糖質いっぱいの朝食摂取は肝臓や筋肉のグリコーゲン含有量を急速に増加させない

マラソンの当日のレースの前に、カーボローディングをしている人はよく見かけます。バナナを食べたり、おにぎりやパンを食べたり、人それぞれです。カーボローディングは筋肉や肝臓にグリコーゲンを溜め込むために有効だと信じている人も多いでしょう。

では、激しい運動の当日の朝の食事により、本当にグリコーゲンは増えるのでしょうか?

今回の研究は十分にトレーニングしている男性サイクリスト12人が対象です。平均年齢は25歳、体重73.1kgです。体重1kgあたり3gの炭水化物を豊富に含む朝食摂取前と摂取3時間後の筋肉グリコーゲンと肝臓グリコーゲン量をそれぞれ評価しました。

参加者には炭水化物を豊富に含む朝食(体重1kgあたり炭水化物3gで、平均炭水化物219g、果糖約25%、968kcal、タンパク質15g、脂肪3g)が提供されました。どうなったでしょう。(図は原文より)

まずは血糖値などの推移です。Aが血糖値、Bはインスリン、Cは乳酸濃度です。血糖値は、朝食摂取後15分および30分に増加し、120分でもベースラインよりは高くなっていましたが、180分では、ベースラインより低くなりました。インスリン濃度は、ベースラインと比較して、食後期間全体にわたって高くなっていました。乳酸濃度は、ベースラインと比較して、30分以降、食後期間全体にわたって高くなりました。これなんですよね、カーボローディングの危険なところ。インスリンがたくさん出て、3時間後にはベースラインよりも血糖値が低下しています。レースのときも3時間前くらいに糖質を摂取してしまうと、最悪な状態でのスタートになります。

エリートランナーが時々、脱水とは思えない状況でもフラフラになることを見たことがあると思いますが、恐らくレース前の最悪のタイミングで糖質摂取をしてしまい、低血糖になったのではないかと思います。テレビでは解説者などが脱水と言っていますが…

上の図は筋肉についてです。朝食摂取後、Aの筋グリコーゲン濃度、Bの筋肉量、Cの筋グリコーゲン含量に変化は認められませんでした。あらら。

上の図は肝臓についてです。朝食摂取後、Aの肝グリコーゲン濃度は約10%増加しました。しかし、Bの肝臓容積は約6%減少しました。その結果、朝食摂取後のCの肝グリコーゲン含量に変化は認められませんでした。あらら。

持久力の必要なレースの前日または数日前から筋グリコーゲンローディングをするために、炭水化物をたくさん摂取することが推奨されています。そしてイベント当日の朝に高炭水化物の朝食を摂取することも推奨されます。一般的には、運動の前の時間に体重1kgあたり1~4gの炭水化物を摂取することが推奨されているようです。

もちろん私は糖質制限なので、前日も当日も糖質制限食です。

この研究では、夜間絶食時の筋グリコーゲン濃度は、よくトレーニングされた持久力アスリートにおいてこれまでに報告されている高い(またはより高い)値と一致しており、朝食摂取前に筋グリコーゲン貯蔵量がほぼ最大であったことを示しています。したがって、朝食に体重1kgあたり3gの炭水化物を摂取した後も、筋グリコーゲン含有量のさらなる増加は観察されませんでした。これらの結果は、筋グリコーゲン貯蔵量がすでに飽和している場合、炭水化物を豊富に含む朝食は筋グリコーゲン濃度をさらに上昇させないことを示唆しています。前日までカーボローディングしていたのであれば、当日は無駄ということですね。

肝臓グリコーゲンは夜間に分解されて使われるために減少し、通常は肝臓グリコーゲン濃度が30~40%低下するようです。そのため、炭水化物を含む朝食を摂取するのが良いと思われているのでしょう。確かにこの研究では、朝食3時間後に肝臓グリコーゲン濃度が約10%上昇することが観察されました。しかし、グリコーゲン貯蔵の変化を解釈する際には、肝臓の容積を考慮する必要があります。参加者全員で肝臓容積の減少が見られ、肝臓容積の変化を調整した後、肝グリコーゲン含量の増加は観察されませんでした。肝グリコーゲン含量の低下を防ぐことはできるかもしれませんが、それ以上増加させることはできないということです。

200g以上も糖質を摂ったのに、グリコーゲンが増えないのであれば、体に悪影響しかありませんね。ただでさえ激しい運動は酸化ストレスを増加させます。糖質過剰摂取でさらに酸化ストレスを増加させることは危険である可能性があります。

通常の糖質過剰摂取者と糖質制限をしている人とでは、糖質制限で糖質を摂取しなくても減少したグリコーゲンの補充速度は変わりありません。糖新生で補えるのでしょうね。

もう、直前のカーボローディングはやめても良いのではないでしょうか?

「Breakfast consumption does not rapidly increase liver or muscle glycogen content in well-trained cyclists」

「朝食摂取は、よく訓練されたサイクリストの肝臓や筋肉のグリコーゲン含有量を急速に増加させない」(原文はここ

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