心房細動に対するカテーテルアブレーション後の長期抗凝固療法中止の影響は?

心房細動(Af)はよく認められる心房性の不整脈です。実際にAfの心房を見ると、痙攣のような動きをしています。心臓が細かく震えて血液をうまく送り出せなくなり、心臓内での血液の乱流が起こり、血のかたまり(血栓)ができやすくなります。この血栓が脳の血管を詰まらせてしまい、脳梗塞を引き起こします。

なので、心房細動の人には血液をサラサラにする抗凝固薬が処方されます。また、カテーテルによるアブレーションという治療でAfを止めて、通常の心臓の拍動に戻す治療があります。

でも、時折、アブレーションでAfが止まり、再発が認められないにも関わらず、ずっと抗凝固薬を飲まされている人がいます。

今回の研究では、カテーテルアブレーション後にAfが再発していない840人(平均年齢64歳)を対象に、経口抗凝固療法を中止した場合と、抗凝固療法を継続した場合との比較を行いました。

主要評価項目は、2年経過時における脳卒中、全身性塞栓症、重篤な出血の複合的な発現率としました。(図は原文より)

上の図のAのように、2年時点で、主要アウトカムは、経口抗凝固薬中止群では417例中1例(0.3%)に発生したのに対し、継続群では423例中8例(2.2%)に発生し、–1.9%の有意な差でした。

図Bに示すように、虚血性脳卒中および全身性塞栓症の2年間の累積発生率は、中止群で0.3%、継続群で0.8%でした。図Cに示すように、重篤な出血は、中止群では0例(0%)、継続群では5例(1.4%)に認められ、その差は1.4%でした。継続群の1例に出血性脳卒中が起こり、永久的な障害が残りました。

両群において全原因死亡または心筋梗塞の症例は報告されませんでした。

2年時点で1件の主要アウトカムイベントを予防するために、中止群と継続群を比較した場合の治療必要数は53例でした。つまり、経口抗凝固薬を継続した場合、2年間で53人に1人が主要アウトカムイベントを発現する可能性があります。

医師にとって、心房細動による血栓形成の不安を植え付け、抗凝固薬を継続することは簡単でしょう。しかし、患者側にとってそれが利益になるのかどうかが問題です。そして、実際には出血を中心としたイベントリスクが、中止したよりも高くなってしまうのです。

そして、さらに重要なことは、コレステロールが低いと心房細動のリスクが増加するということです。(「コレステロールと心房細動の関係」参照)さらに、スタチンを使用していない人よりもスタチンを使用している人の方が心房細動のリスクは高くなるのです。(「スタチンと心房細動」参照)

様々な疾患およびその治療が様々な形でリンクしていますね。

「Long-Term Anticoagulation Discontinuation After Catheter Ablation for Atrial Fibrillation The ALONE-AF Randomized Clinical Trial」

「心房細動に対するカテーテルアブレーション後の長期抗凝固療法中止 ALONE-AFランダム化臨床試験」(原文はここ

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