糖質制限は非常に健康的で、私は元の糖質過剰摂取時代に戻るつもりはありません。
「その1」「その2」「その3」と同じ研究グループが新しい研究を出してきたので、記事にします。参加者は栄養性ケトーシスを平均3.9年維持してきた、痩せ型(BMI 20.5)で健康な若い女性10人(年齢 32.3歳)です。(図は原文より)
上の図のように、いつものようにケトン食21日摂った後、21日糖質過剰摂取(1日に267gの炭水化物摂取)、その後またケトン食に戻ります。ケトン食の期間はケトン体のβヒドロキシ酪酸が0.5mmol/L(日本の単位で500μmol/L)以上で、糖質過剰摂取期間は0.3mmol/L未満になるようにします。
グルコース・ケトン指数(GKI)はGKI = 血糖値 mmol/L / ケトン体値 mmol/L
日本の単位に直すと、GKI = 血糖値 mg/dL ÷18 / ケトン体値 μmol/L÷1000 です。
P1は最初のケトン食の期間、P2は糖質過剰摂取期間、P3は再度ケトン食の期間です。
上の図はそれぞれの期間のGKIで、Aは期間の合間、Bは21日間の平均です。当然ですが、P2で大きくGKIが増加しています。Aでは、GKIは2.23から49.68に有意に増加し、P3では1.99に戻りました。BのGKI(21日間平均値)も、2.82から56.30に有意に増加し、P3で2.76に戻りました。
上の図は肝機能の数値の変化です。ALTとγGT(GGT)はGKIと同じ推移をしましました。つまり、ケトン体が減少して、ケトーシスが抑制されるとALTとγGT(GGT)は増加し、ケトーシスに戻ると、ALTとγGT(GGT)も戻ります。ASTもP2で上昇傾向ですが、有意にはなりませんでした。ALPもP2で有意に増加しましたが、P3で戻りましたが有意ではありませんでした。
上の図はALT/AST比ですが、これもP2で増加しました。ケトーシスにはALTの方が反応しますね。
上の図は、アルブミン(A)、CK(B)、総タンパク(C)、鉄(D)です。アルブミン値は、全期間を通じて一定に保たれました。
CKは増加傾向にも見えますが、個人差がありそうです。
総タンパク質や鉄も有意な変化はありません。
上の図はAが総ビリルビン、Bが直接ビリルビンです。これも個人によってばらけています。
上の図は肝臓マーカーとインスリン値の変化の関係を示しています。インスリンレベルとALT、AST、GGT、ALT/AST 比の間には有意な正の相関が見られました。
上の図は、肝臓マーカーとHOMA-IRの変化の関連を示してます。インスリンと同様にHOMA-IRは、ALT、AST、GGT、ALT/AST 比の間には有意な正の相関が見られました。
また、3つの期間における肝臓マーカー(ALT、AST、GGT、ALP)とGKI(21日平均)値の変化は、どれも有意な正の相関が認められました。
P2の糖質過剰摂取期間のALTとGGT の顕著な増加は、ケトーシス抑制中の脂肪酸酸化障害とインスリンシグナル伝達の上昇によって引き起こされる急性肝ストレスと酸化ダメージを示唆しています。肝臓の健康は、ケトーシスで維持されると考えても良いでしょう。逆に考えれば、糖質過剰摂取は肝臓を傷めつける食事だということです。
GGTの基準値は比較的高く設定されていますが、恐らくはもっと低い方が良く、この研究では、女性の場合、最適な健康基準範囲は12 U/L未満であるべきだと提案しています。
ALTに関しても、最適な健康基準範囲は16 U/L未満と提案しています。私もこれくらいが良いのではないかと思います。
ケトン体を測定することは、一般的ではありませんが、肝機能検査は通常の血液検査項目です。今回の研究では、糖質過剰摂取とケトーシス抑制は、インスリン抵抗性スコアのHOMA-IRを2.13倍、GKIを22.28倍、ALTを1.85倍、GGTを1.29倍 、ALT/ASTを1.30倍にそれぞれ上昇させ、肝臓インスリン抵抗性を示唆する悪影響パターンを示しました。肝機能検査を見れば、肝臓のインスリン抵抗性が推測できるでしょう。
ALTやGGTが増加してきたら、高インスリン血症、インスリン抵抗性がすでに存在していると考えられます。
まずは糖質制限です。
「Ketosis Suppression and Ageing (KetoSAge): The Effect of Suppressing Ketosis on GKI and Liver Biomarkers in Healthy Females」
「ケトーシス抑制と老化(KetoSAge):健康な女性におけるケトーシス抑制がGKIおよび肝臓バイオマーカーに及ぼす影響」(原文はここ)