糖質制限でケトーシスになっている人が糖質制限を止めたらどうなる? その5

糖質制限でケトン体が増加するケトーシスと、糖質制限を止めてみたときの様々なパラメータの動きを追うシリーズの続きです。(「その1」「その2」「その3」「その4」参照)

インスリン抵抗性と高インスリン血症は、女性ホルモン調節と生殖健康に大きな影響を与えます。性ホルモン結合グロブリン(SHBG)は、高インスリン血症、肝機能、および代謝状態によって機能が調節される重要なタンパク質であり、循環性ステロイドの活性シグナル伝達と細胞内シグナル伝達に影響を与え、内分泌および生殖生理に影響を与えます。

今回の研究では、ケトーシスを抑制した場合の女性の生殖機能および内分泌機能のバイオマーカーに与える影響を調査しました。

平均3.9年にわたり栄養性ケトーシスを維持してきた、痩せ型(BMI 20.52)、健康な閉経前女性10名(平均年齢32.30 歳)が対象です。試験は、21日間の正常ケトン血症(P1)でのベースラインデータ収集、21日間は糖質制限をやめてケトーシスを抑制(P2)し、そして21日間の正常ケトン血症(P3)への復帰します。食事内容は、以前にも書いたように、最初の21日間(フェーズ1:P1)はずっと超低炭水化物高脂肪食 (VCHF) で、エネルギー摂取量の割合として、炭水化物8%、タンパク質17%、脂質75%でした。食べるものは自由です。炭水化物8%なので、ガッツリ糖質制限です。1日4回血糖値とケトン体値(βヒドロキシ酪酸値)を測定しました。βヒドロキシ酪酸値を0.5mmol/L(日本の単位では500μmol/L)を維持してケトーシスを保ちました。

21日間(フェーズ2:P2)ではケトーシスを抑制するような食事をします。つまり糖質過剰摂取です。βヒドロキシ酪酸値0.3mmol/L未満が目標です。1日あたり少なくとも267gの炭水化物を摂取することを推奨し、炭水化物55%、タンパク質20%、脂質25%で自由に少なくとも3回に分けて食事しました。

21日間(フェーズ:P3)はP1と同様の糖質制限です。(図は原文より、表は原文より改変)

パラメータ P1 P2 P3
BMI
(kg/m2)
20.52
(± 1.39)
21.54
(± 1.29)
20.82
(± 1.46)
体脂肪量
(kg)
14.21
(± 2.55)
15.88
(± 2.23)
14.78
(± 2.20)
インスリン
(μIU/mL)
4.95
(± 1.24)
9.06
(± 2.13)
5.62
(± 1.83)
血糖値
(mmol/L)
4.23
(± 0.50)
5.01
(± 0.70)
4.24
(± 0.28)
βヒドロキシ酪酸
(mmol/L)
2.43
(± 1.28)
0.18
(± 0.13)
2.31
(± 0.71)
HOMA-IR 0.93
(± 0.26)
2.03
(± 0.65)
1.07
(± 0.40)
GKI 2.23
(± 1.20)
49.68
(± 42.62)
1.99
(± 0.60)
IGF-1
(μg/L)
149.30
(± 32.96)
273.40
(± 85.66)
136.90
(± 39.60)
レプチン
(ng/mL)
4.50
(± 3.66)
15.08
(± 8.00)
4.57
(± 3.48)
GLP-1
(pg/mL)
1,383.18
(± 911.36)
576.72
(± 452.43)
1,471.85
(± 1,066.75)
GGT
(U/L)
9.60
(±3.13)
12.40 (±2.55) 9.70
(±2.50)
アディポネクチン
(μg/L)
9.08
(± 4.18)
10.75
(± 6.76)
8.70
(± 3.25)
TSH
(mIU/L)
1.40
(± 0.74)
1.56
(± 0.75)
1.25
(± 0.81)
遊離T3
(pmol/L)
3.82
(± 0.28)
5.50
(± 0.72)
4.05
(± 0.54)
リバースT3
(nmol/L)
0.29
(± 0.09)
0.26
(± 0.10)
0.25
(± 0.09)
T4
(pmol/L)
13.52
(± 1.61)
13.24
(± 1.49)
12.65
(± 0.66)

(μmol/L)
16.62
(± 7.27)
14.40
(± 8.70)
11.76
(± 11.78)
ケトーシスを抑制、つまり糖質制限をやめると、BMI 、脂肪量、インスリン、血糖値、HOMA-IR、GKI、IGF- 1 、レプチン、GGT、遊離 T3はどれも有意に増加しました。HOMA-IR、インスリンやIGF- 1 は2倍近くになっていますね。
βヒドロキシ酪酸、GLP-1は大きく減少しています。GLP-1なんて半分以下ですね。だから、GLP-1受容体作動薬が必要になるんでしょう。
P3 以降にほとんどは逆転しました。
上の図のように、SHBGはP1で107.70 nmol/LからP2で72.53 nmol/Lに有意に減少しました 。この傾向はP3の後逆転し、P3では111.60 nmol/Lに有意に戻りました。エストロゲン、テストステロン、プロゲステロン、LH、FSHの変化は、この研究では統計的に有意ではありませんでした。

上の図は、個人のSHBGとインスリンおよびHOMA-IRの変化を示しています。インスリン、HOMA-IRとSHBGの間には有意な逆相関が認められました。

上の図は、個人のSHBGとGLP-1の変化を示しています。一人だけ変な動きをしていますが、SHBGとGLP-1は有意な相関を示しました。

女性の生殖器系は、栄養状態と全体的なエネルギーバランスによって厳密に制御されています。

肝臓は、主にインスリンシグナル伝達に対するSHBG合成の調節を介して、全身のインスリン感受性と性ステロイドの生物学的利用能の調節において中心的な役割を果たしています。SHBGが低く肝臓の脂肪含有量が高い女性は、インスリン濃度が高くなります。

ケトーシスによるSHBGの上昇は、がんにおいて特に重要です。複数のがんにおいて、SHBG値が低い状態は、c-MycおよびBcl-2の発現と活性の増加、解糖系エフェクターであるGLUT1、LDH、HK2の発現亢進と関連しており、ミトコンドリアのアポトーシスに対する抵抗性を促進します。

慢性的な高インスリン血症は肝臓のSHBG合成を抑制し、それによってこれらの発がん経路の抑制を解除し、好気性解糖の増加、増殖シグナル伝達、アポトーシス抵抗性などを引き起こします。

いずれにしても、このように立った3週間の食事で、様々なパラメータが変化し、糖質制限をやめると、がんの増殖に好ましい変化を示します。

がんの予防には糖質制限が必要です。

「Ketosis suppression and ageing (KetoSAge): the effect of suppressing ketosis on SHBG and sex hormone profiles in healthy premenopausal women, and its implications for cancer risk and therapy」

「ケトーシス抑制と老化(KetoSAge):健康な閉経前女性におけるケトーシス抑制がSHBGおよび性ホルモンプロファイルに及ぼす影響、ならびにがんリスクと治療への示唆」(原文はここ

2 thoughts on “糖質制限でケトーシスになっている人が糖質制限を止めたらどうなる? その5

  1. 特に女性はスィーツなど糖質大好きが
    デフォルトの印象ですが、
    糖質制限やケトン食が、不調改善効果が大きいのではないでしょうか。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      でも、中毒にさせて、儲かっている企業は数えきれないほどあります。
      マスコミなどを通じて、さらに中毒を拡大します。

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