160.77±0.24
 リポタンパク質(a)、mg / dL21.9±24.323.4±27.023.8±22.723.3±25.516.9±21.3
 PCSK9、ng / mL223±136247±130220±123226±129200±156
糖代謝
 FPG、mg / dL111±36103±20109±37116±42117±38
 TyGインデックス8.65±0.638.00±0.358.46±0.378.77±0.419.35±0.46
 インスリン、mUI / mL11.3±11.07.2±6.39.9±8.912.4±11.815.5±13.7
 HOMA-IR指数3.3±4.01.9±1.92.9±3.53.8±4.74.7±4.7
肝機能
 AST、IU / L24±925±924±924±925±10
 ALT、IU / L21±1119±1119±922±1322±11
 ALP、IU / L51±1850±1850±1852±1852±18
 GGT、IU / L39±3036±4335±3037±1547±20
炎症
 hs-CRP、mg / dL0.41±1.260.48±2.240.42±0.830.44±0.680.32±0.42
 インターロイキン6、ng / L1.35±2.631.33±3.811.21±1.321.55±2.371.29±2.46
アディポサイトカイン
 レプチン、ng / mL10.4±11.010.5±9.112.0±14.49.1±9.110.1±10.4
アディポネクチン、mg / mL9.6±6.513.8±8.79.0±5.19.0±5.46.8±3.8
心筋障害
 hs-cTnT、ng / L8.0±6.27.0±5.77.4±6.39.0±6.88.5±6.0
 hs-cTnI、ng / L52.5±233.623.4±154.642.6±300.546.8±158.597.2±278.3
 NT-proBNP、ng / L134.8±223.2133.9±172.8104.1±127.2168.6±325.6133.0±217.8

最大グループではTG/HDL-C比はなんと10を超えています。当然インスリン値もTyGインデックスもHOMA-IRもTG/HDL-C比が高くなるにつれ高くなっています。

上の図は、すべての原因による死亡と致命的ではない心筋梗塞を含むメジャーな有害事象が無く過ごせた割合です。当然、最大グループ(赤い線)の方が悪い結果です。すべての原因による死亡と致命的ではない心筋梗塞のリスクは最大グループで2.85倍でした。脂質低下薬の使用が増加し、LDLコレステロールが減少したにもかかわらず、TG/HDL-C比とCTA(冠状動脈CT血管造影)リスクスコアは時間とともに進行しました。

上の図はTG/HDL-C比と心血管代謝および冠動脈疾患リスクの進行との関連です。縦軸はベースラインからフォローアップ時の変化です。TG/HDL-C比の中央値2.095より上か下かで分けています。当然TG/HDL-C比が低い方が良い結果だと思っていたのですが、中性脂肪、レムナントコレステロール、TG/HDL-C比、TyGインデックスは進行してしまいました。CTAスコアと炎症のIL-6はベースラインで高い方のグループの方が悪くなっていました。ベースラインでTG/HDL-Cが高い方は変化は少ないけれど、高いままであったとも言えます。

そう考えると、ベースラインでTG/HDL-C比が低くてもそのままであれば徐々に進行してしまう可能性があります。そうであれば、中性脂肪を上げない、HDLコレステロール下げない対処が必要です。それには糖質制限です。糖質制限をすれば中性脂肪は低下し、HDLコレステロールは増加するからです。

LDLコレステロールなんか気にしている前に、中性脂肪やHDLコレステロールを改善しましょう。冠動脈疾患は糖質過剰症候群です。

「Triglycerides and low HDL cholesterol predict coronary heart disease risk in patients with stable angina」

「トリグリセリドと低HDLコレステロールは安定狭心症患者の冠状動脈性心臓病のリスクを予測します」(原文はここ